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取得の目的を明確にし,ISOの規格を理解することが必要

佐久間 利次 氏
(JRCA<(財)日本規格協会・品質システム審査員評価登録センター>主任審査員:A0878)


 ISO9000sの認証を取るにあたって,その前提となる考え方の要点について話をする。
 私がコンサルタントや審査員として接してきた企業の中で,取得まで無駄や遠回りをしてしまった企業,あるいは取得はしたが,全然役には立っておらず,認証の取得証が単に応接室の飾りものになっている企業がある。また,チャップリンの「モダンタイムス」ではないが,ISOの定期審査の準備に追いまくられているようなところもある。そのような轍を踏まないように,注意すべき点を述べたい。

■ISO9000sキックオフの留意点
 1992,93年のころは,ISOを取らないと輸出ができない,商売ができないといった状況にあり,善かれ悪しかれ,取得する目標があった。それがいまはかなり薄れ,ISOを取るときのひとつの目標として,多くの企業,あるいは経営者が,品質システムのリストラクションをかかげている。
 しかし,自分の企業のどこをリストラクションするかは,意外に曖昧である。本来,リストラクションは,「ここが不備であるから,あるいはここが変わってきているから,思い切ってこう変えよう」「これがもう無駄だから除こう」「これは是非強化しよう」など,メリハリをつけて仕組みを見直すことを意味する。
 したがって,経営者が目的をはっきりしないで,単に「リストラクション」をお経みたいに繰り返すだけでは失敗する。この取得の理念を明確にすることが第1番の問題である。
 2つめは従業員が,ISOを取ると言われたときに,どのような反応を示すかも考え,うまく浸透させていかなければならないということである。
 リストラという言葉が,日本ではいま正しく使われていない。リストラは人を減らして,その他の人たちにまとめて負荷をかけるものだと思っている。しかし,本来のリストラはそうではない。若い人たちに,「ISOをやってリストラをするのか。では単に,俺たちだけに負荷がかかって,儲かるのは経営者だけではないか」と思わせてはいけない。「これは経営者から従業員まで,本当にメリットがあるのだ」という共通的な理解を持って,スタートさせないと失敗する。

■ISOは企業の健康を維持するための仕組み作り
 『平家物語』の出だしに,「祇園精舎の鐘の声,諸行無常の響あり。娑羅双樹の花の色,盛者必衰のことはりをあらはす。おごれる人も久しからず,只春の夜の夢のごとし」とある。
 平家はおごって滅びた。時代のひとつの流れなのだから,それはそれで仕方ないことだろう。しかし,企業は滅びるわけにはいかない。「盛者必衰のことはり」ではいけないのである。これを打ち崩すためのひとつの手段として,ISOが位置付けられていると,とらえている。
 企業は人間と同じで,ひとつの生命体であると言える。経営者の役割と,管理者の役割と,それから実際に汗を流して働く作業者の3つの構成がうまくバランスを取れないと,いろいろな病気が出てくるのだと考えている。
 また,企業が生きていくには,人間同様,栄養素をとらなくてはならない。その栄養素,食べ物を,どこから得ているのかと言うと,顧客と協力会社からである。
 ところが故意でないにしろ,その栄養素の中にはO-157のようなウイルスが入っている場合がある。これを取り込んでしまったら,企業は病気になってしまう。だから,そういうものをいかに防いでいくかという仕組み作りもISOの中では大きな位置付けとなっているのではないかと考えている。
 品質管理については,ISOの前に日本で進められていたTQCがあり,その頂点にデミング賞がある。デミング賞が取れたときは,新聞に大きく取り上げられた。ただ,デミング賞を取って,その後倒産した企業もある。
 ISOを説明するときよく例に出されるのが,TQCとの違いである。この両者はどのように違うのか。まずTQCの基本的な理念は,「うちの会社はこんなによいところがある。だから,うちの品物を買ってください」ということにある。つまり,自分の企業で何か光るものを作り出すことだと言える。TQCの頂点であるデミング賞は,オリンピックの金メダリストや,あるいはボクシングの世界チャンピオンを目指す企業に与えられる,ひとつの勲章とも言えるだろう。
 一方,ISOは決してオリンピックのメダリストでなくてもよく,健康であればよい。その健康をどのように維持していくかが重要である。したがって,認証を取得すると,半年に1度,あるいは1年に1度,定期的な審査を受けることになる。これは,認証を辞退しない限り続けられる。専門医による定期検診のようなものである。手遅れにならないように,定期的な内部品質検査が義務付けられている。

