第5回マニラFAGAT
情報交流会講演レポート
1.印刷業の現況(統計から見た日本の姿)
2.技術変化と関連業の消滅
3.印刷業の技術予測と業界構造
4.印刷界が現在の困難を脱出し,事態を改善しようとする議題について,
FAGATメンバー国が意見を交換することに関して・・・・・・
<序 文>
現在は社会全体が情報化社会に突入し, コンピュータとインターネットの時代になった.
社会のビジネススタイルもライフスタイルも非常に早い速度で変化を続けている.
印刷界はこの変化に直撃され,経営と技術の両面で影響を受けている. 変化の内容を要約すると次の様になる.
このような日本の印刷界が受けている大きな脅威は,日本だけでなく米国でも,EU各国もみな同じである. そして,この脅威は社会および技術システムの全面的変化から発生しているので,単に先進国だけに起こる現象ではない. アジア諸国にも,1〜2年のタイム差があるだけで,殆ど同時に進行するだろう. それだけに情報社会における印刷界の対応は,アジア全体で急がなくてはならない.
1988 | 1990 | 1993 | 1995 | ||
* | 印刷業の企業数 | 34,500 | 33,600 | 32,900 | 31,600 |
製版業の企業数 | 6,700 | 6,600 | 6,300 | 5,700 | |
* | 印刷業売上高(千億円) | 60,8 | 71,8 | 73,7 | 73,6 |
印刷業も,製版業も事業所数はどんどん減っていきます. まだ,発表になっていま せんが,1999, 2000年の数は急速に減っているはずです. 特に製版業は産業分類がで きなくなる位,会社数が減り,経営力も弱くなりました. 理由はプリプレスワークであ るタイプセッティングやカラーDTPの技術が,製版業や印刷業の手から離れ,グラフィ ックデザイナーに移ってしまったからです. 印刷業の数が減るのは主に小企業です. 印刷ビジネスは全くコンピュ−タリゼ−ション に巻き込まれていますが,若い後継者がいない会社では事業変換ができないので廃業し てしまうのです.
1-3人 | 4-9人 | 10-19人 | 20-29人 | 30-49人 | 50以上 | 合計 | |
事業所数 | 12,982 | 9,858 | 3,326 | 1,596 | 894 | 1,151 | 29,807 |
% | 43.6 | 33.1 | 11.2 | 5.3 | 2.9 | 3.9 | 100.0 |
印刷業のビジネススケールは日本でも,19人以下の小企業が88%です. トナーベース のデジタルプリンティングが社会的に普及すれば,一番影響を受けるクラスです.
c) 経営指標(大日本印刷と凸版印刷 / 1998年4〜9月, 中小印刷1997年)
大日本印刷 | 凸版印刷 | 中小印刷 | |
売上高 | 100.0 % | 100.0 % | 100.0 % |
製造原価 | 83.7 | 85.0 | 76.3 |
営業,管理費 | 11.1 | 10.2 | 20.4 |
営業利益 | 5.2 | 4.8 | 3.3 |
日本には大日本印刷(株)と凸版印刷(株)という世界的な巨人がいる一方,30,000 社以上の中小企業がいるのです. 大,中,小の規模の会社が,それぞれ「棲み分け」 できる理由は仕事の多様性にあるのです. 大きなボリュームの仕事は大会社が受注し, 小ロットの仕事は小会社が受注するのです. その表現は売上高対一般販売管理費にあります. 大日本印刷(株),凸版印刷(株)の比率は約10%,中小印刷では20%以上にな ります.20〜50人のスケールでは25%,19人以下では30%以上になります.
