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データ管理は誰の仕事か? DAMを巡る攻防

SEYBOLD SF 2000 報告3 

DAM(デジタルアセッツ管理)については近年よく取り上げているが、それほど進展があるわけではない。SeyboldSF2000では特別にDAM day があって、そこで4セッションあるほかに、メインの会議のあちらこちらにもDAMとつくものが5セッションほどあるほど、頻繁にでてくるテーマとなっている。これはあらゆるデータを一元的に扱うDAMがいろんなことに関係しているから、当然のことである。しかしどのセッションでも、DAMとは…、コンテンツ管理とはどう違うか…、アーカイブとの違いは…、画像データベースとはどういう関係…、などと同じような前置きがされていて、認識も広まっていないし、まとまりもつかない。

しかし導入は確実に始まっている、以前Bantaのことをとりあげたことがあるが、その時点ではBanta自身がセールスしてまわって、顧客を口説き落としてDAMの導入ををするとか、アウトソースするような段階であったが、今はSeyboldのような会議の参加者の方からBantaの門を叩く(Bantaに門があるかどうかは知らないが)ように変わった。CapitalOne社が導入のいきさつを話したが、顧客が2400万人、DMが年に1臆通、という処理を社内で行っており、制作の効率化、発送管理、リパーパス、コスト削減のために、DAM導入の短期決戦プロジェクトを行った。

だいたい1年がかりで、その前半分はアセスメントで、中頃からベンダーの選定に入り、Bantaに決めて今年中に立ち上げるという。この会議ではベンダーの選定手順などの話しが多かった。まず社内の体制作りのロードマップが先にありきであるが、最初はデモを見に出かけていって、その後いくらかのやりとりがあり、対象を絞ってこちらの目的や対象を告げ、来社してもらってデモをする。この時にちゃんとチェックリストを用意しておいて、さらにディスカッションをして、というサイクルを2回している。

ここでシステムが決まると、それに向けての社内の体制を考え直さなければならない。Bantaの場合はUNIXの世界に入ることになるので、社内のアセスメントに4日かかり、各分担ごとのトレーニングを始めていると言う。この会社はDAMの導入だけが目的ではなく、社内の作業をどのように自動化するかという課題の一部として取り組んでいるので、UNIXの勉強もあながち無駄とはいえないだろうが、かなり大掛かりな社内改革になっている。

一方、製版大手の American Color社 は、客の課題は自社の課題である、という視点でDAMの話しをした。数年前に顧客にDAMのサービスをするというアナウンスをしていて、PAGEで話してもらえないかと交渉をしたことがあったが、その当時はまだ体制が整っていなかった。今回はそれをどのように整えたのかということも聞けた。

まず問題意識としては、顧客から預かった版下やフィルムの管理がデジタルファイルになって非常にやりずらくなったことである。また制作途中で顧客のデジタルファイルを管理する期間は何ヶ月もあるいは年を越えてしまい、その間にさまざまな校正なども行われる。それに自社もいくつかの異なる場所に工場があり管理は大変である。しかし実は顧客も同じような目にあっていて、顧客の混乱が自社に重なってくる。

そこでDAMのためのプロジェクトを興し、Flexstor.db、Cumulus、IBM、を検討した結果、Flexstor.dbに決めた。これは社内の制作に使うと共に、顧客に「貸す」サービスも行う。そのためのサポートチームというのも社内に作った。そして営業がこれを売るためのトレーニングに入った。DAMのアウトソースのサービスはいろいろ出ているが、自分の会社は顧客の事情をよく知っている点がアドバンテージで、ベストソリューションになるという。

実はDTPによる顧客サイドの印刷物制作内製化というのは、あるところまで行くと、今度は逆に専門業者に戻ってくるだろうという見方がある。かつてのプリプレスという業務を今更売りこみ難いのだが、今度はアウトソースという言い方で体制を立て直している印刷製版会社がかなりあるように見うけられる。ダネリーも今日のアウトソースビジネスのベスト5に、ITとMediaManagementが入るといい、プリプレスの会社の半分は顧客へ出かけてのFM(ファシリティマネジメント)をやっていて、これらの65%は顧客からの要望であったという。

ダネリーが最近手がけた10のFM業務のうち、9業務がアウトソースに変わったという。その理由はひとつはMacにあり、プリプレスはMac主体なので顧客側のITインフラと違和感があることという。今度はMacが専業者を守ることになるのだろうか。SteveJobsにお歳暮を贈らねば…。またDAMは顧客が持つと手に余してコストコントロールできなくなるともいった。顧客側は仕事の山谷があるので、どうしても外部の力を借りることも必要になる。業界紙を何十も出している社内制作の立場のカーナーズ社も、相当処理量の大きいところでないと内製化が完結できないようなことをいっていたと思う。

どうも今回の会議の様子では、DAMはアウトソースとかASPビジネスとしても伸びそうな気配である。しかしビジネスを伸ばすのはIT専門業者なのか、顧客をよく知っているところなのかは、まだわからない。

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2000/09/12 00:00:00


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