■工芸から工業への標準化の手段
 これは一般論であるが,印刷業はいま,いわゆる工芸品の時代から工業品の時代に,ある部分で急速に変わりつつある。印刷を工芸と位置付けていれば,顧客から「ISOを取ってくれよ」と言われない限り,取る必要はないわけである。したがって,印刷そのものに関しては,ISOを取得しようとする考えがなかなか出てこない。実際,ISO認証を取得した企業は印刷業関連ではまだ少ない。しかし,工業品時代になってきて,かつては考えられないようなことが起こるようになってきた。
 例えば,校正の問題である。文字校正にしろ色校正にしろ,かつては校正を終えて責了にして,ほとんどが問題なく進んでいた。ところが最近は,責了で訂正個所がある場合に,そこを直すと,直す前は正しかった他の箇所がバケて,ミスが出てしまう。それで再校になったり,そのまま進めて大量の不良を作ってしまうことなどがあると聞く。
 また,オフ輪で印刷している段階で,印刷面の状態のムラなどを感知するシステムがある。ところがそのシステムを付けているのに,大量の不良を発生させてしまっているという事例もある。
 一体なぜ,こういったことが起きるのか。作業者は「きちんと自動感知器が付いているから,私は見ていませんでした」と言う。ところが自動感知器は,つねに期待している通りには動かない。
 ISOでいちばん求められているのは,人と人との間の責任と権限を明確にすることである。さらに,これからの印刷業では,人間と装置の責任と権限もはっきりしておかなければならないと感じている。
 印刷が工芸から工業へ変化している中で,DTP,CTPなどが導入された。それらをうまく使いこなさないとミスの原因になる。そこで,標準化が必要になってくる。その手段として,ISOがあるのではないだろうか。
 ISOでは,4.9項で「規定されている基準以外の条件で工程が管理されていた」,4.10項で「検査基準と現場で実際に適用している基準が一致しない」とある。これが印刷業では,実際にかなり多い。
 この原因を調べると,4.9項の場合は,ISOでやるのだからと無理して決めていることにある。無理な決定をすれば,実際に現場では実施できない。例えば,オフセットに使う湿し水の管理についてであるが,何とか工程パラメータを作り出して,無理やり数値化しなければと考えて,PHやIPAの濃度と伝導率などで管理することにしてしまう。実際に審査すると,決定された数値から外れているのに,平気で作業している。そのことを指摘すると,「実はこれは,紙の質や,絵柄の面積で変わるので,調整しなければならない」と,できない理由を説明する。それならなぜ,実際にできないことを決めるのだろうか。それが問題なのである。
 この,いわゆる工芸の部分と工業の部分をうまく切り分けなければいけない。工芸の部分を工業に置き換えて,無理に数値化すると失敗する。逆に,本来標準化すべき工業的な部分を「うちは全部固有技術でやっているから,標準化できない」ことにしてしまうと,最終的に認証は取れても,無益な認証取得になってしまう。

