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XMLを使った電子申請

テキスト&グラフィックス研究会8月のtechセミナーではXMLを活かすさまざまな応用をとりあげた。そのうちジェットフォームジャパン(株)の小島英揮氏は電子申請におけるXMLの効用や電子申請コンソーシアムについてお話いただいた。そのお話をまとめてお伝えする。
ジェットフォームジャパンは1982年に創立されたカナダに本拠を置く会社(www.jetform.com)である。電子フォームや企業のワークフローソリューションの開発・提供を行っている。

電子申請

企業や官公庁・地方自治体など生活のさまざまな場面で申請書や報告書などの帳票(=フォーム)が使われている。フォームにはいつだれが申請し承認したかというワークフローが埋め込まれており,ビジネスプロセスの出発点でもあり,また終着点でもある。JetFormコーポレーションは,こうした観点からフォームをプロセスやワークフローも含めて電子化するツールとソリューションを提供している。

行政機関と申請書

行政機関や自治体のホームページは観光案内などの情報発信に偏っていて住民に必要なサービスが用意されていない。平日の受付時間内に直接窓口まで行かなければ手続できないし,行ったら行ったで書き方は煩雑だし,別に添付書類が必要になったり,複数の機関に行かなければならない。行政側も紙ベースだと承認プロセスの時間もかかるし物理的なコストもかかる。記入ミスなどで窓口で書類を書き直させるコストもばかにならない。インターネットを使ってこうした煩雑さや無駄を解決したいという期待は申請する側にも行政側にもある。この期待を実現するのが,XMLとインターネットによるデータの作成と伝達の仕組みであり,また具体的な申請・届出を処理するXFA(XML Forms Architecture)である。Jetformでは,この仕組みによって行政サービスを行う電子フォームポータルサービスを提案している。

XFA

XMLを電子フォームに特化した技術がXFA(XML Forms Architecture)である。XFAは電子フォームの表示やデータの入出力が可能で,セキュリティには電子署名をバインドする技術を使っている。XFAはJetFormからW3Cに標準規格として提唱しており,http://www.xfa.com/で公開されている。W3CのXformsという規格は,XFAの要素を取り入れて一定レベルの標準化のために規格化したものである。

現在,行政側はXMLに焦点をあてており,2003年をめどにインターネットを使って中央省庁の申請・届出・調達をやろうという電子政府の動きがあるが,すでに本人の意思確認を電子署名で行う法律が可決されている。XMLでデータを書けば,ワープロでもスプレットシートでも,データを中心にデータベースを経由してアプリケーションがつながる。つまり,XMLはデータ形式でありながら,さまざまなリソースやアプリケーション,システムをつなぐためのミドルウエアの働きをするのである。また,特定のアプリケーションやアーキテクチャに引きずられない特徴は,長期間のデータ保存の必要がある行政機関にとって大きな利点である。XMLはプレーンなデータであり,スタイルシートなどは場合によって適当なものを使えばよく,データとしての保存性が非常に高い。

FormFlow99

XFAという技術を使うために開発したのがFormFlow99という電子フォーム設計・運用ツールである。FormFlow99はフォームのレイアウトツールとしての機能のうえに,いろいろな処理やアプリケーションを組み込める。たとえば書式Aを記入すればBは記入しなくてよいようにロックをかけたり,金額を入力すれば自動計算して請求金額が出るなどの機能を組み込める。こういう機能はすべてXMLを使っている。Webでのフォームの配信,印刷,データの取り込みや他のアプリケーションとの連携などには,従来はそれぞれPDFを生成出力したり,HTMLからデータをコンバートしたりなどいろいろな部品を組み合わせていたが,FormFlow 99では,これらすべてが1つのフォームのファイルでできるのである。

普通のWebアプリケーションと異なり,FormFlow99の処理はすべてそのフォーム上で実行し,サーバとの通信は行わない。入力されたデータはXMLとして生成され,他のアプリケーションやワークフロー,データベースに渡せば,そこでそのシステムの入力画面になる。もちろん他のシステムやデータベースからデータをフォームに取り込んで表示することもできる。また,フォームの情報とデータの情報を連携できるのも大きな特徴である。たとえば同じ見積り書のデータを,A社に出すときはA社のフォームに当てはめ,B社の指定伝票に出すときはB社向けに出せる。フォームがデータを理解して最適な形で表示するのである。利用者側にはブラウザさえあればよい。また,フォームだけがインテリジェントなのではなくワークフローと連携させることもできる。

電子申請の段階的導入

電子申請を実施するには行政機関でデータを受け取って処理するワークフローの構築が必要である。たとえば法務庁の見解では領収書などのスキャンしたデータはコピー扱いとなり,原本としての添付書類とは認められない。もとの領収書自体から電子化しないとうまくいかないのである。このようにいざ電子申請を実施しようとすると受け手の負担が非常に大きくなる。

したがって,一気にすべてを電子化するのではなく段階的な導入を考える方が現実的である。入力フォームとエラーチェック機能および印刷機能があるだけで利用者も行政機関もずいぶん楽になる。自動計算などの入力支援サービスを組み込んでおけば,たとえ出力したものを役所に持って行く手間はかかるとしても,差し戻しなどがなくなる分効率はよくなる。24時間のフォーム入力サービスを提供すれば利用者も空いている時間に入力支援を受けられて便利になる。

そして次の段階では入力したデータを役所に送って役所で印刷してもらう。技術的には印刷ボタンの代わりに送信ボタンを電子フォームに貼るだけでよいし,受け取ったほうは印刷しさえすれば,あとは従来通りのプロセスで処理できる。これは簡単なことだが,データを送るということは,すでに電子申請が実現しているのである。

入力から受付,処理まで一貫して電子的なワークフローで処理するのが最終目標だが,最初から最終段階を目指すとハードルが高くなってしまう。ところが,ここで障碍になるのは技術ではなく,制度や慣習である。それに対応するには一気にやるのではなく徐々に段階的に持っていけばよいのである。

電子申請推進コンソーシアム

電子申請推進コンソーシアムは,電子申請のメリットを認識し,広めるための活動を行っている。具体的には,共通基盤サービスモデルを普及させるため共通のアウトプットを持とうということで,XMLタグの標準化を目指している。たとえば「年」のタグがA市では年度,B市はイヤーとなっていたら,いくらXMLデータを持っても流通性がなく,コンバータツールが必要になる。そのために重要なのがタグの標準化なのである。もちろんセキュリティやユーザインタフェースも検討しており,各電子申請のポータル間の整合性や親和性を高めようと活動を行っている。

コンソーシアムのメンバーは通信関連,印刷会社,ハードウェア,ソフトウェアメーカーなど現在21社である。また,情報知識学会や行政書士会などのいくつかの団体の後援もいただいている。
テキスト&グラフィックス研究会

お知らせ:
通信&メディア研究会では,11/30(木)に「XMLによる業界標準」セミナーを開催します。どうぞ奮ってご参加下さい。

2000/11/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会