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インプレスのモバイル戦略

 IT関連出版やインターネット事業を手がけ,堅実に業績をあげてきた(株)インプレスは,10月6日に東証1部への上場することが決まり,新たな事業展開へ向けた資金調達の道を切り開く。2001年以降の重要な事業のひとつとして,モバイル関連に力をいれている。インプレス新規事業開発室室長の田村明史氏より,インプレスにおけるモバイル戦略についてうかがった。

株式公開へ

 インプレスは,「できるAccess2000」や「InternetMagazine」などIT関連の雑誌や書籍を発行し,InternetWatchやメールマガジン等などのインターネット事業をいち早くてがけてきたネット業界でもリーダー的な存在である。傘下にインプレスコミュニケーションズ,リットーミュージック,エムディエヌコーポレーション,ミュージックメディアリサーチ,IPG Network Inc. など音楽やデザイン関連の5つの会社を有する持ち株会社である。1992年の設立と歴史は浅いが,2000年9月6日には,新興市場ではなく東証への直接上場が承認されるという異例の株式公開をはたした。

 次々に新たな市場に参入し,ITビジネスのモデルを創造してきたインプレスは,豊富な情報ソースとIT事業で蓄積したノウハウを使って,モバイルビジネスへの参入をはじめた。

メディアミックスによる事業展開

 インターネットの普及により情報は無料の方向にますます向かっており,ニッチで確かな情報を出していかないと,ユーザにお金出して購入してもらうことが難しくなっている。アメリカは紙媒体のほとんどが広告モデルであり,紙媒体は無料同然の値段で配られていた。このためアメリカではネットの普及が早かった。もともとお金を払って書籍や雑誌を読んできた購読文化である日本は,その点がネットの普及が今一歩伸びない原因となっていると田村氏は指摘する。

 現在,インプレスのネットの収益は伸びている。Webサイトの広告収入は倍増し,メールマガジンは広告費の値上げにより売上げを伸ばした。ただし,Webサイトもメールマガジンも乱立しているので今後のビジネスは決してやさしくはない。

 重要なテーマは,デバイスが変わっていくことだと田村氏は考えている。今後は,家電や携帯電話など非PCのデバイスでも情報を双方向で入手できるようになる。デバイスが違えばユーザが求めるものも違ってくる。従来のインターネットは,本当に情報の欲しい先進的で前向きなPCユーザがアクセスしてきたが,これからは一般のユーザがひまつぶしに情報にアクセスするという状況もでてくる。

 情報家電や携帯電話の普及でインターネットユーザが増えると,広告ビジネスなどいろいろな可能性も増える。ようやくネットビジネスは何千万という市場として成長したといえる。この数年,ECは話題になってきたが,本当に収益をあげているところはまだわずかである。田村氏は2001年以降,リアルな市場をひっぱってきた大手企業が本格的にネット市場に参入して,EC市場が実際にビジネスとして稼動すると予想する。

iモードでニュースエンターテインメント

 インプレスでは1999年から携帯電話に注目をしてきた。特にNTTドコモは,iモードでコンテンツ配信や課金システムなどのビジネスモデルを確立してきている。例えば,iモードの広告はクリック率が高く,ある新聞社の公式サイトは週300万円の広告費をつけているという。電通,NTTドコモ,NTTコミュニケーションは6月に広告代理店D2コミュニケーションを設立して,iモードの広告を取り始めている。

 iモードサービスでは,ドコモが認定した公式サイトと一般サイト(非公式サイト)の2種類あり,公式サイトとして認められれば、ドコモが情報提供業者に代わって利用料金を課金・徴収してくれるなどのメリットがある。8月の段階で,NTTドコモの公式サイトは約1000サイト,一般ホームページは18,700サイトにのぼる。(iモードに関する情報サイト「OH!NEW」より:http://www.ohnew.co.jp/)しかし,公式サイトに認定されるのは難しく,インプレスでも公式サイトに認定されるまでは苦労したという。

 インプレスではiモードサービスを提供するにあたり,ニュースエンターテインメントという言葉をキーワードにした。ただ読むだけではつまらない。選んだり,遊んだり,いろいろなシチュエーションを提供するニュース配信をする。

 インプレスコミュニケーションズは,公式サイトとして「impress Watch」の運用を8月から開始した。情報ソースとしてWebサイトのInternetWatchとPC Watch,ケイタイWatchのニュースを使い,このデータをiモードのデータ形式であるコンパクトHTMLに自動変換して配信している。利用者は普通にタイトルから全文をひきだすこともできるし,「マイニュース」では気になるキーワードを登録して関連情報を自動的に送信してもらうことができる。また,暇つぶしツールとして「クイズでニュース」という機能をもたせている。このサービスでは,ニュースのキーワードの穴埋めクイズで遊ぶことができる。iモードで提供しているインプレスWatchのユーザは,サービス開始から約1ヶ月で3000人強になり,2001年には1万人を超すと見込んでいる。

 インプレスでは,まず最初にITでニュースエンターテインメントサービスを提供したが新聞社や音楽業界,映画業界など他の業界へも,同様のビジネスモデルを展開していきたいと考えている。

 携帯電話は時計と同じで常に身につけている。このようなデバイスは数少ない。さらに,財布として使ったり,情報を出し入れしたり,位置情報を調べるツールになるなど,いろいろなものが集約されていくデバイスになるだろう,と田村氏はその可能性に期待している。

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 携帯電話は技術も情報の流行りもインターネットより移り変わりが速い。インプレスは1,2年前のインターネットバブルを横にみながら,インターネット事業を4〜5年かけて地道に展開し,コンテンツビジネスやストリーミング技術のノウハウを着実に蓄積してきた。紙,ネット,モバイル,さらにはデジタル放送もにらみながら,メディアを組み合わせてビジネスを展開していく中で,今後も他のインフォメーションプロバイダでは中々思いつかない,遊びごころのある情報サービスが期待できそうである。

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2000/09/28 00:00:00


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