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基調講演 : IT21で前進するフィリピンの印刷


第5回マニラFAGAT
情報交流会講演レポート

December 8, 2000

Mrs.Eleanor L.De Gracia/President, Philippine Printing Techncical Foundation
Presented on September 15-17,2000

●フィリピンの印刷概要

印刷・製版会社は約5000社. その内の70%がマニラで営業. それ以外の印刷会社も都市部に集中している. 規模は150万ドル(1.6億円)以上を売り上げている会社は全体の3%, また200人以上の従業員を持つ会社は, 同じく3%程度. それ以外の会社は中小企業で従業員は30人未満といった状況である.
42のパルプ・製紙工場があるが, 再生紙であるため品質はよくない. 上質紙は輸入に頼っているため, カラー印刷はコスト高である. インキは海外メーカーと提携しているので輸入品と遜色ない. 生産高14,000トンの内, 50%が包装用, 40%が新聞・出版, その他が10%.

●フィリピンの弱み・強味

弱みは, 一般の印刷会社では新しい印刷機は高価で手が出ないため, 10年から20年あるいは30年以上の古い印刷機が多く, 技術が停滞し, 品質が向上しない. 余裕のある包装印刷分野の企業が一般商業印刷へ進出し中小印刷業を圧迫している. もう一の問題は, 教育訓練体制である. 訓練センターもあるが, 主として講義中心の理論教育である.
一方強味は, 電子印刷,オンデマンド印刷, クイックプリンタなどの小部数に対する需要が伸びている. 1-500部の小部数印刷は商店街, 学校, オフィスなどの近くで単体あるいはコンピュータと連動して利用されている. ローエンドのシステムが安いので人気があるが,広告制作にはハイエンドのデジタルシステムが導入されている.

●フィリピンの競争力

デジタルプリプレスが次第に普及していること, 若い経営者で想像力が豊かでリスクを恐れない人が多く, 新たな付加価値と競争力をつけていくであろう. また, フィリピンでは,デジタルアーティストが豊富で国際的にも活躍している. このような若い才能のある人は常に感性を磨き, インターネットで最新の技術・情報を集めている. フィリピンでの競争力をまとめると,

1. ITの訓練を受けた人が多い
2. 英語に堪能な人が多い
3. IT産業自体が伸びている
4. 政府がIT政策に力を入れている

IT21政策について
IT21とは21世紀に向けたフィリピンにおける情報技術計画の略省である. このための具体的なタイムスケジュール として, 21世紀初頭までにフィリピンの企業, 政府機関, 学校,家庭においてITにおけるアクセスを整備するのが第一段階. 2005年までにさらにITを普及させ日常化させる. 21世紀の最初の10年でアジア-太平洋地域のITナレッジセンターになりたいと考えている. そのためわが国の情報技術委員会(NITC)や国連工業開発機構(UNIDO)などの援助を受けている. 大統領も332条という政令・条例を施行してインターネットとの接続を推進するよう各関係省庁に通達を出している.

●IT21の政策として具体的な活動

アジアでのナレッジの中心地になりたいと考えている. このような目標を持っているのには具体的背景がある. 1995年にIT企業トップ350社で890億ペソ(約2225億円)であったのに対して(94年から33%のアップ), 96年にはIT企業のトップ200社で1350億ペソ(約3375億円)を記録している.海外からも投資が盛んで, Intel, Seagate, 富士通が生産設備に3-6億ドルを投資している.NEC,Cypressなども同様である.
テレコミュニケーション産業のディレギュレイション(規制緩和)が進んでいる. 今年末でトータルで1300億ペソもの伸びが予想されている. ネットワーク/オンライン関係の企業は他に比べ実に103%もの成長をしている(94-95年). フィリピンのインターネットソリューションプロバイダーの数も95年の15社から96年には88社と4倍に増えている. 97年末には160社を超えるに至った. インターネット人口も97年の8万5000人から今年の末には10万人を超えることが予想される. 企業内プリプレスセンターもインターネットと接続されPDFを利用したネットビジネスに参加している. グラフィックの高品質データはオフラインでの持ち運びが多い.

E-コマースについても法律が定められた. これはマレーシア, シンガポール, 韓国に次いでアジアでは4番目である. これからは電子情報をネットワークで遣り取りする時代である. 印刷もBtoBまたはE-コマースをベースにした印刷取引が期待される分野である. そのための大容量のファイルサーバ,高速ネット回線の整備が急がれる. WWWを通して掲示板による情報交換ではなく, デザイン, 資材調達あるいは技能, グラフィックのアウトソーシングをするといったネットワークシステムが伸びるであろう. わが国だけでなく周辺諸国とともにこれらを通して生産性を上げて行くことが期待されている.

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2000/12/08 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会