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DTPワークフローはECに包含される

SEYBOLD SF 2000 報告4 

印刷のECサイトはアメリカで1999年から賑わいだしたばかりであるが、もうその姿を変え始めている。その基本は、印刷発注に関して見積りから決済までのトランザクション処理をするという機能と、制作進行上のワークフロー管理やファイルのやり取りをする機能である。これがSeyboldのECの定義の骨格で、その代表が、Noosh、Collabria、Impresse という御三家である。このほか印刷関連でのECサイトは100以上あろうといわれており、決まり文句のような駄洒落は、「もうe-nough」である。みんな機能の拡大を続けている途上で、次第に単機能から総合的なサービスへと進化していて、半年前のECモデルはもう通用しないほど、変化が激しい。

ECサイトとは別の言い方をすると、印刷受発注の間に入る第3者がWEBでさまざまなサービスを提供するもので、いわゆるASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)であるともいえる。印刷受発注の既存の流れとの関係は、今までの処理を自動化するというだけではなく、それを改善し、こういう流れがいいのではないか、という新たな考えでビジネスモデルを開発するところが出てきている。こういった開発者はそのアルゴリズムをパッケージソフトとして売り出すよりも、ECサイトに採用してもらおうという流れになっている。ECサイトの発展の下地としてこのことは大きく、川の支流がたくさん本流に流れ込むようにして、急速にECサイトの機能は拡大している。

ECに関連したサイトは実にいろいろあり、広義に考えるといくつになるかわからない。冒頭では100以上といったが、これはSeyboldが印刷のECサイトに含めないという次のようなところを除いた数字である。まずトランザクションやASPのためのソフトの提供をするところは、その会社自体がオープンにASPサービスをしているのでなければECサイトではない。自分でトランザクションやサポートをしないポータルサイトもECには含めない。資材などの調達サイトや、不要になった機器の販売サイトはECサイトに含めない。また印刷会社が自分自身のために運営するWEBでのサービスはオープンマーケットではないのでECに含めない。

御三家のような狭義のECサイトは、誰でも参画できるがメンバー制の場合もある。全く不特定多数のみを相手にする例は少ない。またECサイトのサービスに対して会費をとるか使用料をとるかの違いがある。もともとは発注者側を向いたサイトと印刷会社側を向いたサイトがあったのだが、印刷側でスタートしたCollabriaも発注者向けサービスを行って、両方にバランスをとった機能を追加し、デザインから納品まで全行程を追跡できるようになっている。

実際のサービスや料金は千差万別で一概にはいえない。だいたいは発注者からも使用料をとるが、Impresseはとらないし、当然印刷会社のサイトはとらない。機能的にはプレフライトとかファイルの保管(DAM)などをもつものもある。こういったどちらに属するかわからない機能を増やして、次第に受発注双方が協同してワークフロー自動化する方向へと向かっている。そのゴールは見え始めた。受発注のどちらかが主導権をとって、相手を従わせるのではなく、双方歩み寄って最短距離で仕事を出来るようにするとか、フォーマットや管理方法の共通化で統合的に仕事をできるようにするもので、どこかの流通革命を真似たままごとではなく、本格的に投資がされている。今のECサイトのキーワードは「オートメーション」であるといえる。

印刷会社にとってなぜECサイトが必要かという理由は、売り上げを伸ばそうとすると販売コストがどんどんかかって、結局意味がないような状況になったからである。そこで受発注をダイレクトにつないで、無駄な手間を省くのが生き残る道になるのだが、受発注双方とも n:n の関係なので、個別にシステムをつなぎあわせることはできない。そこで中間にブリッジ機能を果たすECサイトが登場する。だからECサイトにおいてはやり取りの標準化というのが大きな意味を持ち、XMLだけでなく、PPF JDF cXML PJTF IPA PCX PrintTalk XPP などさまざまな規格化の動きが急になった。

さまざまな n:n の印刷受発注を標準的に扱えるシステムがすぐに生れるわけではないが、こういうことが進むと印刷会社にとっては新たな取引の可能性とともに、既存の顧客をもっていかれるかもしれない驚異ともなる。いずれ印刷のECも一般的になり、受発注は大きく変るとみられるが、結局ECによる影響はプラスでもマイナスでもなく、本業の専門性で競争力をつけるところが生き延びるのであろう。ECが儲けるチャンスであるというのは見当違いで、取引の仲間に加えてもらうための最低条件程度のものである。

通常の印刷取引から販売コストを削減する部分に、ECサイトという新手ブローカーの手にする市場があり、そこでの覇権をねらって提携や合併の嵐が起りはじめている。ECサイトの先行各社はそれぞれの開発してきたことに対して、機能を補うのに他社と提携したり買収しつつ、次第に総合的なものになる。一方、最初は青写真だけで、既存の特徴をもつECサイトなどが持つ機能をチョイスして、うまく組み合わせて印刷のECを始めたのがPrintCafeである。PrintCafeは吸収される以前のそれぞれのECサイトが開拓した顧客を継承していて、大口発注者を獲得しつつある。当初の御三家とPrintCafeが印刷ECの動向を考える上での焦点であり、それらが目指しているものは単なる受発注の処理を越えて、全工程の作業環境に及ぼうとしている。

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2000/09/16 00:00:00


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