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Mac 0S Xのフォント環境

Mac OS Xでフォント環境はどうなるのか? 2001年10月のT&G研究会ミーティングにおけるアップルコンピュータ OSエンジニアリング 柴谷勝之氏,クリエイティブマーケット 永坂良太氏のお話を要約して報告する。

アップルパブリッシンググリフセット

アップルコンピュータは,2001年9月にリリースしたMac OS Xのバージョン10.1にアップルパブリッシンググリフセット(APGS)を実装したヒラギノフォント6書体を搭載した。このグリフセットはJIS X 0213を基本とし,エンコーディングはUnicode3.2を使っている。
今回搭載されたヒラギノフォントは漢字約1万2500,非漢字約7500,合計約2万字というグリフセットになった。これはバージョン10.0から採用したAdobe-Japan1-4のグリフを引き続きすべて採用したうえでJIS X 0213のグリフを追加し,さらに電算写植で使われてきた文字を調査しセレクトして追加した結果である。アドビともじゅうぶん協議したうえでの搭載であり,将来性についても安心して使えると考えている。
エンコーディングはUnicodeの最新版である3.2を採用した。これはJIS X 0213対応のためだが,Unicode3.2では一部の文字について,2つのUnicodeのコードポイントで1つのJIS X 0213のグリフを表すUnicode合成文字を使っている。たとえばカナの半濁音を表わす「カ゜」などがこれに相当する。結果的に,2万グリフのうちUnicodeで表現できるのは約1万4000グリフとなる。
また,これまでMac OS X内部でUnicodeを扱うのにUTF-16という16ビット表現を使っていたが,今回からサロゲートという仕組みを使うことになった。これはUTF-16の16ビットの規格で定義済みの第0面のハイサロゲートとローサロゲートという2つのコードレンジ(各1024)を利用し,それをかけあわせて1文字を表すしくみである。また,Mac OS 9からのJIS X 0208ベースのエンコーディングであるMacJapaneseも互換性のためサポートされている。

OpenTypeとしての機能

ヒラギノフォントはOpenTypeフォントである。これはTrueTypeフォントとType1フォントをOpenTypeという形式として,同じように扱えるようにしたものであるが,ラインレイアウトの機能やグリフ置き換え機能なども組み入れており,今後のフォントテクノロジーの共通基盤としてヒラギノフォントに採用したものである。
OpenTypeではApple Advanced Technology(AAT)とOpenType featureという2つの機能を利用している。これらによって,上述の「合成文字」が利用できる。また,縦書き,半角,全角,3分,4分の文字幅の変換,丸数字や角数字,あとは角丸の四角,白抜き丸数字,ローマ数字,83JIS,78JISのグリフ,漢字の異体字などを変換テーブルとして持っている。また,たとえば必要なグリフは直接グリフIDを使って利用できるのだが,そうすると二次利用が難しい場合がある。AATのグリフ変換機能を使って該当グリフを得ると,データとしてはプレーンテキストで保存しておけるので,データベースやインターネットなどに展開する際に便利である。

フォント利用の注意点

Type1フォントとTrueTpeフォントは基本的にはMac OS Xのネイティブ環境で動作する。たとえば現在流通しているType1形式のCIDフォントの多くはSFNT CIDという形式だが,これはネイティブでサポートしている。TrueType形式では,Macデータフォークスーツケースフォント(Mac OS Xで採用された新しい形式。従来のリソースフォーマットをコンバートしたもの)と従来のMacスーツケースフォントをサポートしている。OpenTypeフォントは当然ながら,WindowsのTrueTypeフォントもサポートしている。
Mac OS Xのネイティブ環境でサポートしていないのは,fbit形式の丸漢フォント,OCF,naked CIDである。またプロテクトCIDフォントはネイティブ環境では使えない。また,日本ではあまりなじみがないと思うが,Multiple Master Fontはサポートしていない。また,FONTやNFNTというビットマップリソースだけのフォントがあるが,それはQuickDrawアプリケーションだけで動作する。
 Mac OS XでもClassic環境ならMacOS 9で使えたフォントは基本的には使える。Classic環境ではコピープロテクトのかかったCIDフォントもサポートしている。

フォントのインストール

Mac OS Xには5つのフォントフォルダがある。これは使用目的で分かれており,優先順位を持っている。(1)「Classic環境」フォルダにはClassic環境だけで動作するフォントを入れる。たとえばOCFフォントなどネイティブ環境で使えないフォントをこのフォルダに入れておくと,ネイティブ環境では自動的にキャンセルされて表示されない。(2)「システム用」フォルダにはバンドルフォントでシステムに使われているものが入る。ヒラギノフォントもここに入っている。このフォルダは原則としてユーザが変更する必要はない。Mac OS Xはマルチユーザ環境であり,さまざまなユーザがユーザアカウントで使うことができる。そこで自分だけが使いたいフォントを(3)「ユーザ」フォルダに入れておく。(4)「ローカル」フォルダは従来のいわゆるフォントフォルダに相当する。つまり,そのマシンを使うユーザ,ログインするユーザすべてがそのフォントを利用でき,すべてのアプリケーションで使えるフォルダである。一般の市販フォントはこのフォルダにインストールされることになる。(5)「ネットワーク」フォントフォルダはまったく新しい機能で,Netinfoというネットワークシステムで管理されるマシン間でフォントを共用するためのフォルダである。これを利用するためには,Netinfoの知識はもちろん,ネットワークやUNIXの知識が必要となる。

JIS X 0213の利用

図はJIS X 0213を利用するうえでの注意事項をまとめたものである。JIS X 0208,0213の文字は基本的にはすべて利用でき,エンコーディングはUnicodeで行なっている。また,JIS X 0213に含まれなくてもプリプレスで使う文字を多数収録しており,これはことえりの文字パレットで利用できる。非UnicodeというのはUnicodeに割り当てられていない文字だが,これはグリフIDにアクセスすることで利用できる。現在ではアドビのアプリケーションで表示できる。
プリプレス分野からの要求は非常に多く,あらゆる文字を入力したいということがあり,できるかぎり手を尽くしてこういう結果になった。文字を使うときはこの表を参照して,利用目的や環境などに注意していただきたい。

エンコーディング 文字セット ことえり候補表示 ことえり文字パレット 不特定多数の情報交換 プリプレス
Unicode JIS X 0208(MacJapanese) OK OK OK OK
Unicode JIS X 0213 OK OK(この文字を表示できないフォントもあります) OK OK
Unicode JIS X 0213外 X OK(ほとんどのフォントはこの文字を表示できません) Δ※ OK
非Unicode N/A X X X OK
※注:Mac OS間の情報交換に限った場合

アップルでは,ヒラギノフォントの開発を通してアップルパブリッシンググリフセット(APGS)を開発してきたが,これが起爆剤になって,今後の新しいDTP環境を切り開いてくれることを期待している。

(テキスト&グラフィックス研究会)

2001/12/06 00:00:00


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