■ISO規格の盲点は語感と習慣
 ISOはどこの業種にも通用する規格なので,一般論になるが,まず日本人特有のISO規格に対する盲点がある。それは「語感」と「習慣」であり,この違いによる勘違いがある。だからこそ,ISOの規格の意味を正しく理解する必要がある。
 まず,「習慣」について述べる。例えば,協力会社との間,あるいは顧客との間には,日本固有の商習慣がある。ISO4.3項の「契約内容の確認」や4.6項の「購買」などは,極めてやりにくいのではないだろうか。
 あるいは,日本人は「便りのないのはよい便り」という考えを持っている。それで失敗をすることがある。欧米では,「元気で飛び回って暇がなく,便りを寄こせないのか,それとも便りもできないくらいくたばっているのか分からないではないか。なぜ日本人は,便りのないのがよい便りと決めつけるのか理解できない」という。
 例えば,不適合の事例で習慣によるものと思われるのが,「内部品質監査が実施されていない項目または部署がある」ことである。これは,調べてみると多くの場合,内部品質監査をやり,不適合がある箇所には不適合報告書を出すが,逆に問題のないと箇所は,問題がないからといって何も記録していないのである。これでは「便りのないのがよい便り」の発想と同じである。つまり,すべての部門の内部品質監査で,1点以上の不適合が出れば,全部やったことが分かる。しかし,悪いところにだけ報告書を出すのでは,全く報告書が出ていない部署や項目があることになり,正確な記録が残らない。
 したがって,客観的証拠,つまり監査を行ったという結果を,第三者に分かるような形で残さなくてはならない。そうしなければ,監査を行っていないと見なさざるを得ない。この種の例は他にもある。
 次に,「語感」について述べる。我々がコンサルタントの立場にあるときに,指導することが難しいものが2つある。ひとつは,4.2項の「品質システム」の中にある「品質計画と品質計画書」である。計画と計画書の違いはなかなか理解してもらえない。それ以上に困難なのが,「文書」と「データ」と「記録」の関係であり,説明が大変難しい。4.5項の「文書及びデータの管理」と,4.16項の「品質記録の管理」が区別できないことが多い。日本人が従来から持つ,「データ」という言葉に対する先入観が災いしている。これは語感から来ている。したがって,ある部分では言葉を,日本的な意味を忘れて,欧米的なものに置き換えなければならない。
 それでは,システム構築していくうえでの要点をあげよう。表面的ではない規格の正しい理解が大切であると前述した。「データ」と「記録」という言葉を例にとると,一体このデータというものは何か,記録とはどういうものなのかを,はっきり理解しなければならない。
 また,ISOは日本語に訳されているものなので,日本語だけを見ていると失敗することがかなりある。例えば,4.16項の2か所に「利用」という言葉が出てくる。ところが英語を見ると,片方は「access」,片方は「a vailable for」なのだ。これは意味が全然違う。それを考えないで,ただ日本語の「利用」という意味だととらえると,失敗してしまう。
 4.6項の「下請負契約者の評価」も同様である。この「評価」は,「evaluation」という言葉が使われている。ところが,4.15項の「保管」で「適切な間隔で評価しなさい」とあり,こちらには「assess」が使われているのである。

