ボーダーレス時代に突入した現在,ソフトウエア産業では,国際化・多国籍化が定着してきた。ITに関しても今まではアメリカが主導権をもっていたが,今後は日本や中国が中心になるといわれている。
日本で学んだ中国人留学生が帰国せずに,日本国内で創業するケースが増え,中国人系のベンチャー企業は100社を超えているらしい。
今回は,そのITベンチャー企業としてe-ビジネスソリューションを展開する株式会社インフォデリバの代表取締役尚捷(ショウ・カツ)氏と取締役技術担当千里智傑氏にお話を伺った。
創業当初からインターネットビジネスを手掛けていたが,着目したのは電子ドキュメント・電子帳票の類で,いかに奇麗に出力するか腐心しているとき出会った技術が,XMLとPDFであった。 同社の主要顧客である電機メーカーおよび大手出版社の場合は,取引上の電子帳票,見積もり,出荷予定リストや人事の帳票などをWebに移行していった。しかし,だんだんそれだけでは物足りなくなる。ただの表現ではなくマネジメントをしながら概念を変えていかなければならない。電子帳票からWebパブリッシングという統括した概念に進化していった。
特徴としては,PDFファイルの動的な生成,シングル&ダブルバイト文字・ラインの表示,RGBイメージ対応,画像の解像度制限なくPDFファイルに変換できることなどである。
開発の背景としては,顧客企業サイドの要望がある。顧客に対し,紙媒体だけでなく,あらゆるメディアに多様な情報を効果的に提供していく。そこから得られる情報をフィードバックする情報配信サイクル構築というニーズが高まってきた。そのために必要なものは,コンテンツの標準化を図ることである。またワークフローを構築し,省力化と自動化を図る。ドキュメントのライフサイクルを管理し,ユーザニーズに合わせたコンテンツを組み合わせて多様な提供を行うことである。
しかし,現実問題としてコンテンツがすべてデジタル化されているかというとそうでもない。紙ベースや異なるアプリケーションデータであったり,Webベースであったりする。データ入力のプロセス管理をしなくてはならず,コラボレーションが重要になってくる。同社では,WordやExcelなど日常使っているソフトをXMLツールとして利用できるようXMLへの変換機能を提供している。
インターネット環境でのOPI(Open Prepress Interface)技術を採用している。場所を選ばず,どこからでもプリプレス工程に参加できるシステムを構築することができるため,画像編集などにおいてスピードアップが期待できる。
DTPにおいて,色の問題をいかにクリアするかは,大きな問題の一つである。RGBだけでなくCMYKに対応した図形描画技術を採用しているため,画面で見た色のままの印刷結果が得られる。
JPEG,GIFはもちろん,ベクトル画像,WMFなど,さまざまな画像フォーマットに対応していることも,強みであろう。これにより,雑誌や書籍といった,厳しいレイアウト精度が要求される印刷物にも対応できるパブリッシングシステムが構築可能である。
応用例としては,製品カタログのオンデマンド印刷,オンライン名刺作成システム,書籍・雑誌の編集・発行システムなどが実績としてある。
ビジネス文書として必要なセキュリティを確保するために,OnDemand PDF Engineを使うことで,「閲覧」「編集」「印刷」などを権限ごとに指定した電子ドキュメントが作成できる。 PDFファイルへの自動的なフォント埋め込み機能を使い,どんな環境で見ても文字化けしない電子ドキュメントが作成できる。
高精度な画像処理などの技術を採用しているため,厳しいレイアウト精度を必要とする文書・帳票類などの作成に最適である。表示・出力の際にレイアウトが崩れない。
XMLに完全対応しているので,オープン性と拡張性の高いシステムを維持していくことができる。
導入事例としては,オンライン人事評価システムやオンライン決裁・稟議システム,勤怠管理システムなどがある。
「これからは知恵の時代,アイデアを出す時期にきている。お客様はバリューを求めている。当社はインフラを提供していきたい」と語る。
同社では,情報産業のSCMを構築したいと考えており,PCM(Publishing Chain Management)の実現を目指している。
また中国の清華大学との共同研究や関係会社との提携により,日中共同による世界戦略を展開している。(上野 寿)
■出典:JAGAT info 2002年1月号
【関連情報】PAGE2002コンファレンス「XMLトラック」
2002/01/05 00:00:00