これまでの自動写植機の文字盤機構は、回転ディスク型と回転ドラム型に分類される光 学式のアナログ方式である。いずれも印字速度、書体数、文字サイズ、組版機能などに制 約があり、手動写植機との併用と手作業が避けられない状況であった。
そこで登場したのが第3世代機と呼ばれる電子式自動写植機である。組版のすべてを電 子的に行なうもので、高速出力を可能にしたエレクトロニクス、写真技術、コンピュータ の組み合わせで作り上げたものである。
欧米では、第3世代機の研究開発は1960年代の初めから行なわれ、1966年頃から実用 化されている。第3世代機の共通点は、文字の表示にCRT(Cathode Ray Tube)を使い、 この画面の1ページ分あるいは1行分を、フィルムまたは印画紙に印字する方式である。
文字や図形を、極微小の点(画素)の集合で描いたイメージを高精度CRT上に出力、印字する方式であるが、第3世代機の重要な機構としてキャラクタ・ジェネレータ(文字発生部分)がある。すべてのデータを電子信号化して処理するため、第2世代写植機に比して高速性が得られるのが特徴である。第3世代機は大別すると次のようになる。
(1)アナログ方式
キャラクタ・マトリックス(文字盤)を用いる。光学系の代わりに文字を走査してビデ
オ信号とし、CRT上に表示して感光材に露光する方式。
(2)デジタル方式
デジタルフォントをメモリにもたせ、必要な文字パターンをメモリから呼び出してCRT
上に表示し露光する方式。
などである。欧米で実用化された第3世代機には、Mergenthaler Linotype社(米)の 「Linotron」、RCA社(米)の「VideoComp」、Hell社(西独)の「Digiset」などがある。 また国産機では、1970年に日本電子産業が開発した「JEM-3800」がある。
●日本における第3世代機の実用化
当時の第3世代機は、ほとんど欧文組版専用機であるが、日本でも研究は進められてい た。しかし文字種が多い日本語組版をデジタル方式で行なうには多くの技術的な困難がと もなった。つまり文字品質の問題、文字サイズの拡大・縮小などである。
しかしこれらの困難を克服して、日本語用デジタル方式の第3世代写植機の実用化に成 功した。ハードウェアは外国産の第3世代機を採用したが、日本語用にソフトウェアを開 発し、デジタルフォント(初期はドットフォント)を搭載して実用化した。
日本における第3世代機(デジタル方式)の稼動は1973年以降に始まったといえる。まず新聞社が1973年に新聞編集システムの出力機として採用し、その後1977年頃から大手印刷企業が逐次導入を図ったのが「Digiset」で、これは1972年にドクタールドルフ・ヘル社(西独)により開発されたものである。
その他に日本語用に開発された「VideoComp」がはじめて日本に1971年に輸入され、一 部の出版社に導入され実験的に使われていた(つづく)。
他連載記事参照
2001/08/11 00:00:00