■認証範囲の選択は自社の業務範囲に照らして
 活動の準備段階では,目的の明確化が必要であることは前述した。また,経営幹部の団結も必要である。失敗した例を見ると,関心のある役員と関心のない役員がおり,関心のない役員が横やりをいろいろ入れる。あるいは,関心がありすぎて出しゃばりすぎることもある。熱意や団結は必要だが,ただあまりかき回したりすると,従業員が混乱して,失敗する可能性が多い。
 また,取得する以上ある程度準備を整えて,中途半端なままキック・オフをしないことも重要である。前述したが,リストラの解釈など,ISO認証取得の目的を社内に正しく理解させることも必要である。
 次に,認証範囲の選択である。まずISO9000sには1,2,3がある。3は関係ないであろう。1か2の選択になる。
 2よりも1の位置付けが上であるというイメージがあるなら捨ててほしい。1と2は,4.4項の「設計管理」があるかないかの違いだけだ。したがって,自分の企業に設計管理があるかどうかを見極めるために,「製品」設計と「製造」設計の違いをはっきりと判断することである。
 私はこれまで,「印刷業の場合は2でいいです」と言ってきたが,印刷関係も業務範囲がいろいろ広がってきている。
 例えば,イベントの事業やCD-ROMの制作の業務である。CD-ROMで何か作るにしても,顧客からあらかじめ仕様を渡されて,それにもとづいて作るのであれば,「製造」設計となる。しかし,自分たちで企画をして,他の顧客に売り出すのであれば,1の「設計」管理に入る。
 だから,1にするか2にするかは,どんな製品群で認証を取得するかによって変わってくる。ところが,製造設計を無理に設計とみなして,2から1に変えようとする企業がある。それは,1のほうが上であり格好いいと思っているからだが,かえって失敗することが多い。
 1か2かで迷うときには,もう一度規格をよく吟味してほしい。4.4項の中では,「設計計画書を作り,それを進展に応じて更新し,それから組織のインターフェイスに定期的に報告せよ」という設計計画書が要求されている。
 例えば,クライアントから注文を受けて,刷版まで下ろすのに,だいたい2〜3日,急ぎの場合は1日で行うとすると,その範囲で,果たしてその設計計画書を作れるのかと言うと疑問である。それから,設計のインプットとアウトプットは現状でも何とかできる。ところがその後に,デザインデビュー,設計審査がある。これを本当にできるのか。そして,最後の妥当性の確認を,どのようにして行うのか。このような点を考慮したうえで選択してほしい。
 逆に,本来1を選択すべきなのに,2を選んで問題になる企業もある。日本のある企業がNATOに製品を輸出していた。ところが,ISOを取っているのに,なぜか問題が多い。その原因は,自社で設計を行っているのに,それを除いて2で認証を受けていたということであった。もしシステムの中から不適合が出たら,その是正処置をとらなければならない。しかし,これはシステム外の設計であるから,処置できない。これでは本末転倒になってしまう。
 だから,まずはどのような製品群で取得するのか,そして,それは「設計管理」にあてはめたほうがベターなのか,あてはめないほうがいいのか,それによって1か2かが決まってくると理解してほしい。
 では,製品群をどのようにして選ぶか。自社製品の全部にするのか,一部にするのか。これには,いろいろと企業のポリシーがあるだろう。ISOの場合は,製品群の中からひとつ選んで取ることができる。工場の中に,例えば1〜4までの4つの製品群があるとする。この中から,1と2とだけの取得も,3と4全部を入れた取得も可能である。どちらにするのかは,経営ポリシーによる。
 実際にコンサルティングした中では,かなり大きな工場で,たくさん製品群があるときは,取得製品をしぼらせた。ISOの場合は,しぼっても,定期審査のときにわずかな時間をプラスすれば,ひとつずつ認証を追加していける。すべての製品について一度に取るのと,追加していき,最終的にすべての製品で取る場合では,コストは追加するほうが多少高くなるが,ほとんど変わらない。取得する製品群をどのようにして決めるのかも,進めていくうえでのひとつの戦略的な問題である。

■事務局の人材はインターフェイスの取れる人
 次に,事務局の役割のポイントについて述べたい。事務局の大きな役割のひとつとして,システムの構築管理がある。事務局は全体を管理していかなければいけない。ところが規格の要求には,項目によって2つの特徴がある。ひとつは長い時間がかかること。それから,その項目を固めるために相当の人力が必要になるという意味で,その業務の持つ負荷である。
 長い時間がかかる例としては,4.1項の「経営者責任」で,マネジメント・レビューが最後に出てくる。このマネジメント・レビューを行わなくてはいけない。そのためには,品質方針を出し,目標を出し,それを展開して活動の記録を残す。また,内部品質監査を行うというような,一連の活動の結果が必要になる。そのため,マネジメント・レビューを行うには最低でも6か月ほどかかる。それに対して,契約,あるいは工程の管理,検査や顧客への納入などは,日々行われているので,3〜4か月でかなりの記録が残せる。
 負荷の例をあげてみる。4.6項の「購買」には,我々日本人になじめない,下請負契約者の管理,評価が出てくる。下請負契約者をどの程度持っているかで変わってくるが,印刷業の場合はかなりたくさんの協力会社を持っている。その意味で,これはものすごくボリュームがある。
 ある企業では,購買担当が2人しかいない。コンピュータで自動化されているので,そこには,ISO取得のための経営資源を割りあてなかった。そのため,4.6項が間に合わなくなった。予定より半年延ばそうとしたが,結果は2年に延びてしまったという例がある。したがって,逆算計画とPART手法を使って計画を立てないと,失敗する。
 次に,経営幹部と全員のインターフェイスを取れる人がいないと,事務局は大変になってしまう。会社には,価値観の違いや,性格の違いなど,どうしてもいろいろな雑音が出てくる。その雑音を事務局で全部抱えたら,完全に沈没する。したがって事務局では,経営者をうまく利用することが必要になる。逆に言うと,経営者側も事務局の顔色をときどきうかがっておかなければいけない。
 事務局は,自分で問題を全部抱え込んでしまう性格の人には向かない。つまり,人にやらせるより自分でやったほうが簡単なのだが,それは自分の能力の範囲内のことである。能力を超えたときには,完全にパニックになってしまう。だから,他人をうまく使える人が向いている。

