第5回アジア印刷技術情報フォーラム
情報交流会/2000年/マニラ
韓国レポート(要約)
インターネット、携帯電話の発展が産業に大きな影響を与えている。韓国のインターネット人口は2000年末で2000万人と予測されている。
● インターネットの現状と未来
インターネット人口は、ここ2-3年で大きく伸びている。世界のインターネット人口は98年MCI調べによると1億3000万人で2000年には2億人になると予測されている。IDCの報告では97年末で1億5000万人で2000年には10億人に達する言われている。The Industry Standard Corporationの計算では98年に1億4000万、99年に1億9600万、2000年には5億2000万人と予測している。99年11月時点で4億9000万人で世界の人口の7.9%に相当するといわれている。先進国15か国でインターネット人口の82%を占めているといわれている。
Boston Consulting Group(BCG)によるとアジアのユーザーは現在の5倍になるといわれている。それは2005年までに中国人ユーザーが3億7000万人になるためだ。1999年のアジアインターネット人口は6600人といわれている。最も多いのが日本の2000万人、次ぎが中国、オーストラリア、韓国、台湾となっている。BCGの調べでは2005年までに中国人ユーザーが日本人ユーザーを追い越すであろうといわれている。次ぎがインド、韓国、台湾。アジアの85%のインターネットユーザーは5カ国で占められているだろうといわれている。1990年代の中ごろにインターネットによるビジネスが今後利益を生むビジネスであることが確認され、いろいろな機関が研究調査を進めるようになった。
● E-コマース
Electronic Commerceは1989年アメリカのLawrence Livermore National Laboratoryという調査機関ではじめて使われた。はじめは軍事目的で、後に民間で使われる言葉となった。初めはEDI(電子データ交換)かVAN(付加価値ネットワーク)として企業間(Business to Business)、企業と政府間(Government to Business)として使われ、のちに商業化につながった。1989年EUの調査機関でスイス・ジュネーブにある欧州核研究センター(CERN)で、原子力に関する大量の論文掲載とその引用文献をリンクするハイパーテキストの実験え行なった。これがいわゆるWorld Wide Web (WWW)である。この内容が1991年に報告され、93年にMosaicが一般に紹介された。こういった経過が現在のE-コマースに貢献している。
●印刷産業のトレンド
インターネットの印刷産業への影響を考えてみる。アジアでの印刷とインターネットの関係の報告はほとんどない。Raine Consulting Inc.が印刷産業の転換と題した報告がある。
インターネットを活用した新しいビジネススタイルでなければならないと多くの企業が考えるようになった。印刷産業におけるBtoBには2つあり、1つは印刷業界内のいろいろな遣り取りと外部の顧客との間の取引である。前者はコスト削減、後者は売上増加につながる。韓国政府の調べでは、韓国の印刷市場は97年で1万6816社、7万5000人の従業員で、USドルで20億9000万ドルの規模である。
アメリカの印刷市場は売上では伸びているが、利益率では3.0-3.5%ダウンしており、印刷産業の構造的転換が必要だとRaine Consulting Inc.は指摘している。
PIA(Printing Industries of America)はアメリカの印刷産業の利益率低下の主な理由トして次ぎの2つを挙げている。
John Parsonsの書物によると Does E Commerce Mean E Profits? というのがある。 (シーボルトレポート e-commerce in Printing: Update on the News and the Workflow Issues;Vol29,No.10 on April 3,2000 )売り手と買い手の立場をまとめたのが以下の図である。この図のようにE-コマースでは売り手と買い手では利益に関する考えがかなり異なることが解る。印刷産業は買い手のサポートもしなければならない。
●アメリカのE-コマース印刷産業
インターネットの先進国アメリカではE-コマースによる印刷会社がすでに存在する。「Invasion of Dot-Com」という本がある。また「E-Commerce Hits the Graphic Arts」というシーボルトレポートが出版されている(1999年Nov.9.Vol29,No.5)。
●BtoB印刷産業の特徴
インターネットのバックエンドにはインターネットのインフラが確立しているがそのためのいろいろな必要な条件として、
●アジアのBtoB E-コマースの印刷市場
BtoB E-コマースが確実に伸びるためには前述した&qout;e-hubs(電子ハブ)&qout;つまり仲介業者の存在が不可欠で、この&qout;e-hubs &qout;はインフラへの深い理解と印刷業界の個別のニーズを把握した仲介業者でなければならない。
Forrester Researchの調べでは、フロントエンドの直接投資として150万ドルが必要であるという。このソリューションシステムを維持するだけで70万ドルもの投資が必要となる。BtoB E-コマース市場を印刷業界で展開するのはバカげている。
韓国においては機械の遣り取りをオンラインで行っている企業がある。印刷業界でも早く対応が必要である。いろいろなプロセスを標準化して、プロセスをオンライン化して、一括処理できるようにする。
このようにマーケットの基盤が整備されると他のアジアの国にも普及することができる。韓国の印刷業界も国際的な立場を強化でき、輸出を伸ばすことができる。
一方でBtoBの印刷E-コマースを考えるとマーケット全体の統合・連帯が必要となる。環境の変化が激しいだけに1国だけでなく数カ国が連帯して対応する必要がある。現在の状況は個々の企業ごとの努力で行っているが、この個々の企業を統合してアジア全体の企業で利用できるような構築が必要がある。
● まとめ
印刷業界の中には、オンライン化する必要はない、従来技術でいいという意見もある。しかしこれからの生き残りを考えると大きな変革が必要である。というのは大手企業がオンライン化する方向で動いているからである。それから高い確率で印刷のインハウス化が進行している。これは既存の印刷会社には大きな打撃となる。したがって各印刷会社は強いサービス体制を確立しなければならない。そのためにアウトソーシングが必要である。
Boston Consulting Groupが99年に調べた 紙媒体と電子媒体〜不確実性の中から付加価値を生むためのレポート によるとインターネットの普及によって紙の情報がどのように変るかをしらべたものである。紙の消費で増えているのはオフィス向けの用途だけである。雑誌・出版物用途は現在は大きいが2003年にかけて減少し、オフィス用途が増えている。2003年までに520万トンの紙が電子媒体に置き換わると予測されている。アメリカの企業はアメリカ国内の市場が大きいため国内に専念してもやっていけるが、アジア諸国は市場規模が小さいため、連帯あるいは統合が必要である。アジアとしての制約条件をを打破するには、「地域」としてあるいはアジア全体を市場として育てて行くことが大切である。
2001/01/19 00:00:00