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デジタルがメディアの世界を覆す

社会の木鐸、といえばマスメディアを指したように、新聞・雑誌・ラジオ・TVというメディアは社会的な発言力と地位をもって20世紀に君臨していたともいえる。これらのメディアはそれぞれが独特の情報システムを編み出していて、そのノウハウ故に、また社会的な影響力故に、ビジネスとしても大きく成長した。しかしDTPが写植製版の専用機を駆逐したように、あらゆるメディアはデジタル情報を扱うものとなって、技術の平準化が起こりつつある。

とりわけ今企業内のIT化を駆動しているネットワーク技術が次に街に飛び出すブロードバンドの時代になると、従来のメディアの境界はさらに弱まると予想される。それとともに、メディアの役割や性質も変わり、従来の特権的なものから、より日常のコミュニケーションの道具に近いものになるだろう。

マスメディアは残るにしても、特に放送のような従来は政府の庇護と監視の下にあった寡占的なメディアは、裾野の広がった印刷媒体のようなカオスなメディアになるだろう。それにあわせてさまざまなビジネスと連携したミニメディアが多く登場するとか、企業のマーケティングとコミュニティ形成が一体になるなど、今までのメディアの世界とは異なる様相を呈するとも考えられる。

PAGE2001コンファレンス「メディア」トラックは,「動き出したeBook」「第5のメディア:Web」「デジタルアーカイブ」の3つのセッションにより、メディアのデジタル化のインパクトを考える。

動き出したeBook

2月8日のA1セッションでは、日本でも動きを見せ始めたeBookのゆくえや、海外と日本の動き,実際にeBookに取り組んでいる実例,メーカーの動きなどをお話しいただき,将来のeBookを考える場を持つ。

モデレータのイースト(株) 下川和男氏が,最近の電子書籍の動向について紹介する。特に,米国でのマイクロソフトReaderとアドビReaderのホットな話題や,ジェムスター(RCA)社とフランクリン社の読書端末について解説する。また,三省堂.NET,文字鏡WEBなど日本の動きについても解説し,「本当に紙はなくなるのか」について,一緒に考える。

(株)イーブックイニシアティブジャパンの鈴木雄介氏は,「成功するeBookビジネス」と題して,話をする。日本の出版市場には外国に見られない多くの特長をもっている。新刊の発行部数が全出版物の40%を占めること,美術書や絵本,料理の本や写真集などきわめて美しい画像を主体にした出版物が数多く出されていること,こうした出版文化の特性を生かせるイーブックとは何か。また,日本語の美しい文字組み版をどのように生かしていったらいいのか。電子書籍コンソーシアムの実証実験で得た成果を生かしつつ,新たな作品を生み出す土壌を作っていきたいと語る。

新潮社が電子出版を手がけていく上で,いったい何をその考え方の基本としてきたのか。それを,CD-ROM版『新潮文庫の100冊』,出版8社共同の電子書籍販売サイト「電子文庫パブリ」の事例を通して,(株)新潮社の村瀬拓男氏が話す。読者,著作者,出版社の関係の中で,どのようにバランスをとるのかが,電子出版,eBookの将来を考えていく上で重要なことだと考えているが,具体的な事例で,それがどのように実現されていったのかがメインテーマとなる。

アドビ システムズは,電子出版で先駆的は役割を果たしてきた Glassbook社を昨年買収した。自社製品PDF Merchant・Web Buyの利点を旧Glassbook社の製品に注入し,アドビの電子出版ソリューションとして,「Adobe Content Server」・「Adobe Acrobat eBook Reader」をリリースする。日本では2001年春リリース予定だが,海外での事例紹介も合せて,アドビシステムズ(株)の石原信義氏が,Page2001でいち早く紹介する。

出版社,オンライン書店,印刷会社など,電子出版を既に始めている,また,これから始めようとしている方々にぜひ聞いていただきたい。

第5のメディア:WEB

2月8日のA2セッションでは、ウェブを活用したマーケティング戦略の専門家が集い、iモードをはじめこれからのインターネットがマーケティングにどのように変えるのかを、さまざまな立場から議論する。

モデレータのイプシ・マーケティング研究所 代表取締役社長 野原佐和子氏は,「ネットビジネスの最新動向と顧客中心ECマーケティング」をテーマにプレゼン予定で、インターネットビジネスの最新動向を簡単に紹介し、この後に続くスピーカーの三者がそれぞれどのような位置付けでビジネスを実践しているかを相対化するとともに、インターネットをマーケティングに活用する際に最も重要な観点「顧客中心ECマーケティング」を紹介する。

