VSM-Japan 久米正次(1997)
なぜなら、われわれは、CTPよりも、もっと重要な「このデジタル化社会にどう生き残るべきか?」という課題に立ち向かっているのである。従って、これから逃げ出すことはできない。また、手をこまねいて傍観者的対度をとることも許されない。こうした消極的な「逃げの」姿勢では、21世紀を生き延びることは不可能である。顧客側のデジタル化へのマインドを積極的に利用して印刷コストを下げることが必須である。
この企業診断の結果、CTPは時期尚早で、DTPをもう少し推進しようとか、大型のフィルムセッターで 、デジタル技術をもう少し習得すべきだという結論が導かれるかもしれない。 いずれにしても、各社各様の選択肢があってしかるべきである。CTPはデジタル化の最終段階として選択されるべきなので、何がなんでもCTPとは申し上げかねる。
CTPの導入はその会社の仕事を過激なまでに変革する。それは会社の組織変更、顧客との関係の調整、人員整理まで伴う場合がある。つまり、CTPの導入は自社の体質変換を促すが、同時に、痛みを伴う場合が往々にしてある。 CTPは技術革新というよりは、各企業の意識革命によって普及する。
印刷業にとっては印刷物を低コスト、短納期で供給するということは絶対な命題である。CTPは、その命題遂行のために、自社の矛盾を徹底的に解明し、否応なしに、問題の整理と見直しを迫ってくる。さもないと、CTPの存在意義は消滅する。CTPは恐ろしいほどに変革を促すシステムなのである。だから、事業が切羽つまった段階にこないとCTPの導入が出来ないということも一面の事実である。
この一連の企業診断の結果、自社事業、業務内容、顧客からの品質要求といったことを再確認ができることになる。顧客と自社の仕事量が対応して伸びていれば、顧客は自社に対して一応の評価をしてると見てよい。さらに、品質、価格、納期という三大要素のどれに顧客が魅力を感じて、発注しているかが理解できる。
これがとりもなおさず自社の経営基盤なのである。この認識により自社の強みを生かした正しい経営戦力が編み出せることになる。そして、それを具現化する設備計画も立案可能になる。客観的に裏づけのない要求を振りかざして、いたずらに高性能の設備を導入することは、それだけ高い投資になり、自社に合わない設備を使うことになる。そうなっては顧客を失望させるだけである。
CTPの導入により、自社も顧客も、より満足が得られると確信したときに、CTPシステムを導入すべきである。
2001/01/22 00:00:00