ICCプロファイル
デバイス依存の色再現特性と,デバイス非依存であるカラースペースPCS(Profile Connection Space)と呼ばれるLabやXYZ色空間とに相互展開する仕組みを提供するのがカラーマネジメントモジュール,各機器の特性を記述したものがデバイスプロファイルである。これらを使うことによってプリンタや印刷機などCMYKカラーで表現できる色空間をLabにマッピングし,それをモニタで用いるRGB色空間に展開させ,結果としてプリンタや印刷機の色再現特性をモニタに再現させたり,最終的に出力させる印刷機の色再現特性を手持ちのプリンタでシミュレートさせることが可能となる。各デバイスの色域を機器に依存しないもので数値比較することにより,工程の早い段階から印刷最終結果を予測することが可能となる。しかしこれは表示されている色がそのまま印刷されるというわけではない。
ICCプロファイルを用いたカラーマネジメントの流れには,次のようなものがある。
1. RGBからCMYKへ
入力側デバイスプロファイル(RGB値→Lab値)は,スキャナなどの入力側のRGBのデータをLabの値に置き換えるために使われることがほどんどである。出力側デバイスプロファイル(Lab値→RGB値)は,入力側のスキャナでいったんLabに換算したものをモニタ上に表示させるための変換テーブルである。出力側デバイスプロファイル(Lab値→CMYK値)は,入力側のもっているLabのデータを出力用のCMYKのデータに変換するプロファイルである。
2. RGBからRGBへ
RGBからCMYKへとの違いは単に出力側のカラースペースがRGBになるのみである。
このように,入力側プロファイルと出力側プロファイルが非常に単純な仕組みで使われている。
入力側プロファイルから出力側プロファイルに向かう過程で,LabやXYZのような一つの共通のカラースペースをもつことによって,同じような形の入出力を行える。このプロファイル同士を合体させる役割をもつデバイスインディペンデントな色空間がPCSと呼ばれるものである。実際の印刷現場からは,スミ版の保存やカラーコレクションなどを含め,どこまでICCプロファイルで可能なのかと聞かれるが,現状のICCプロファイルにはスミ版保持機能がない。
ICCプロファイルの分類
デバイスで分けた場合次のように大別される。
1.RGBプロファイル
これにはモニタやスキャナ,ごく一部のプリンタ,sRGBやAppleRGBなどの閾値定義プロファイル(色空間を定義している)が相当する。
2.CMYKプロファイル
プリンタや印刷出力機に使用される。上述のRGBプロファイルとほぼ同じである。
3.Lab/XYZプロファイル
これを使うデバイスが現実には見つからないため,目的が現時点では不明である。基本的な構造は先のRGBやCMYKのプロファイルと同じである。
4.NamedColorプロファイル
スポットカラーや特色のインキ番号に対するLab値を記述している。これをサポートしているプリンタ,アプリケーションは非常に少ない上,現存するプロファイルを探すのも難しい状態である。
ICCプロファイルの構造・概略
ICCプロファイルは大きく分けると,プロファイルの情報を記述しているヘッダの部分とプロファイルを構成する要素の一覧を記述しているタグテーブル,それぞれの構成要素タグの内容を記述しているタグドエレメントデータの3つの部分から構成される。
ポストスクリプトプリンタの色管理
独自の色変換テーブルをRIP内にもっており,色管理には次の2種類の手法が用意されている。両者とも,トランスファ関数やハーフトーニングは濃度調整には関係しているが,色変換には何ら関係していないといって差し支えないと思う。
1.CIEベースのカラーを使わない方法
この方法ではスミ版保持が可能なため,印刷業界では一般的だと思う。入ってきたデータに対して色変換を行うのが,CMYK各色の濃度を調整するトランスファ関数とハーフトーニングの2つの要素である。非常にシンプルな方法であるが,そのシンプルさゆえにいくつかの問題点をはらんでいる。
2.CIEベースのカラーを使う方法
与えられた色情報をUseCIEColorというCIEベースの色空間(XYZ色空間)にいったん展開して色変換をする方法である。入ってきたCMYKデータをまずColorSpaceTableに通し,再びCIE色空間からCMYKデータへの変換時にColorRenderingDictionaryと呼ばれる色変換テーブルを通す。この後にトランスファ関数やハーフトーニングをかける。上記の方法と比較すると処理が複雑な分だけ速度的には不利である。いったんCIE色空間に変換するため,スミ版保持ができないことが問題として挙げられる。しかし,各社RIPメーカーは独自機能で墨版保持を可能としている。
RGBデータが入力された場合
RGBデータが入力されると,その白色点情報,RGBソースプロファイル,ガンマ特性,RGB色度座標といったものをRGBリソーステーブルに格納する。このRGBリソーステーブルは色空間変換機能をもっており,RGBデータをCIE色空間に変換する。そしてCRDを用いてこのCIE色空間からデバイスCMYKカラーに色変換を行う。この工程はICCプロファイルをベースとした色変換に酷似している。
ColorPolishについて
自分自身でプロファイルビルダーを使ってプロファイルを作ろうとしても,微妙な色ずれを調整する部分であるCLUTまで編集できるツールは存在しなかった。
そこで,編集や解析が可能なプロファイルエディタとしてColorPolishを作り,これまでは手が届かなかったICCプロファイルの内部のすべての要素を確認・改造できるようにした。
最後に
現実問題としてCMYKプリンタと印刷機のインキの色が合わない場合がある。染料系のインキと顔料系のインキとではガモットも発色の度合いも違うためである。一次色が合っており,単に濃度を調整する場合ならトランスファ関数のみの調整でも十分だと思うが,一次色がマッチングしないケースにはプロファイル作成ツールでは対応できない。例えば,Cの値が合わない時,Cのトランスファ関数を調整しても絶対に色は合わない。そのようなカラーコレクションが必要になった時にはCLUTに手を入れることになるだろう。いずれにせよ,CMSの中でICCプロファイルが果たす役割をつかんでいることが大事だと思う。
2001年3月21日T&G研究会拡大ミーティング「ICCプロファイルの徹底解剖」より(文責編集)
(出典:社団法人日本印刷技術協会 機関誌「JAGAT info 2001年6月号」)
2001/06/19 00:00:00