ISO導入3年未満の企業の約半数が不満足、成果見えず
〜ISO9000運用アンケート報告(第6回)〜
今回のテーマは本アンケートの中でも核心的な質問の一つである。ISOを導入してから最低1年以上を経過した企業において、ISOは果たして定着したのだろうか。担当者自身に自己評価をしてもらった。
〜ISOシステムは自社に定着したか?〜
●4割が厳しい評価、導入3年未満の企業では評価が割れている
担当者の目を通して、ISOシステムが印刷・製版・関連会社(自社)に定着したかどうかを自己評価していただいた。答えは意外に厳しい評価で、約4割の担当者が「定着したとは思わない」(39.1%)と回答している。ISOは取得がスタートであって維持・継続の中でメリットが出てくるものであるから、メリットを実感するには時間が必要であることは確かである。「思わない」と回答した企業の割合を取得年月別で見ると、2年未満が48.5%、2年以上3年未満が46.2%とそれぞれ半分近くを占めており、総体的に3年未満の企業において定着評価が割れている。つまり効果が現われる、あるいはメリットを実感するには期間が短すぎるのであろう。ちなみに取得3年以上5年未満では23.1%、5年以上では0%であった。この大きな違いを考えると、2〜4回の定期審査を経て、2年目あるいは3年目に更新をすることから3年目を境に更新組みのマネジメントシステムはより改善され、定着が促進されることをよく現しているのではないだろうか。
●定着していない理由は「教育の不徹底」「温度差」「見えない成果」
「思わない」の理由には大きく3つのパターンがある。まずISOシステム自体が現場に浸透していない、あるいは作業者の理解度が低い、形だけといった不満があり、多くの担当者が教育の不十分さを感じているグループである。このグループの8割弱が取得2年未満の企業であるのも特徴的である。もうひとつは、ISOの対象部門・商品とそれ以外の部門・商品の対象者との意識の違い、温度差の違いを指摘している。対象を広げたいという企業もあるが、2000年版ではこの辺を克服しなければならない。もう一つは、実際のミス・ロスやクレームが思うように減らない、という成果の現われないことへの不満がある。「教育の不徹底」「温度差」「見えない成果」などISOを引っ張る事務局にとっては胸が絞め付けられる言葉であろう。とくに導入年月の浅い企業の焦りが伝わってくるようである。
●評価としては「曖昧から明確へ」の変化
一方、定着評価の理由として多いのが「社員の役割・権限、品質記録の管理、契約内容等がハッキリと確認でき、従来不十分であったものが明確になり適正に管理できるようになった」という声に代表されるように、文書化によりルールが明確になることのメリットが大きく、それがシステム的に動くことで定着と見なしている。この文書化によるルールの明確化の具体的なものとして、「問題に対してトレーサビリティが定着し、追及、是正がスムーズに行なわれるようになった」「事故情報が確実に流れるようになった」などが挙がっている。次いで比較的多かったのが、「不適合品低減に寄与」「クレーム件数が大幅に減少」「ミス発生度の低下」という具体的成果を挙げている。成果が具体的数字として現われなかった企業とは対照的である。成果に対してだけでなく「監査自体の質の向上」あるいは「監査員の資質向上」といったプロセスの評価を挙げている企業もある。「意識の向上」「自覚」「品質の考え方」など社員の精神的な変化も挙がっている。
■ISOシステムは自社に定着したか
|
件
|
%
|
定着したと思う |
37件
|
57.8%
|
定着したと思わない
|
25
|
39.1
|
不明 |
2
|
3.1
|
■取得キャリア別にみた「定着したと思わない」割合
取得してからの年月 |
全体件数
|
定着したと思わない件数
|
%
|
2年未満 |
33件 |
16件 |
48.5% |
2年以上3年未満 |
13件 |
6件 |
46.2 |
3年〜5年未満 |
13件 |
3件 |
23.1 |
5年以上 |
5件 |
0件 |
0 |
・認証更新は、2年(半年1回の定期審査)または3年(1年1回審査)
←戻る/第1回/第2回/
第3回/
第4回/
第5回/
次へ→
2001/10/05 00:00:00