(株)ベストリザーブ 社長 小野田純氏は,「インターネット宿泊予約サービスの開花」をテーマに、ホテル予約サイトというネット上だけに特化したビジネスを展開している立場から、インターネットの特性をどのように捉えてビジネス展開、マーケティング戦略を展開しているか、また、iモードの活用についてどう考えているのかをお話しいただく。

(株)インプレス 事業開発室 室長 田村明史氏には,紙媒体とネット上で情報提供サービスを展開している立場から、紙媒体とインターネットの特性をどのように捉えているか、また、iモードの活用や広帯域時代を捉えて音声や動画の活用をどう考えているかについて,お話しいただく。

(株)良品計画 代表取締役社長 兼 ムジ・ネット(株) 代表取締役社長 松井忠三氏は,「muji netの設立と挑戦」をテーマにご講演予定。リアルビジネスである無印良品との連携を目指したマーケティングサイトとして、ムジ・ネットを展開している立場から、商品開発やユーザーニーズ把握など、マーケティングにインターネットをどのように利用しているか、今後どう活用していこうと考えているかについてお話しいただく。

その後、ディスカッションのきっかけとして、以下についてコメントしていただく予定である。
◆インターネットの活用のポイントは何だと考えているか?
◆今後、インターネットをどのように活用していきたいと考えているか?
(広帯域化、ユーザー拡大、携帯電話・ゲーム・テレビなど利用シーンの多様化等を踏まえて)
などをテーマに熱いディスカッションが繰り広げられる予定!!

デジタルアーカイブ

2月8日A3セッションは、文化遺産,社会的資料をデジタル化する動きがあり,商用化への道も開かれつつある。実際にデジタルアーカイブに取り組んでいる実例を紹介し,デジタルアーカイブの社会的な役割を考える。

アーカイブは伝統的には文書館を意味する言葉であった。しかし,文字・画像・映像・音楽などの情報がデジタル化されて蓄積・伝送されるようになるとともに,アーカイブはデジタル・データの保管所といった意味合いを帯びるようになった。そしてデジタルアーカイブは,電子図書館・電子美術館・電子博物館などを総称する言葉として使われている。デジタルアーカイブという新しい文化装置が社会に果たすべき役割を考えるために,モデレータの国際日本文化研究センター合庭惇氏が,米国におけるe-book の最新動向を取り上げ,電子出版と電子図書館との関係を検討する。

凸版印刷と印刷博物館ではデジタルアーカイブ構築の一環として,イタリアのヴァチカン教皇庁図書館所蔵のグーテンベルク聖書のデジタル化を行い,昨年10月に開館した印刷博物館で公開している。このデジタル化の目的は,門外不出の文化遺産をオリジナルに迫る高解像度で一般に公開することにあるが,手法として二つの道を選んだ。一つは,電子書見台というマルチメディア閲覧装置で来館者に番組を提供すること。もう一つは,超高解像度のディスプレイを利用して,高精細度の画像を表現することであった。デジタルアーカイブ実現のための一つの方向として,凸版印刷(株)の加茂竜一氏が,グーテンベルク聖書のデジタル化における技術的問題などを紹介し,さらには美術作品,文化遺産などのデジタル化についても触れる。

京都市は,日本の有形無形の歴史・文化・伝統資産をデジタル技術で蓄積し,様々な分野で活用しようという「デジタルアーカイブ構想」を,1997年に全国に先駆けて策定し,京都デジタルアーカイブ推進機構を中心に各種のプロジェクトを推進してきた。世界文化遺産に登録されている二条城の障壁画アーカイブもその一つで,国宝二の丸御殿の障壁画(重要文化財指定)をデジタル収録し,保存するとともに,データを各種商業利用に供し,データの使用許諾料収入を二条城の保全に充てるというシステムを構築した。 こうしたデジタルアーカイブの実績をもとに,昨年秋,京都駅前に「京都デジタルアーカイブ研究センター」が誕生した。このセンターの目指すものは何か,また,3月に発表が予定されている「京都IT戦略」(仮称)のねらいは何か。ITは日本文化の遺伝子を後世に伝え得るのかについて京都デジタルアーカイブ研究センターの清水宏一氏が語る。

PAGE2001特別連載もご覧下さい。

2001/01/12 00:00:00


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