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パフォーマンスアップのための5つの要素

PAGE2001基調講演より(3)

ITとかeBusinessという要素をグラフィックアーツの仕事に付加しなければならないことで、印刷の業態が全く変るとか、従来の印刷物作りの能力がどうでもいいものになるわけではない。やはり紙への印刷という仕事の占める割合は、10年先を考えても主力であろう。その意味でコアビジネスの能力は引き続き向上させていかなければならない。ただ「営業」の形態は全くといっていいほど変るであろう。これも「営業マン不要」という意味ではなく、仕事の中身が連絡係りではなく、マーケティングやプランニングが優先になる。

つまりinterpriseの時代というのは、従来のコアビジネスの管理がIT化されて、仕事のプロセスが組み替えられて効率が上がるとか、作業重複の減少、販売機会損失の減少、仕事の派生的展開の容易さ、などで稼げるようになることが目標になる。このような事は、個々の局面を見ると以前から行っていたことで、だれでも努力した経験のはあるであろう。そういう意味では特別なことではないが、これを個別に管理するとか、システムのカスタマイズをするのではなく、データの流れはインターネットやXMLを使うことがどの業界でも起るように、シームレスなITのやり方で実現して、顧客もサプライやも巻き込んだものへと進化させる必要がある。

Mills Davis は、interpriseを成り立たせる要素を、印刷会社を超える組織 printing interprise」にあるように機能的に、コンピュータと通信インフラ、管理システム、コンテント/メディアのプロセス、B2Bプロセス、知識共有、の5つにわけたが、これらは重なり合っている。最後の知識共有はB2Bの成立の上にできるものであり、B2Bはネット上の制作の協同の上に、制作の協同は管理システムが貫かれていて実現でき、全てはコンピュータと通信インフラの上に成り立っている。インフラの部分にはソフトウェア的なものも含まれる。ここは今後ますます標準化するであろうという。

知識共有(ナレッジシェア)とは日本的に言えば、情報共有と考えてもよい。広告を例にとると、広告主から代理店、クリエイタ、制作・出版・印刷など、これに関連した仕事をするところが、どこにどのように出るものか、データ形式や印刷の仕様、媒体の性質や発行数、お金の流れ、商習慣、広告の目的達成度がどう測定されるのか、また以上の説明ガイドについても、共通の理解が必要である。これはB2Bシステムができてどこからでもデータベースを参照出来るようになればよい。

B2Bプロセスは、見積もりから発注、納品、支払いなどの一連のトランザクションで、ナレッジによってビジネスのサイクルがうまく廻るようにする。ただし管理部門など付加価値が生じないところもある。それはなるべく縮小し、マニュアル操作を止めて自動化したい。

コンテント/メディア プロセスは、情報を1個所に集約することで効率をよくできる。DAMのように直接ストレージするものだけではなく、プラン→オリジナル制作→マスター化→…というように異なるところを通って加工されるが、リポジトリが一元化しておればよい。印刷とWEBの両方の制作など複数メディアをまたぐ制作が増え、コンテンツ管理まで行う印刷会社が増えているという。
一つのプロセスで何度も価値を生むようにする。クーポン券にバーコードを使って、印刷物/メディアの効果測定をするという新たな仕事もある。

管理システムは、印刷会社にとって非常に重要なものになりつつある。印刷会社は印刷物発注者と資材提供者の間に位置し、発注者に対してはサポート業務を含むCRMや、プロジェクト管理、DAMが管理対象で、資材提供者に対してはSCM、現場に対しては最適化や改善を図る工程管理がある。interpriseはエンタープライズ同士をinterするという意味は、個々の企業の内側で管理システムが機能している上で、さらに企業間にまたがった上位の管理をすることを指している。

コンピュータと通信インフラは、顧客の一般企業よりも印刷会社にとっては重要なのだという認識が必要である。通信サービスのプロバイダと近い関係をもって、VPNの制御をする。Mills Davisは顧客のファイアーウォールのすぐ近くにいろと表現した。

これらにのっとって、次は組織化の問題がある。しかし組織のパターンはいろいろありえる。シームレスなinterpriseを指向しても現実には標準化されていないおらず、ローカルに問題解決せざるを得ないところもあり、今後全体との整合性を考えて調整し続けなければならない。あらゆる意味で、今は最初からホームランを狙うのではなく、まず塁に出ること、そして塁を進めていくことが重要であるとMills Davisはいった。

PAGE2001報告記事

2001/02/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会