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データベースシステムでe-ビジネスをサポート

データベースシステムはいまやe-ビジネスにおいて不可欠の要素になっている。しかし,コンピュータのスキルやサーバの構築,保守管理などの負担が問題になる。印刷会社が顧客企業向けのネットサービス展開を考えた場合,自社のみで行うのではなく,技術力のある企業と提携する方法が得策なのかもしれない。そこで,データベースソフト開発企業の日本デジタルオフィス(株)の代表取締役濱田潔氏に,同社のマルチインフラビジネス展開について伺った。

印刷会社と協力して電子カタログを制作

 日本デジタルオフィス(本社・大阪)は,エンドユーザのソリューション展開をサポートすることを目的に1997年に設立された。
 当初はファイリングソフトの開発・販売やビューアの提供を主たる業務としていた。次いでCD-ROMでファイリングの行えるソフトを開発した。インストールレスでデータベースをCD-ROMの中に蓄積し,何万件というデータをきわめて高速に検索できるものである。この段階でアウトソーシング+ソフトウエアというひとつのビジネスモデルができた。
 それが大手印刷会社の目にとまり,電子カタログの制作を打診された。そして,データベースを活用した,さまざまな業界のハイエンドな電子カタログを手がけることになった。数をこなすことによりデータベースで画像をどのようにハンドリングするのか,といった問題も徐々にスキルアップしていった。
 誰にでも使えるようなインタフェイスを考え,タッチパネル感覚の画面にしたり,ポップアップ表示などのクリッキングビュー機能をもたせた。また,データベースから検索した画像の合成や,金利計算などの高度な計算機能なども取り込み可能にした。 マンションやホテルの電子カタログを手がけてわかったことは,印刷会社と手を組む必要性である。 「印刷会社の営業力やノウハウと手を組む。われわれは技術力に特化していく。コンピュータ系企業は従来の商習慣を軽んじるところがあるが,われわれは大切だと思っている」という。

3つのソリューションを展開

現在,3つのアプリケーション・サービス・プロバイダ(ASP)事業を展開している。(1)「Be-Web」は情報提供・商品販売,(2)「Do! Parts」はプレゼンテーションおよびアフターサービスの提供,(3)「デジタルリサーチャー」はマーケットリサーチ,という位置づけである。3つのソリューションをうまく回すことにより効果的なビジネス展開が望めるという。

(1)Be-Web
 マルチインタフェイスのWebカタログ・ショップである。インターネットショップを立ち上げたくてもシステム導入に踏み切れない企業に向いている。大量のデータを整理し,無限階層のツリーやキーワード検索などに優れている。取扱説明書などを添付することができるし,各商品パンフレットのPDFファイル,テキストファイルだけでなく,音声や動画を使った資料も添付できるので,よりわかりやすい商品説明ができる。
 資料請求のニーズにも柔軟に対応している。FAXやメール送信で資料を出力でき,サポートの効率化と情報提供の迅速さが実現されている。
 また,最新のWebデータベースからCD-ROMカタログをオンラインで制作することで,リアルタイムな情報を掲載できる。同じデータベースからiモードへの転送も可能である。
 商品コンテンツとノウハウを豊富に抱える印刷業界向けにはOEM制度を設けている。印刷会社からノウハウを提供してもらい,同社で商品カタログのデータベースを構築する。製品名の「Be-Web」の「Be」とは何にでも変わるという意味で,OEMをイメージして名付けられたそうである。

(2)Do! Parts
 ユーザサポートツールである。デジタル画像を利用した製品カタログ・マニュアル・パーツカタログとして使用することができる。
 デジタルカメラで撮影した写真に部品データを関連づけて登録し,画像上に部品番号を簡単に貼りつけて,自動的にHTMLを生成する。書き出されたものをサーバにアップしてカタログとして利用できる。パーツごとの使用説明書としても用途があるし,部品発注・在庫確認も容易に行える。
 客先へのプレゼンテーションはもとより,営業マンが出先でPCがない状況でもi-mode端末使用によりFAXで資料を取り出せる。
 また,従来なら数カ月かかった制作期間がわずか数日でできるのも強みである。

(3)デジタルリサーチャー
 Web上でアンケートを実施し,その結果を分析する顧客管理機能を無償で提供するサービスも行っている。アンケートは基本的に選択方式なので作成が容易で,専門の会社に発注しないでも自社内で機動的に調査を実施することができる。
 アンケート分析もクロス分析,円・三次元グラフ描画などの機能はもとより,回答者の特性や条件ごとの絞り込み機能も付いている。個人の嗜好に合わせた商品の提案ができるように電子メール送付も可能になっている。対象ユーザは法人に限られ,今のところ無償で利用できるアンケート件数は2000人分までである。それ以上の件数,さらに本格調査を実施する際には,機能強化して有償で行うこともできる。このシステムで商品企画やメーリングリストとしての利用が可能になる。
 これらに共通しているのは,背景の模様からロゴ,ボタンに至るまですべてデータベース化されていることである。100%データベース化されており,単純で静的なHTMLはひとつもない。データベースが基本技術で,いかにワークフローに取り入れるかがコンピュータ業界の共通認識だという。同社は「XML/SGMLなどの元になるデータを作るデータベース業務に特化している」という。

東京支社開設でさらなる飛躍を

 「既存のECサイトは,ASP会社とエンドユーザが直接やろうとして,エンドユーザ側に負担をかけている。しわ寄せが出店社にかかり,伸びるものも伸びなくなっている」と濱田氏は語る。そこで,同社のシステムでは,出店社の負担をなくすために,サーバ構築やデータベース構築などの面倒な作業はデータベース化している。その結果,安価で簡単にe-ビジネスに参入できる。
 今後ECサイトはさらに増えてくるだろう。商社を中心に新規参入も目立つ。印刷業界においても顧客サービスの延長と制作工程のフルデジタル化が追い風となっている。もっともそのうち過当競争になることは目に見えている。生き残るのは,確かな技術力とサポート力,またしっかりとしたナビゲーション機能をもっているところであろう。もちろん同社へも期待したい。
 1999年10月に東京支社を開設した。営業の拠点を東京におくことを見越してのことだ。濱田氏も東京と大阪を毎週行き来している。またベンチャーキャピタルも準備中で,株式公開を目指している。今後は実績面でも資金面でもよりいっそうの充実を図っていくという。(上野寿)

『JAGAT info』2000年11月号より

2000/11/06 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会