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急進展するXMLの利用

ビジネスの枠組みの変化とXML

2000年6月20日に公表された平成12年「通信に関する現状報告(通信白書)」によれば,1999年末における従業員300人以上の企業のインターネット普及率は88.6%になり,企業間(B to B)の中間財(原材料等)取引を対象としたインターネットコマース中間財市場の規模は,14.4兆円を超えたと推計され,2005年には103.4兆円に達すると予想されている。

このようなインターネットの普及,B to B中間財市場の拡大を背景に,1:Nの電子商取引に加えて,N:Nのマーケットプレイスなどの動きが急進展している。企業間での情報交換は,異なる情報システム間での情報交換となることから,XMLをベースとした各種の情報交換用中間フォーマットが検討されている。

企業としては,交換された情報を自社の業務プロセスやワークフローに効率的に活用する仕組みが必要になる。このため,XMLを利用したシステム構築のための各種ツールが,大手ソフトメーカーや専門ソフトメーカーから次々と提供されている。どの様なツールをどの様に使用してシステムを構築するかが,重要な課題となってきている。

行政の情報化とSGML/XML

行政の情報化は,1997年12月20日に基本計画が改訂され,紙による情報の管理からネットワークを駆使した電子化された情報の管理に移行し,地方自治体や各省庁地方支分部局とのネットワーク接続を含め,21世紀初頭には高度に情報化された行政,つまり「電子政府」の実現を目指すことになった。

この情報基盤を利用して,申請・届出等手続きの電子化,行政情報の電子的提供,省庁間の情報共有,ワンストップサービス,行政内部のペーパーレス化等が推進されている。 また,交換・共有する文書については,SGML(Standard Generalized Markup Language)等を採用することとし,白書,電子公文書,通達,告示などの文書型定義(DTD:Document Type Definition)を定め,対応ソフトの導入や関連情報のデータベース化が推進されている。

また,厚生省による医薬品添付文書DTD,建設省による図面管理・業務管理・報告書管理などのファイルDTDなども制定され,2000年度には通産省による特許・実用新案の基本フォーマットのXML化の検討も行われる。
このような行政の情報化にあわせて,電子申請のXML化を推進するために,電子申請推進コンソーシアムも活動を開始している。

印刷業界におけるXML利用

印刷業界でもXMLを利用する動きがでてきている。例えば,業務管理や業務支援システムと製造システム間における作業上の各種の情報交換,プリプレスから印刷後工程,更には印刷物や電子媒体の制作物の配布までの各種の工程間におけるデータや情報の交換などを,電子的に一貫して行うためには,数多くのベンダー製品間でのデータや情報の交換を可能とすることが必要である。そこで,アドビ,アグファ,ハイデル,マンローランドの4社は,XMLをベースとした新たなジョブデータの交換フォーマットJDF(Job Definition Format)の標準化を2000年2月に提唱し,活動を開始している。

また,PPML(Personalized Print Markup Language)についても,drupa2000でXerox,Xeikon,Agfaなどでデモが行われた。
更に,文書構造が明確なデータを利用することによって,自動組版による効率的な印刷物の作成や印刷物と電子媒体の同時作成なども行われている。

XML関連規格の動向

XMLの仕様を策定したW3C(World Wide Web Consortium)では,あらゆる分野,あらゆるデータへのXML利用が検討され,各種の仕様が定められたり,仕様案が公開されている。
例えば,XMLドキュメントに対するデータ操作APIである「DOM(Document Object Model)」,一つのXMLドキュメントに複数の構造定義を適用させる「Namespaces in XML」,XMLドキュメントから他のXMLドキュメントへ変換するための「XSLT(XSL Transformations)」,文書の木構造を基本にしてドキュメントの一部を検索する「XPath(XML Path Language)」,数式を記述するための「MathML(Mathematical Markup Language)」などの仕様が,W3C勧告として定められた。

また,二次元ベクターやベクターとラスター混在画像などを表現する「SVG(Scalable Vector Graphics)」,ドキュメント内やドキュメント間でのリンクを表現する「XLink(XML Linking Language)」,ドキュメント構造やデータ型などを定義するための「XML Schema」,XMLドキュメントのスタイルシートを記述する「XSL(eXtensible Stylesheet Language)」など,多くのワーキング・ドラフトが公開されている。

しかしながら,関連する分野が広がるにつれて,規格に盛り込まれる機能仕様の範囲も広がり,勧告になるまでの期間が長くなりつつある。そのような一つが「XML Schema」であるが,その核となる部分を取り入れた日本発のスキーマ言語「RELAX」が世界各国の関係者に大きな関心をよんでおり,初めての日本発XML標準になるかもしれない。

XMLは,データ管理(情報交換)と文書管理(文書処理)の二面を持っており,それぞれに対応した各種のツールが提供されている。利用する局面にあわせて最適なツールを利用することが,効率的なシステムを構築する鍵となる。
8月25日のテックセミナー「XMLを活かすツール」では,RELAXとその利用ツール,電子フォームツールと電子申請推進コンソーシアム,ツールを活用したXMLシステム構築,XMLを利用した文書組版などについて取り上げる。

2000/08/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会