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活字組版のCTS化−印刷100年の変革

活字組版の合理化の一環として自動モノタイプの導入を図ったが、組版工程の一部分、 つまり文選作業のみの合理化で、植字工程の合理化にはいたらなかった。そして組版部門 の高年齢化や生産性の低下と、それに鉛公害などの社会的背景も加わってコンピュータ化 の機運が高まり、電子写真植字方式の研究開発を促進した。

これがCTS(Computer Typesetting System=電算植字システム)である。もう一つのCTS (Cold Type System)は、溶融金属活字を使う「ホットタイプ・システム」に対して、非 金属活字で文字版下を作成する「コールドタイプ・システム」を意味している。

コンピュータ利用の組版システムの研究開発は欧米が先駆者であるが、欧文文字とは異 質の日本語処理ができるCTSは、1960年頃に新聞用に開発されたのが始まりである。写植の世界では、手動写植機の自動化として自動写植機が1960年代に誕生したが、棒組みの範囲であったため自動モノタイプの域を超えてはいなかった

出版物の組版用として1966年頃から凸版印刷、大日本印刷などの大手印刷企業では、完全な組版がコンピュータで可能な組版システムの開発研究に取り組み、1970年頃から導入し稼動に入った。

1969年に誕生したCTSに富士通の「FACOM全自動植字システム」がある。入力、組版編 集処理に汎用コンピュータ(メインフレーム)を使った大規模システムである。単に組版 処理だけではなく、情報処理ができるシステムである(図参照)。


システム構成としては、文字や組版ファンクション入力用の紙テープ鑽孔機(漢字キー ボード)、割付情報入力のデータライタ、KDP(表示用ブラウン管)などの周辺機器と、ホ ストコンピュータに「FACOM230−30」、編集用コンピュータに「FACOM270−30」、出力装置 は第2世代の光学式の「FACOM6531」などで構成されている。

組版処理ソフトウェアは、FCL(Facom Composition Language)と呼ばれるプログラム言語で、高度な組版機能がサポートされている。そのため複雑なコーディング作業が必要になる。組版指定書に基づき、本文や見出しの文字サイズ、書体、字詰め、行間などを記入し、またページアップに必要な割付パラメータをコーディング用紙にコーディングする。

このコーディング作業は、植字工に匹敵する組版知識とFCLの習熟が必要なことから、 コーダーの教育には多くの時間を要した。オペレータはこれらの組版コマンドを入力する が、現在のようなWYSIWYGのモニタ装置がないため出力するまで入力結果を確認できない。 コーディングミスや入力ミスがあると、出力後に割り付け体裁が崩れるなどのトラブル が発生する。したがって初期には、内校正をして初校ゲラを出校していた。

この現象は新組みの段階だけではなく。初校戻りの直し処理、つまり再校出しにも影響 を及ぼした。訂正ファンクションのコーディングミスや入力ミスが、体裁崩れや誤植を招 くことになる。

したがって電算写植の最大の弱点は何かと聞かれれば、「直し処理」であるといえる。こ れらのことがCTS組版に対する出版社の不信を招き、CTS組版の拒否反応を起こした時期 もあった。現代のDTPのWYSIWYG機能がどれほど福音になったか計り知れない。

他連載記事参照

2001/07/14 00:00:00


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