■システム構築の留意点
 それから,システムを作っていくうえで,過剰なシステムや,肝心な取得目的を履き違えたシステム構築は絶対に避けてほしい。過剰なシステムにすると,後で運用できなくなる。一方,履き違えたシステムだと,たとえ取得できても単なる飾りの認定証になる。そして,無益な期間がずっと続き,そのうち皆の関心がうすらいでしまう。
 規格に対しては,怖がらないことである。そのためには,規格の行間を読む必要がある。規格とは哲学なのである。だから,なぜこういう要求をしているのかという意味を,哲学として読めば,それほど怖がらずにISOに取り組める。
 また,ある程度システムが固まってくると,いい意味で言えば見直しだが,空理空論で堂々巡りをやり出してしまう企業があるので,これは避けてほしい。机上で議論するより実際に動かしてみて,それから改訂するほうが失敗しない。
 次に,最初は目的もはっきりして,方針もはっきりしていたのだが,途中から妥協が始まり,当初の目的をあきらめて「まあ認証さえ取れればいいや」というような安易な考えに落ち込んでしまう企業がある。システムの構築にあたっては,これらを注意して進めてほしい。

■コンサルタントの活用は質で選び,頼りすぎない
 コンサルタントの活用について,参考程度に触れておこう。コンサルタントの質にばらつきがあることに注意してもらいたい。日本だけではなく,ISOの国際的な機関のニュースなどでも,世界的にその質のばらつきが問題になっている。コンサルタントにも資格制度が必要ではないかと討議されている。コンサルタントを活用する場合は,質を見て選んでほしい。安かろう悪かろうは避けたほうがよい。
 また,コンサルティングは,薬と同じだと言える。したがって,頼りすぎると副作用を起こして失敗するが,ほんのわずかでは効かない。コンサルタントを活用する場合には,適量にするのがひとつのポイントであり,計画的に使うことが必要である。
 コンサルタントを以下のようにみなしていただきたい。「コンサルタントは初めて山に登るときのガイド役だ。遠回りをしないで,できるだけ安全な道を選んで先に立って行く。しかし,あとについて来なければダメなのだ。コンサルタントは,受け手を背負って山の頂上に行くポーターではない。受け手がついてくるかどうかが問題なのだ」
 私がコンサルタントをする場合は,中腹から頂上が見えたら,前から後ろに戻り,後ろから見て,迷子になりそうになったら声をかけてあげる。誰かが転んできたら支えてあげる。

■ISO9000sの3つの意義
 最後に,ISO9000sシステムは,一体どういうものなのかを,私の経験からまとめる。
 ひとつはこのシステムを,企業の危機管理に活用するということ。2つ目は顧客の要望であるということ。顧客も,取引先がISOを取れば,受け入れや工程のコストが低減でき,管理を簡略化できる。いちばん大事なのは,相互に理解することである。つまり,売る側と買う側が共通のスタンスで話し合えることである。
 3つ目が国際化への対応である。グローバル化の中で,海外の企業との合弁や提携が出てきている。それによって,いままで関係ないと考えていた業種にも欧米的な,あるいはISO的なものが入ってくるだろう。そして将来的には,入札参入の基本条件になることも考えられる。
以上の3つの意義を理解し,活用して,企業の安定に役立てればと考えている。(プリンターズサークル1999年2月号掲載より)

[注意]
本記事で述べられている規格は94年版である。2000版については「なぜISO9000を取得するのか」をご覧下さい


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2000/08/29 00:00:00


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