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活字組版機械化の動き−印刷100年の変革

文字組版とは何か、といえば「各国で使われている国語を、その文字表記と一定の組版 ルールに基づき版としてまとめ上げる」ことである。そして活字組版とは、活字という素 材を使って1ページの版に組み上げることをいう。

立体的な固定ボディの活字と、行間インテル、スペースやクワタなどの込物(こめもの)、 罫線などの諸材料を組み合わせて、立体的に版として組み上げたものが組版である。した がって写植組版、CTS組版、DTP組版などは、平面的に処理した版下であって組版とは言い がたい。むしろページメーキャップとかレイアウトの方が適切な表現であろう。

組版技術は植字技術に代表されるが、組版作業は文選と植字に分業されるのが一般的で ある。文選は原稿を読みながら活字を1本1本拾っていく作業で、また植字は組版指定書 に基づいて文字活字と約物、諸材料を組み合わせて1ページの体裁にページメーキャップ をする作業である。

現代でいえば文選はキーボードの文字入力に相当し、植字はDTPのレイアウト作業に相 当する。特に植字作業は、熟練作業者の頭の中で計算しながら寸法通りの組版に仕上げて いくわけである。つまり組版ルールや組版ソフトが頭の中にあって、手作業で仕上げてい くわけだ。

この植字作業は高度な技術と経験を必要とした。文選工は植字ができないし、植字工は 文選ができないのが普通である。あたかも、文字はエディタソフトで入力し、レイアウトはDTPソ フトで処理するのに似ている。

組版には組版ルールが存在する。ルールというと絶対的なものに思えるが、可読性を高 めるための組版の約束ごとである。可読性とは「見やすく」「速く読めて」「誤読がしにく いこと」などである。

しかし組版ルールに従えば、自動的に美しい組版ができるとは限らない。知性と感性が 必要である。組版ルールは美的側面まで規定しているわけではないから、組版ルールだけ では無力である。

最近DTPの日本語組版ルールについて議論されているが、活字組版時代から組版ルール は存在していた。しかし汎用的な規範となるルールが確立されていたわけではない。これ がコンピュータ組版やDTPの組版ソフトにおいて混乱している原因でもある。

この活字組版の作業形態はすべて手作業の労働集約型であり、また組版部門は旧体質の 部門であるため、生産管理や能率管理などの管理手法は無いに等しかった。しかし1950 年頃から、人件費の高騰、高年齢化、生産性の低下、若年層の求人難などの理由から、組 版は赤字部門となり機械化の機運が高まったが、この頭脳的植字作業の機械化が困難なた め組版の合理化が遅れた。

●和文手動モノタイプの登場

活字組版は長年手組み作業が続いていたが、1949年〜1952年にかけて日本タイプライタ や東京機械、中川機械などが平盤式手動モノタイプを開発し、文選作業の機械化が実現し た。

それ以前にも縦型のルビ付き手動モノタイプが開発されたが、収容文字数の制約などの 理由でそれほど普及しなかった。

オペレータが原稿を見ながら文字盤上の文字をピンで指すと、連動している母型庫が移 動し1本ずつ(モノという)活字を鋳造する。所定の字詰めで改行すると、行間インテル が挿入され棒組みしていく仕組みである。

つまり活字鋳造機を兼用しているわけで、膨大な面積を占める文選場や活字ケースのス トックは不要になる。しかし初期の手動モノタイプは、文字盤の収容文字数が2千数百字、 文字サイズが8ポイント、9ポイントのみという制約から、文選作業全体の機械化、合理 化には壁があった。

しかし当初は新聞社主体に活用された。新聞の本文は固定サイズであるから、実用化は 印刷出版関係の印刷物より有利であったが、見出し活字は手拾いで補った。

この手動モノタイプも、一人一台で操作することから生産性には限界があった。そこで 登場したのが「テープ式自動モノタイプ」である(つづく)。

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2001/04/07 00:00:00


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