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グラフィックアーツの将来モデル

Bill Davison (PointBalance, Principal)

PAGE2000基調講演 「ネット上のグラフィックサービス」より その1

私は最初は出版や印刷会社において,プリプレスからプレスまでの制作工程にかかわっていた.その後,ハイテクを駆使したビジネス開発や運用管理の仕事になり,Kodak Electronic Printing Systemsのディレクタになり,またサイテックスアメリカの副社長として顧客のリモートサポートやコンサルティングを行った.現在は,システム設計やコンサルティング会社 Point Balance で,戦略開発や,業務分析と再構築,WEBやITやCIMの技術評価,新システムの導入の手伝いとプロジェクト管理などを行っている.
また,Graphic Communications Association (GCA) とResearch & Engineering Council of the Graphic Arts, Inc. (R&E),Technical Association of the Graphic Arts (TAGA)という,アメリカの代表的なグラフィックアーツ業界団体が結集して,総力をあげて取り組む Industry Architecture Project の共同議長をしている.

グラフィックアーツの将来統合モデルは,単に制作を速く安くするためではなく,ビジネスの価値を高めるためのものである.成功の条件はネットワーク上で仕事をすること,コンテンツに付加価値をつけること,情報管理能力,サーバ中心,知的財産権管理,コンテンツの資産化などである.これができるようなビジネスプロセスをも含めたアーキテクチャを,eKnowledge/eProductionという2面にわけて検討する.
これを実現するためには,従来の直列的なワークフローではなく,サーバで情報資源のデータベースと,その管理のためのメタデータのデータベースを中心にした考えが必要で,そのためには会社全体をエンジニアリングしなおさなければならない.

デジタルメディアと時間的な競争力

グラフィックアーツ業界にとっては,今は非常に興味深い時代である.各社がこれからネットワークによって,またECでの仕事をするために,今までのやり方では通用しなくなる.印刷・出版の内容は,非常に多岐にわたるため,必然的に複雑になる.新しいスキルが必要であり,非常に大きな変化が求められている.
我々のビジネスの将来に対するモデルを作ることが重要だ.我々が今まで行ってきたいろいろな約束をカバーするために,それぞれ個々に非常に小さな部分で今まで統合を進めてきたが,それをWebやネットワークで複雑に統合した形で,展開する必要性が出てきている.それによってビジネスのエンドからエンドまで全体をカバーするのが我々の将来のモデルである.

将来に対するビジネスのフレームワークを調べるのがアーキテクチャである.一般的に,ネットワーク/ハードウエア/ソフトの能力はどれくらいか,ファイルフォーマットがどうか,アプリケーションのプログラムは何か,などがアーキテクチャの技術的な側面である.どのくらい使いやすいか,異なったパートナーに使えるかもアーキテクチャの一つの側面である.
それに加えて,デジタルネットワーク化された場合の特徴として,非常にしっかりしたプロセスアーキテクチャが求められる.アーキテクチャは,どんな製品を作るか,あるいは顧客によって変わるが,全体のフレームワークは統合化されたコンピュータネットワークの環境である.アーキテクチャが必要になる第1の理由は,デジタルメディアであり,第2の理由は短時間競争である.

まず第1の理由は,様々なメディアがデジタルで収束に向かっていることによる.広告業界,出版会社でも,一般企業でも,いろいろなメディアを使うことによって,いろいろな能力を発揮できることが認識されている.以前はメディアというと,マスの放送といったイメージがあるが,今日では,もっと細かく分解して,それを組み合わせることによるきめ細かなメディア対応が求められている.
大きな企業になると,巨大な投資を行ってプログラム開発し,それによって経済効果を得ようとしている.印刷業界でも今日ではプリプレスだけでなくプリメディアといった概念が必要になる.いろいろな印刷に対応して,WEBやCD-ROMなどさまざまなメディアプロダクトや,媒体に応じたコンテンツおよび製品が求められている.これが第1の要因である.

2番目の推進要因は,自動化で短時間を競い合っていることである.組織の階層化がはっきりした大会社の場合,管理レベルも非常に多かったが,階層組織が今急速に崩壊してフラット化している.いろいろな会社がお互いに吸収合併を繰り返して統合されつつあると同時に,組織内の上下の階層関係がますます簡略化されるのが大きな環境の変化である.これとともに,それぞれの人がダイレクトに円滑なコミュニケーションできることが常に保証されなければならないことになる.

まずテクノロジーの統合があり,ビジネスをネットワークを通じて行い,また非常に簡単に,早くメディアを通じて対話ができる必要が生じている.さらに製品,サービスを迅速に提供するということも一方ではある.
アメリカのあるコンファレンスで,完全に自動化されたデジタルマニファクチャリングがどういうものかという「デジタルスマートファクトリー」の概念を議論した.私は毎日その日のまとめを行った.その時気がついたのはだれもクオリティやコストの話をしなかったことだ.クオリティが良いのは当然で,コストは競争力が当然あるという前提条件に立っていたからだ.
その時の内容は,いわゆる時間をベースにした競争力,迅速な対応という焦点に絞られていた.すなわち,そこにいた方は,毎日毎日,非常にローコストで高品質でしかもより早くという,とにかくスピードを最重点に活動していた.

しかし,アウトプットの対応が1つの時はそれでよいのだが,メディアが統合されるのにしたがってアウトプットが多様化してくると,時間的な競争力とともに先ほどのアーキテクチャという概念が必要になる.これらの新しいツールやスキルを使って,同じようなプラットホームでひとつのコンテンツを印刷,Web,CD-ROM,あるいはビデオなどの様々な媒体へ展開することを,ネットワークの中で統合して行う方向である.

ベンダーあるいはアプリケーションに対してもこのネットワークが使われ,印刷出版業界のワークフローに強い影響を与える.つまり技術はますます共有化されて,それによってコミュニケーションすることが可能になっている.

その2 「技術が利益を生むようにする」 に続く

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2000/09/10 00:00:00


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