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オンデマンド印刷への追い風を活かせるか?

統計的に見るとアメリカや日本など商業化の進んだ国の印刷産業は減少傾向にある。これは市場が飽和して行くのに対して技術革新の方が減速しないから起こることで、印刷物の需要減が起こっているわけではなかった。これから紙媒体の利用が減って電子媒体の利用に移行すると、先進国の紙需要そのものが減るはずだが、紙メーカーは需要に関して強気に見える。

紙の減少は急激には起きないようにいわれている。近未来的にも紙の需要は残るとしても、紙出力のあるパーセンテージが伝統的印刷ではなく、プリンタなど電子写真とかインキジェットへのシフトしていくことは明らかだろう。これはかなり以前から起こっている変化で、普通紙コピーが軽オフに置き換わるとか、パソコンのプリンタが普通紙コピーに置き換わるなど、複雑に折り重なって現れている。

デジタルプリンティングが伸びることの必然性は、その方が安いからかどうかはわからない。今でもオンデマンド印刷よりも従来印刷の方が安い場合は多くある。しかし先進国で紙を減らさなければならない理由は、無駄をださないことであることを忘れてはならない。このこと自体はビジネスに結びつき難く、商業的な取組みは進まなくても、法規制として浸透していくかもしれない。

今の紙メーカーはそのような動向に備える気配はないが、法規制の動きがでると逆に紙の価格上昇を引き起こしながら、紙の無駄使いが減る方向で緩やかに推移していくシナリオが考えられる。これは印刷業にとっても視点の変更を余儀なくされる。今までは量産指向でたくさん刷ると儲かり、少量の仕事では割が合わない経営のモデルであったを変えなければビジネスは伸びないからである。

かつては「組で損して、刷りで儲ける」とまでいわれ、印刷でボリュームが多い仕事を集中的に生産をして、その生産設備が利益の源になっていたのが、デジタルプリンティングの「ショートラン」とか「バリアブル」ではどこに利益の源があるのか分からず、それが広く分散してしまったように見える。このことが従来の印刷業がデジタルプリンティングに入っていきにくい理由であろう。

しかし利益の源が変化することは多くの業種で起こっている。大量仕入で薄利多売のスーパーに比べて、コンビニでは大量には売れず、品目で工夫することになる。そこでは売れる品目を捉える仕組みをもち、多くの品目をタイミングよく配送する仕組みなどが利益の源になる。つまりボリュームが少なくなるほど、サービス部分で稼ぐビジネスモデルにしなければならない。

このことは印刷にも当てはまるが、コンビニの店舗を経営するのではなく、その本部相当の機能を持たなければならない。コンビニとは顧客の社内印刷室などであり、その運営管理を含めた仕事全体のソリュ-ションの開発と提供をして、お互いの時間的な物理的なムダを排除することで価値を理解してもらう方向になるのだろう。

(テキスト&グラフィックス研究会会報 通巻146号より)

【追補】
新たな分野として伸びるのは、一般企業の社内(オンサイト)でのオンデマンドプリントと、印刷や複写など外部業者によるアウトソーシングの処理であろう。外部業者によるデジタルプリント業務は(コピーは別にして)、従来の印刷方式が使われる「ハイボリューム」と、「ショートラン」と、「バリアブル」に分かれる。前述の小ロット化してサービス部分を増やさねばならないところと比べて、ハイボリューム印刷の世界は、需要がそれほど伸びない中で、さらなる設備の集中化による効率化が起こるという、厳しい生き残り競争になると考えられている。
この分野の動向については、第27回JAGATトピック技術セミナーを、ご参照ください。

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2000/11/27 00:00:00


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