DTPの生い立ちにはいろいろな背景があるが、次のように当初その誕生と発展の役割に 寄与したグループがある。
1.アップルコンピュータ社
1)ハードウェアの開発
・パソコン「Macintosh」の開発
・ レーザープリンタ「LaserWriter」(キヤノンのOEM)
2.アドビシステムズ社
1)ソフトウェアの開発
・ PDL(ページ記述言語)の「PostScript」
・
3.アルダス社(現アドビシステムズ社)
1)ソフトウェアの開発
・ レイアウトソフト「PageMaker」
4.ライノタイプ社(現ハイデルベルグ社)
1)PostScriptフォント(欧文)の開発
・ LaserWriter用およびタイプセッタ用
このうちいずれが欠けてもDTPの誕生と普及は難しかったといえる。今でこそ多様なフォントが市場に氾濫しているが、特にフォントのサポートがなければDTPの実現は考えられなかったといっても過言ではない。
●DTPの意義
DTPは1985年に誕生したことは既に述べたが、1987年頃からのCEPSショウ、COMDEX、
SeyboldカンファレンスなどのイベントにDTPの展示が花盛りになってきた。これらの
イベントはコンピュータ関係のショーであるが、会場に女性が多いのには驚かされた。
今と違って当時の日本では、コンピュータ関係のショウには女性の見学者は少ないの で、海外は何故女性が多いのか判らなかった。しかしその意味はすぐに納得できた。つ まり多くの女性の関心事はDTPの見学である。
彼女らの職業はセクレタリ(秘書)やオフィススタッフである。日本と異なりオフィスワークの主な業務は文書作成のためにタイプライタを打つ仕事、つまりタイピストであるが、優れたセクレタリはディクテーション(口述筆記)でタイプを打っていく。
ところが、そこで起きるのがタイピングミスや追加訂正であるが、タイプライタは修正が容易ではない。したがってタイプミスのないタイピストが一人前とされている。また追加訂正があれば打ち直しである。どこかの国の入力変換ミスで誤字・誤植があっても、恥じ入らないという気質とは大きな相違である。
そしてその修正に毎日彼女たちは苦労しているわけだ。したがってDTPがもつWYSIWYG の文章編集機能は、彼女らにとって魅力的であった。しかも文字と画像が同時処理でき るということが、DTPを急速に普及させた大きな理由でもあろう。
文書作成のためのデスクワーク(人手作業)は、筆記具を持って文字・図形などを書 く、消す、他の文書やイラストを貼り込む、見出しを付けるなどの作業である。これら の作業をコンピュータという道具に対しコマンドを使わずに、アイコンを使って行なえ るようにしたのが「デスクトップ・パブリシング」という一説もある。
その語源はレイアウトソフトの「PageMaker」を開発したAldus Corp.のポール・ブレ ナードといわれている。欧米では長年の間、タイプライタが個人やオフィスで手紙・ 契約書・原稿作成に日常使われている背景があるため、DTPはタイプライタの代わりに、 いやそれ以上のメリットがあるものとして普及したと思われる。(つづく)
■他連載記事参照
2001/10/27 00:00:00