d) 印刷産業の売上高(製版,製本などを含む)- (10億円単位)
1997 | 1998年 | 1999年 | |||||
4- 9月 | 10-3月 | 合計 | 4- 9月 | 10- 3月 | 合計 | 4- 9月 | |
上場大手10社 | 1225,9 | 1255,3 | 2481,2 | 1138,9 | 1196,0 | 2334,1 | 1138,7 |
前年同期比 | 4,3 | ▲2,1 | 0,9 | ▲7,1 | ▲4,7 | ▲5,9 | ▲0,02 |
中小企業 | 3024,1 | 3271,0 | 6295,0 | 2916,8 | 3133,5 | 6050,3 | 2829,8 |
前年同期比 | ▲1,1 | ▲2,3 | ▲1,3 | ▲3,5 | ▲4,2 | ▲3,9 | ▲3,0 |
印刷産業全体 | 4250,0 | 4526,3 | 8776,2 | 4055,7 | 4329,5 | 8384,4 | 3968,4 |
前年同期比 | 1,3 | ▲2,2 | ▲0,5 | ▲4,6 | ▲4,3 | ▲4,5 | ▲2,2 |
e) GDP成長率と印刷産業出荷額(前年比)
1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | |
名目 | 7,5 | 6,6 | 2,8 | 0,9 | 0,8 | 0,8 | 3,5 | 1,5 | ▲2,5 |
実質 | 5,1 | 3,8 | 1,0 | 0,3 | 0,6 | 1,5 | 5,1 | 1,4 | ▲2,8 |
印刷名目 | 9,7 | 7,2 | ▲1,5 | ▲3,1 | ▲3,7 | 3,5 | 2,4 | ▲0,5 | ▲4,5 |
1996 | 1997 | 1998 | ||||
出荷量 | 対前年比% | 出荷量 | 対前年比% | 出荷量 | 対前年比% | |
塗工印刷紙(千トン) | 4,077 | 100.0 | 4,346 | 106.6 | 4,301 | 99.0 |
オフセットインキ(千トン) | 128 | 100.0 | 138 | 107.8 | 137 | 99.3 |
製版フィルム(in Ku) | 69,4 | 100.0 | 67,4 | 97.1 | 58,6 | 86.9 |
g)価格競争の現状(Web offset)下請け値段
この表の価格は下請契約価格ですが,直受け(元請)の場合でも20%位高いだけです.
5年前の価格水準に比べると1/2,10年前と比べると1/3になっています.オフ輪の生
産性は確かに良くなりましたが,現在の価格レベルはインキやガス,機械償却額という
ランニングコストだけで,作業者のコストは入っていません. まったく低価格という
べきです.日本のオフ輪は全く供給過剰で価格競争がいかにはげしいかということです.
そして大手会社の圧力が非常に大きいということを意味します.
a) | 30年前1970年 | 活字よさようなら(good-by hot type) |
コ ールドタイプこんにちは (hello cold-type) | ||
(消滅業種) | 活字鋳造//鉛版鋳造/活版業者 | |
b) | 7年前から今日まで | こんにちはコンピュータ,こんにちはDTP |
(消滅業種) | 写真植字業 | |
(衰退業種) | 写真製版業/小規模業者 |
この30年間に日本の印刷界はすばらしく成長し,近代化した. その一方,沢山の会
社や業種が消滅したのも事実だし,大きな犠牲を払った. そして21世紀に入れば,
また新しい変化が待っている.
3. 印刷業の技術予測と業界構造
FAGAT情報交流会の議題
2000/11/06 00:00:00
日本の印刷業界の技術構成と明日への構築
4. 印刷界が現在の困難を脱出し,事態を改善しようとする議題について,FAGATメンバー各国が意見を交換することに関して…….
本来,FAGATはグラフィックアーツテクノロジーのフォーラムであるから,議題は技術的なものであるべきだ. ところが'紙とインキ'に関する技術は,プリプレス,プレス,ポストプレスとも成熟し,一部の技術を除いて殆どがコンピュータのマイクロチップの中に入ろうとしている.印刷界における現在の最大の関心事は下記のような議題である.
これらの議題は'紙とインキ'の技術とは関係が薄いが今後数年間は続くものだ.各国は毎年2つ以上のものについて各国の事情を発表することが望ましい.
過当競争, 価格の下落,印刷会社数の減少,会社経営のリストラ
アプリケーションソフトの作成能力,ネットワークの管理能力などに関する教育と人材の採用