ISO9001:2000年版へ向けて半数以上がすでに始動
〜ISO9000運用アンケート報告(第8回・最終回)〜
8回目となったISO9000運用アンケート報告は、今回をもって最終回としたい。今回は、ISOの文書管理の方法と2000版への動きをまとめた。これからの文書管理はITを生かしたネットワークに移行していくと思われるが、現状はまだ7割がアナログ管理のようだ。また2000年版への移行課題としては「顧客満足度の測定・分析」や「教育訓練の有効性の評価」などが課題であると意識しているようだ。
〜ISOの文書管理の方法は〜
●7割が紙ベースのアナログ管理
ワープロ、パソコンを利用して、文書作成はしているが、文書管理をシステム化しているところはまだ少ないようで、管理ソフトの利用やネットワークを利用しての管理となると実施している企業は15.6%である。しかし移行予定の20%を入れると35.9%で3分の1を越える。これからは社内のネットワーク化と管理・営業・印刷部門のIT化が進むとISOの管理も大きく進展するであろう。文書をBD化し、運用はすべてIT端末(パソコン、デジカメ、携帯など)で行ない、完全にペーパーレス化しようという先進的な企業を目指しいるところが、移行予定で3件(4.7%)、思案中で15件(23.4%)となっている。実現までのタイムスケジュールは不明であるが、文書の修正・配布・回収・破棄などをネットワークで上手く管理できるとそのこと自体が、印刷会社のノウハウにもなり、得意先に対して文書管理の商品企画提案にもなるのではないだろうか。
■ISO9000sの文書管理の方法について(括弧内は件数)
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現 状 |
移行予定 |
思案中 |
考えていない |
文書管理は紙ベースによるファイリングシステムで訂正・配布・廃棄は人海戦術 |
68.8% (44件) |
4.7% (3件) |
3.1% (2件) |
0% |
文書管理ソフトを導入し、データと紙で管理。配布・回収等は人海戦術 |
6.3 (4) |
4.7 (3) |
14.1 (9) |
17.2 (11) |
文書管理はデータと紙で管理であるが、指示・報告、修正配布・回収・廃棄はネットワークを利用している。 |
9.3 (6) |
15.6 (10) |
10.9 (7) |
18.8 (12) |
文書管理はすべてDB化され、運用すべてをパソコン端末で行い、ペーパーレス化されている。 |
0 |
4.7 (3) |
23.4 (15) |
26.7 (17) |
審査機間との定期審査、更新審査は、オンラインによる電子審査にしていきたい。 |
0 |
0 |
0 |
0 |
〜ISO9000の2000版移行への準備と課題(不安)〜
●スタート派と今すぐ派で約6割
それぞれの取得年月によって、定期審査あるいは更新時期のタイミングによって、準備体制が違ってくるであろう。「これから(来年)」(39.1%)派と「今すぐ」(37.5%)派が半々である。「すでにスタート」した着々派が18.8%(12件)あり、「今すぐ」派を合わせると56.3%となり半数が動き始めているといってよいであろう。その他で1件であるがISO9000から自動車関連産業に特化したQS9000への変更予定を考えているところがある。
■2000版取得への動き
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事業者数
|
%
|
2000年版への準備は直ぐに始める |
24件
|
37.5%
|
2000年版への準備は2002年から始める
|
25
|
39.1
|
2000年版はかなり考え方が変るので対応はしない |
0
|
0
|
2000年版準備のための事務局をすでに設置しスタートした |
12 |
18.8
|
その他(QS9000への移行) |
1 |
|
●「顧客の満足(CS)」「プロセスアプローチ」「教育の有効性と評価」が2000年版への課題項目
2000版では94年版に比べ、文書化の比重が軽くなった面があるが、マネジメントの部分が強化され、改善が重視されたことで「プロセスアプローチ法」(42.2%)や「顧客の満足度測定」(57.8%)などの規格が加わり、実際に運用するには知恵と工夫が必要である。また「教育訓練の有効性と評価」(34.4%)についても外部の資格制度の取り入れや社内の職能資格体系などを整備することも視野にいれなければならないだろう。2000版へのチャレンジは大変なところもあるが、そのことで企業の基盤がより強化されるのではないだろうか。
■2000年版対応の中で、難しいと思われる箇所はどこか<BR>
(規格理解面と実際の対応面の両面からみて)
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事業者数
|
%
|
顧客の要求から顧客の満足度へ |
37件
|
57.9%
|
プロセスアプローチ法
|
27
|
42.2
|
教育訓練と有効性の評価 |
22
|
34.4
|
継続的改善
|
15
|
23.4
|
品質マニュアルの改訂
|
13
|
20.3
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目標管理
|
9 |
14.1
|
設計開発
|
9
|
14.1
|
測定、データ分析による情報提供
|
9
|
14.1
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経営者の責任、マネージメントレビュー
|
8
|
12.5
|
品質マネジメント計画
|
7
|
10.9
|
予防処置
|
7
|
10.9
|
文書管理
|
1
|
1.6
|
品質記録の管理
|
0
|
0
|
【報告連載を終えて】
ISOを定着させ「血肉と」なるまでには時間がかかるであろうが、マネジメントシステムの運用になれ、会社全体がそれを基本にして自然な形で定着していくことで、ことさら「ISO」ということを強調することもないであろうし、あらたなマネジメントシステムの導入に際しても抵抗感、違和感はなくなるであろう。しかし、慣れることとマンネリ、形骸化は紙一重のところもあるので、事務局としては要注意である。それにはISOの最大の利点である第三者機関による目(定期審査)を上手に活かすことである。その分経費は掛かるが社長を含めた全員がいい緊張感を維持できることは、大切な仕組みではなかろうか。
*
今後ISOは導入から工夫、成果、定着へと展開していくことになろうが、新たなステージを迎えたISO9000あるいは14000などを今後ともウォッチしていきたい。今回はじめてのISOアンケートで、項目の設定や質問方法に不慣れな部分があり、十分な分析ができなかった点もあるが、今後とも継続し、情報発信をしていきたい。
最後に今回のアンケートにご協力いただきましたISOご担当者の皆様へ衷心より感謝を申し上げます。
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2001/12/14 00:00:00