2000年12月のJAGATのトピック技術セミナーにおいて、室蘭工大の三品先生がAMPACを熱っぽく語っておられた反面、その後のベンダーの方々とのディスカッションでは、三品先生のこだわりと、ベンダーの方のスタンスに微妙なずれがあるように感じた。ベンダーの方は実際にAMPAC作業委員会に参画されていて、また印刷関連機器への応用システムを開発する立場の方なので、少し腑に落ちない気持ちがした。
すでにプリプレスだけでなく、印刷もポストプレスもデジタルでワークフローの制御が必要になっている。だからこそ近年JobTicketが盛んに取り上げられ、業界の開発側も含めてもまれてAdobeのPJTFからJDFへの展開となったのであって、JDFが理想的かどうかということを議論していたのではなく、むしろ現状のシステムへの実装という面から検討されてきた結果であるといえる。
三品先生はXMLやJDFによる情報交換に関して、それが印刷の世界に適したものではないようなニュアンスで発言されたが、AMPACが実現しようとするものとXML/JDFはコンフリクトするようには思えない。AMPACの基本は印刷業界のあらゆる業務に関わる人やシステムが、印刷物作成の過程で起きる事象について自由に参照・追加できる辞書作りが本質であろう。つまりAMPACは公開された「コンテンツ」の蓄積やその利用が目的であって、伝送・情報交換・ローカルな実装というものからは独立な概念なのではないか?
三品先生はAMPACの理想も実装も、ともに重要性をもつものとして語られるので、聞いている人はAMPACとJDFの優劣の話であると誤解をするのではないかという点が心配である。冒頭に述べたように、JDFはそれなりに産業分野に足場を置いて出現してきたものであり、情報交換用には実際の運用のモデルとして理解されやすく、XMLベースであるために実装も急速に進められることは火を見るよりも明らかで、JDF優劣論はAMPACにとっては非常に不利なものとなり、フォーマットの利便性だけ比較すれば場合によってはAMPACは致命的なものとなるかもしれない。
上記セミナーとは別にベンダー側の話を聞くと、印刷ワークフローの分野でJDFは最大の標準候補であり、実装のための開発ツール環境が整いつつあり、それに比べるとAMPACの仕様はそのまま実装開発するのは困難という人もいる。印刷業界にとって関心があるのは実装方法や情報交換様式ではなく、印刷物作成プロセスに関する情報を業界を通じて蓄積・再利用すると、どのような効果があるのかということで、きっと技術的な優劣議論に入ってくる人はいないだろう。
コンテンツとフォーマットを切り分けない議論はAMPACの立上げを遅らせるかもしれない。むしろAMPACはコンテンツに焦点を合わせて、業界団体やJAGATが場を提供して、AMPACを使う知恵のアイデアを出し合うことが盛んになれば、非本質的な議論は沈静化するのではないかと思う。
2001/03/06 00:00:00