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ドッグイヤーのIT時代で挫折しないためには

印刷業界においてDrupa95以降の技術の目玉であったCTPも、すでに日本の多くの印刷会社で主力設備として稼動しており、CTPは刷版の決定的な流れとなった。ここ数年間のCTP化は何度か足踏みしながらも、導入会社においてCTP化の効果がすぐにでていることの反響から、次第に導入の広がりをもたらしたと思える。そんなことをいえば先行するアメリカでの導入例から、CTPが見当精度や再現性などの品質向上と、生産性向上があることは判っていたはずだが、それだけでは日本で普及する理由にならなかったことを考えてみたい。

CTPに関していえば、日本の印刷会社は3つのパターンに分かれるだろう。最も多いのは、まだ安心して投資とか取組みができない会社であり、今成功事例の多くの場合は近年ベンダーのお膳立てに従ってやったら思ったよりもスムースにできたところであろう。さらに数は少なくなるが、自分でCTP化に信念を持って突き進んで効果を出した会社がある。結果的にはベンダーの導入プログラムに従おうと、自分で考えて導入しようと、印刷ビジネスとしては差はないであろう。しかしCTP化を成功させた経験がその後にどのように役立つかという点では違いが出てくるかもしれない。これはCTPに限らず、DTP化でもネットワーク・サーバの利用でも同じである。

つまり印刷物制作の道具が写植製版の専用機からDTPのようなオープンシステムになることで、ユーザ側の力量の差がどういうところで表れるかが明らかになりつつある。以前アメリカでユーザ訪問をした時に、オープンシステムになってよかったこととして、システムの改善が「my own agenda」でできることだ、という話を聞いた。設備を安いDTPに置き換えていくのではなく、自社の使命を果たすための長期・中期の計画をもっていて、それを確実に進めるためにオープンシステムが都合よいのだという。

確かに自社の目標を持つことはよいことで、例え途中で個々の試みに挫折や失敗があっても、それらから学んで賢くなることはできるが、目標がはっきりしないで失敗したことから何かを学ぶのは難しい。それはさておき、目標があったとしても、未知のやり方に挑戦する場合、何を裏づけに突き進む自信を持てるのかという問題がある。それには日常の努力の一つ一つが、論理的にはこうなるはずだという仮説とその検証という形で積み重ねられていく中で、未知のものに挑戦する力となると考えられる。

その意味で、我々が今日技術と呼ぶべきものは、過去の勘と経験の技術ではなく、エンジニアリングあるいはサイエンスになっているものでなければならないし、それでなければ組織的な強みとはならない。まだないものへの挑戦が組織ぐるみでできるところが、ITで可能性を拓こうとしている顧客の信頼できるパートナーになれるのだろう。ITを視野に入れた中長期計画と論理的な思考が揃っていることは、ISOに代表される品質保証や企業の社会性などどともに、これからの印刷会社の「格」を表すものとなろう。

PAGE2001では、基調講演でグラフィクアーツ企業の中長期計画のためのテーマを提供するとともに、今から論理的な思考で取り組むべき細目を各セッションのテーマにした。制作された結果の出口がCTPや電子メディアなどデジタルになるとともに、作業の入り口から途中の工程はすべてデジタルデータの扱いになるので、データ管理というトラックを設けた。また、過去はどうしても工芸的な面に支配されがちだった製版分野は、もっとサイエンスやコンテンツに視野を広げる姿勢でカラーのトラックとした。従来ワークフローと呼んでいた作業の流れは、「FAのためのデータ管理」やJDFに象徴される「工程間のデータフロー」というアプローチにした。そして営業・工務の問題は、eビジネス・ECという文脈で捉えなおしている。

このように視点を変えているのは、エンジニアリング・サイエンスという捉え方にしないと、次々に登場する新たなITからみの課題がクリアできないであろうからである。冒頭のCTPを論理的に考えて自力で成功させた会社は、成功させる方法論を社内で培うから、他の課題もクリアするのは早いであろう。つまり今暫らくはドッグイヤーと呼ばれるIT時代が続く中で挫折しないためには、他人依存で社内の改革をするのではなく、自社の中心となる仕事に関する技術については自立して、自分の計画を推進できるようにならなければならない。

PAGE2001基調講演のミルス・デイビスは、PAGE98の時には、eビジネスのイメージを話しただけであったのが、もうすでにその部分部分は今日出現するようになった。これは各社それぞれ近年の変化を振りかえってもいえることだろう。さていよいよこれまでバラバラに行ってきたITの課題を総合化する計画を持つべき時期である。その意味からもPAGE2001の基調講演に期待していただきたい。

PAGE2001コンファレンス

PAGE2001特別連載もご覧下さい。

2001/01/18 00:00:00


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