新しいメディアの話は,技術先行になりがちで,ビジネスがなかなか見通せないため,ベンチャー企業が登場しても短命に終わるとか,既存のメディアからの進出も挫折が多かった。しかし,今日では,ビジネスとしての成長が見え始め,各社の戦略が問われる段階にきた。
PAGE2002 コンファレンス「メディア」トラックは,「成長を続けるWeb」,「コンテンツの有料化」,「次世代ネット利用」の3つのセッションにより,デジタルメディアの今後を考える。
モデレータの(株)野村総合研究所 上級コンサルタント 中島 久雄氏は,生活者市場分析,マーケティング戦略,事業開発,業務改革,システム計画策定等を幅広く手掛けた。現在の専門分野は,情報通信分野における事業戦略とマーケティング戦略で,ユビキタス・ネットワークなどについての執筆も多い。
中島氏からは,「消費者のIT利用動向と今後の主要IT普及予測」をテーマに,
・消費者のインターネット・携帯電話の利用動向(NRI「CLO(Cyber Life Observation)調査」より)
・アクセスライン/ISP市場/コンテンツ市場/プラットフォーム市場等の2006年
までの予測(NRI予測資料「IT市場ナビゲータ2006」より)
・ユビキタス・ネットワーク化とその本質
などについて,プレゼンしていただく予定。
ブロードバンドだけでなく,モバイルなどを組み合わせた日本ならではのネットワークスタイルがどうなっていくのか,などについてもお話いただく予定である。
日経BP社 インターネット局企画部 企画部長の竹田 茂氏には,「ブロードバンドリレーションシップ」をテーマにプレゼンしていただく。
インフラ,メディアリテラシー,端末の動向などの概論にも触れながら,ブロードバンド時代にコンテンツビジネスがどう変わるかを,出版社としての立場からお話していただく予定である。
ソニー(株) ブロードバンドネットワークセンター ホームページ室 統括部長の黒葛原 寛氏には,「Webサイト今後の方向性」をテーマにプレゼンしていただく。
ソニーグループのWebサイトコンセプトやサイト概要等をお話いただくとともに,ネットワーク環境やライフスタイルが変化していく時代における,Webサイトの今後の方向性についてプレゼンしていただく予定。
(株)パワー・トゥ・ザ・ピープル CEO 代表取締役社長 有吉 昌康氏には,「消費者の消費者による消費者のための商品・サービス評価サイト」という新しいランキング型情報提供サイト POWER to THE PEOPLE についてお話いただく。
このサイトは,商品やサービスの供給者と消費者の情報格差を少なくすることにより,メーカーやマスコミ等に踊らされない賢い消費者が日本で育つことをサポートすることが目的として作られた。
消費者間の情報交換がメディアになる時代において,P2P(Peer to Peer)コミュニティが企業に与えるインパクトと双方向のメディアであるWebを用いた企業のマーケティングの変化などについてもお話いただく予定である。
以上4名の方々のディスカッションを通じ,今後のWebサイトの方向性を探っていきたい。
インターネットで無料コンテンツが拡大を続ける一方で,会員制のWebや電子書籍などの有料コンテンツのビジネスは厳しい現状が続いた。しかし,顧客からの声に耳をかたむけ,ニーズが高いコンテンツや利便性の高い仕組みを提供することに成功している事業者もでてきている。
日販は1999年にオンデマンド出版事業を展開する「ブッキング」を設立した。取次ぎが抱えている品切れ・絶版の問題を解決するために立ち上げた。しかし,読者のニーズにあわせて1冊からでも印刷するオンデマンド出版ビジネスは大きな利益を生むのは難しい。
そこで,復刊ドットコムというビジネスを平行して展開した。読者が欲しい本があればインターネットで投票し,一定以上の投票が集まれば,ブッキングが出版社へ交渉する。交渉が成功すれば復刊が決定する。ユーザの意見をまとめ,ポータルサイトとも上手く連携してアクセスを増やすことで,今まで眠っていたコンテンツがヒットを生みはじめている。
農文協は,インターネットで会員制のデータベースサービス「ルーラル電子図書館」を提供している。農文協が発行する主な雑誌や書籍を,年間24000円で全文検索してコンテンツを利用することができる。目次レベルまでは非会員でもアクセスできる。このため,Webで目次を読んで興味を持ち,雑誌の年間購読をする人も多く,Webと紙メディアは相乗効果で売上を伸ばしているという。
電子書籍はまだ大きなビジネスになっているとはいえない。しかし,その可能性にメディア業界で期待を寄せる人は多い。成功の鍵は「標準化フォーマットと端末である」とアイビーエス 代表取締役 桜井恵三氏は語る。PCコンパニオンやPDA等のモバイルデバイスの普及が進み,2002年には350万台近くが出荷されると予想されいている。このためモバイルデバイス市場で電子書籍が普及する可能性がでてきている。フォーマットについては,現在,画像やPDF,HTML,ドットブック等さまざまで,ユーザ側にとっては使いやすい環境とはいえない。そこで,コンテンツをXMLデータして,端末を選ばないという状況にすることが重要になるだろう。
モデレータの清水メディア戦略研究所 代表取締役 清水 計宏氏は,元 映像新聞の編集長を経て,2001年12月独立。現在,ITビジネス交流ネットワークを主宰しながら,IT関連企業向けのビジネス・マッチング・セミナーを開催するとともに,欧米を中心とするITの世界動向について情勢の収集・分析をしている。過去1 3年間にわたり,国内外でのメディア動向の取材経験をもとに,見解を示しながら,モデレータをしていただく。
伊藤忠商事(株) 宇宙・情報・マルチメディアカンパニー ブロードバンドビジネス開発室長の目時 利一郎氏には,「ブロードバンドのビジネス機会」をテーマにプレゼンしていただく。放送全般のお話をしていただく予定。
(株)インプレス 顧問 田村 明史氏は,PAGE2001コンファレンス「第5のメディア:Web」セッションに引き続いて登場。ブロードバンド時代におけるコンテンツとサービスの動向についてプレゼンしていただく。
ディスカッションでは,清水氏には新聞社の立場から,目時氏には放送側の立場から,田村氏には,出版社からの立場から,「次世代ネット」について,熱い議論が交わされるであろう。
2002/01/14 00:00:00