Bill Davison (PointBalance, Principal)
PAGE2000基調講演 「ネット上のグラフィックサービス」より その5
従来型のワークフローは,まずタスクがあり,タスクを単に結びつけただけで,最初に情報ありきではなかった.いわゆる職人芸的なやり方で成立していたモデルだ.
一方,新しい製造システムのモデルは,まずデータファイルが中心にあり,このファイルデータベースをもとにプロセスを設計する.非常に多くの会社を相手にするときや,いろいろな異なった場所にデータ提供する展開のときに新しいモデルが有効になる.
このデータは常に把握されているわけだが,具体的にデータベースの内容を管理して把握するには,メタデータベースと呼ばれるものが必要となる.メタデータとは,情報についての情報である.データベースの中にはグラフィックス,テキストまたレイアウトがあり,これがいわゆる生データである.
メタデータはどんな情報で,いつどこで使ったか,あるいはその顧客は,色がどれくらい使われたか,カラーの管理がどのように行われたか,写っている場所がどこなのか,レゾリューションがどれくらいであったかなどを管理している.
このようなメタデータは1ヶ所に保存され,他のデータベースと接続されていて,様々な環境の中で情報管理を行う.このメタデータべースをもとにすべての情報が管理され,アプリケーションはそのうえに行われるが,ドキュメントもそれをもとにしてつくられていく.
制作と並行して,それぞれのオペレーションの動きのあとに報告が行われる.したがってジョブがどこにあるか常に把握できる.次に何をするかということも常に把握できる.また,並列なのでいくつもの動きが並行で動くことも可能だ.こうなると,ワークフローというのは頭から尻尾までの流れではなく,1つ1つの断片的な細かい動きになる.これは非常に強力な技術で,まだ初期段階だが現在できつつある.まだ商品化していないがプリプレスベンダーから今後出てくるだろう.
現在の積上進化型の制作から工学的モデルになると,データはフロントエンドに戻ってきて,コンテンツマネジメントあるいは全体のサプライチェーンに関与し,作業がすべて追跡できる.
そしてこのメタデータベースを囲むものとしてコアデータがあるわけだが,オペレーションがそれぞれ別に動く.
そしてオペレーションに何をするべきかという指示を与えることもできる.例えば,生産計画に関して,あるいは,決済に関しての指示も自動的に出すことができ,すなわち人の要素はその間には入らない.またECに関しても,情報がどこにあるかということ,そしてそれを顧客に出すことも可能になる.このモデルで将来使えるものは非常に多くある.つまりデジタル資産の管理をいかに行うかということで,非常に重要な側面をもっている.
これがECに関するフロントエンド部分の(コンテンツ制作やアセッツ管理と同じような)仕事だ.これはシステムの中心で情報が保存/管理され,このような情報をBtoBに生かしてプロジェクト管理を行うか,それとシンクロした形でサプライチェーンも進めるかなど,これらをすべて統合する課題が生まれる.
そして(プリプレス以降の制作のように),実際の仕事のプロジェクト管理へフィードインしていき,つまりジョブのセットアップから,パートナーはどのような所と組んで,その調整や追跡はどのような形で行うか,また,顧客がどのような形で受け取ったか,そして請求をどう出すか,そのあとジョブのレビューから,将来的な改善のためのレポートをする必要がある.
情報管理が自社のタスクの中心をなす.制作/製造サプライチェーンは,スタートとしては,プロダクトプランニングから始まり,コンテンツを作りマスタリングを行なう.そして各メディアに展開する流れがある.それに直交した流れで,顧客に対してのサプライチェーンがある.この場合も情報が中心に位置し,スタートはリサーチから,下にいくにつれて,社内のビジネスシステムとの接続になる.
このような将来のビジネスモデルはすべてが一度に実現するのではない.まず,デジタルやネットワーク,あるいは管理情報,接続がサプライチェーンや顧客に対して,シームレスに行われる.これらがますますデジタル化されることがカギである.
2000年2月2日PAGE2000基調講演より(文責編集)
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2000/10/07 00:00:00