SEYBOLD SF 2000 報告1
DTPをベースとした出版印刷の最大のコンベンションであるSEYBOLD SFが、8月27日から9月1日までサンフランシスコで開かれた。今回はかつての InDesign vs XPress のような派手な話題はなかったものの、いままで話題だけで上滑りしがちであったDTPの次の戦略に具体的に取り組んでいる話しがあって、IT化の進展の速さを感じた。その一方で、DTPでデジタル化したものの、IT化しない場合にはどう生き残るのかということも鮮明になってきた。
しかしこういうことはSeybold会議に10〜20万円かけて参加しなくてもできる。では会議は何のためにあるのだろうか。実は今回の会期中にSeyboldは30周年を迎え、参加者にはTシャツが配られた。Seyboldは最初はニューズレターだけであったが、技術開発の方向を話し合うセミナー/会議をして躍進した。創立者の家系が引退する前にこの会社をコンピュータ出版の大手ジフデービスに売り、そのジフデービスを買ったSoftbankの傘の下でSeyboldSFは行われるようになった。そして今回オーナーがSoftbankからまたKey3Mediaという会社に移っての新生Syebold会議であった。
Seyboldの秋の会議のテーマは、DTP→コンピュータパブリッシング→パブリッシングと変遷してきたが、今年は「Design, Build, Communication」をキャッチフレーズにして開催された。その背景には、Seybold会議がKey3Mediaに移るにあたって、出資者に事業を説明するのに、Syeboldの定義を再考したことがある。今この会議に参加する人の過半数は紙とWEBの両方に関わっている。今までの紙メディアの制作に関する高品質のグラフィックスのノウハウをWEBにも活かし、WEBでよりよいコミュニケーションをすることの需要は高まっていて、それでこの分野はこれからも伸びるのだ、というのが現在のSeyboldの責任者であるジーン・ゲーブルの説明である。
以前Publish誌を主催していたジーン・ゲーブルは、たとえ技術がどうなろうとも、才能やスキルに長けたグラフィックのプロがすべきことはずっとあるという。一方、音楽家は楽器を愛するが、楽器作りは別だ、という例えをひきあいに技術には深入りしないスタンスである。これはかつてSyebold氏が「技術がこのようになろうとしているから、どんなことがおこるか、何をしなければならないか…」というように問いを立てていたのとは逆である。
今は紙の出版からWEBなどへの移行期であるから、確かにグラフィックの人はWEBの仕事で忙しい。Seyboldの会議参加者でもベクターのアニメーションとか、ビデオなどストリーミング系の仕事に関する人が急増している。だから暫らくはこの会議は賑わうだろう。こういったことが「Design, Build, Communication」というテーマにつながっている。
これには異存はないが、これだけの理由で出資者が納得するとは思えない。参加者が金を払ってくる理由は、仲間の考え方を聞きたいからだとジーン・ゲーブルはいう。これは彼がかつてDTPユーザ会議をしていた時と同じ考えである。ジ−ン・ゲーブルは結局グラフィックスをコミュニケーションに役立てる工芸的な面を強調しているのだが、こういった点で才能を発揮できる人は土台限られていて、グラフィックスが企業として発展し産業として伸びることにはならない。冒頭のとおり、新たな時代でも食いつなげるだけである。しかしこれもこれからの重要な一つの方向であることには間違いない。
eBooksではMicrosoftとAmazon.comが組むとか、AdobeもeBooksの企業の買収や多くのところとの提携など動きが急になっている。オーサリングツールのみならず、知的財産権管理や流通など多面的に展開がみられる。DAMは大手企業の社内利用例や、製版印刷会社がアウトソーシングを受けている話しがあった。DAMはコンテンツ管理や制作のワークフローなどと密接に関連していて、非常に個々の業務に依存したシステムにならざるを得ないようだ。
ECはオークション方式の話しはほとんどかすんでしまい、ネットワークを使ったリアルタイムな協業化のメリットを、発注者から制作、印刷側までが議論していた。実際には業務の規模によっていくつかのモデルに分かれるようである。
これらの動向を個々のトピックスや、それぞれのテーマの抱える課題については順次報告する。
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2000/09/06 00:00:00