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カラーマネジメントシステム(CTP News)

VSM-Japan 久米正次(1997)

品質保証と校正
1 印刷における品質保証
2 キレのよい印刷

3 カラーマネージメント

CTPを含めたデジタルシステムでは経済的な効率を追及するのが第一主題なので、そちらに目がゆきがちになる。しかし、印刷品質の向上と維持ということもデジタル化の重要なテーマである。デジタルシステムでは出力機毎に発色を均質化する技術、つまり色の信頼性の維持にウエイトを置いていて、いたずらに線数を増やすというような品質の向上は目指していない。昨今のカラーマネージメントではカラープロファイルに議論が傾きがちであるが、印刷条件、環境、用紙、インキといった複雑な条件下での地道な色管理、例えば濃度とグレーバランスといった管理項目が要求されていることには変わりない。

カラーマネージメントは自社の標準カラー(プロファイル)を設定することから始まる。スキャナー、モニター、校正出力機、印刷機、デジタルプレス、プリンタ、あるいは平台校正機と多彩な出力機を扱っている印刷現場では標準色で全てを管理することが基本である。これらのデバイスの中から安定していて、管理しやすい、再現性の高い機種によるカラー出力をカラー標準に指定する。

印刷物を標準カラーに設定することが自然と思えるが、実際には印刷機の条件設定は複雑で面倒で、標準プロファイルには適していないと考えられている。 それで、自社のカラー標準をDDCP出力に設定している企業も多い。そのカラープロファイルに合わせて印刷機を設定している。また、その標準カラーに合わせ込んだインキを発注、使用している会社もあるくらいである。 カラーモニターは比較的経時変化が大きいので敬遠されている。 インキジェットを標準としている企業も多い。この場合、インキ、用紙の管理は兎当然として、ノズルアライメントの管理にまでも気を配らなければならない。

この標準カラーカラーマネージメントの色のずれを各出力機、モニター毎に測定する。この色のズレをカラープロファイルと呼ぶ。顧客毎にカラープロファイルを設定するのも重要な仕事である。

4 デジタルカラ−校正システム

CTP時代にはデジタル校正がふさわしいのだが、これがまた評判悪い。 あんなものではお客さんのOKがとれない。やはり平台校正が一番と思っている。 カラーマネージメントを地道に実行すれば、もっと迅速に処理でき、原価低減に威力を発揮すると思うのだが、そういうところは稀である。デジタルカラー校正システムを持て余しているのは日本だけではない。欧米諸国でも、デジタル校正システムを使いこなすには三回のセールスが必要といわれている。

ベンダーから印刷会社等のユーザーへの売り込みである。しかし、購入したユーザーは、まず、これを自社内の専門家、特に印刷作業者に売り込まなければならない。「こんなもんでどうやって印刷と合わせ込むのか?」という疑問と闘わわねばならない。最後は当然顧客への説得である。 確かにこれでは大変で、顧客が安心する平台校正で逃げたくなるのも理解できる。

色校正については従来からのデジタルカラー校正で進むしかないであろう。これらのデジタル校正出力から印刷物の品質を推定、保証することが求められている。 DDCPは網点出力のデジタル色校正システムとして最高峰に位置しているが、印刷と比較すると満足できないし、高価格で、処理速度が遅いので、複数枚の校正が要求されるとどうしようもないというユーザーが多い。CTPを導入したならば、CTPによる本機校正も現実的な選択ともいえる。

現在の動向としては、デジタルカラー校正と本刷りとのカラーマネージメントを確立する方向に動いている。たとえば刷版上にカラーパッチを出力し、印刷時に、濃度計で発色をチェックする。これにより印刷機と印刷条件とを管理する。 さらに、このデータとデジタル校正システムから得られる同様なデータと対比させて、トータルシステムとしてのカラー管理を指向している。もちろんワークステーションとモニターの色補正と管理は正確に実行しておかねばならない。こうしたトータルなカラー管理体制により、デジタルシステムでの一発色合わせを実現しようというのが、デジタル時代のカラーマネージメントであり、カラー校正システムである。

2001/02/24 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会