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CTPの今後をプレート側から考える

現実のシステムや材料,機器は完璧なものではない。CTPプレートもコンベンショナルなPS版の性能や使い勝手までは達していない。いろいろな問題が起きた時に,いかに原因を追求して早く答えを出せるかはメーカー側の姿勢によるだろう。
2001年11月20日のテキスト&グラフィックス研究会拡大ミーティング「CTPの今後を考える」では,コダックポリクロームグラフィックス,東レ,日本アグフア・ゲバルト,富士写真フイルム,三菱化学の5社に,技術面だけでなく,運用上・効率上の視点も含めた動向について伺い,いまだ開発途上のCTPプレートについての議論を行った。

CTPの普及

CTP化率をPS版とCTP版材の国内出荷量を平米比率で見るとCTP版が2桁になったという。初期の段階でのCTP導入を希望しているところにはかなり行き渡っているのではないか。顧客にアンケートを取ると,CTPで時間短縮になった,品質が向上した,外注費がなくなったということで,基本的には8〜9割の顧客は入れて良かったということである。これからは,半裁以下または全判でもコンベンショナルラインがなかなかCTP化できない,デジタル化できないという顧客は,かなり多いはずである。この顧客層はアルミのCTPが必ずしも要るかというとまた違うこともある。
CTP導入は最近はそれほどノウハウは必要なくなってきているのではないか。コストダウンの大きな手段はCTPだと,特に経営者が力を入れたところはCTP化が進んでいく。

サーマルプレート

サーマルプレートにはプレヒートとノンプレヒートの2種類があるが,現像前にプレヒートを行なったほうが版の耐久性や安定性を上げるためのエネルギーが十分に与えられるために,(アフター・バーニングしない場合は)未だネガタイプのほうが耐刷性はある。ただ,各社ともノンプレヒートのポジ型の性能が上がってきて,耐刷性がネガの特徴となり続けることはない。しかし,ポジプレートを焼くときには版の咥え部分が露光されないので,一部オフ輪でこの部分が焼き残しになる問題は依然として残るだろう。

水なしCTPプレート

基本的に水なしプレートは,非画線部が汚れないようにする,完全にインキを弾くことに尽きる。このために使われるシリコンゴムは,非常にポーラスなスポンジ状のものとなる。その中に,ローラで版面にインキングをする時にインキの中の溶剤がシリコンに染み込み,ある程度印圧が掛かるので,その溶剤がシリコンの表面に薄い膜を張り,それでインキを弾いているというのが原理である。東レの水なしCTPは現像の時に水だけしか使わない。現像廃液が出ないので廃棄処理が要らないし,前処理用の現像液は平米当たり5円も掛からない。このことは、印刷時に湿し水を使わないことを含めて、最近では環境対応面から非常に注目されており、利用が拡大しているという。

UVインキへの対応

CTPプレートはUVインキ用の溶剤に弱い面があるが,インキメーカーからハイブリッドインキという,UVインキと酸化重合型の枚葉用のものが出てきた。このハイブリッドインキを用いると,今までUVインキで使っていたプレートクリーナーや各種のケミカルを使う必要がない。

バイオレットCTPプレート

バイオレットレーザのセッタが出てくると,CTPも安くなるのではないかという期待がdrupa2000の時にもあった。drupaでは,アグフアが先行して銀塩タイプのバイオレットCTPプレートを実現してきたが,バイオレットレーザが出てきて何が安くなるかというと,レーザが今の民生用のDVD用のレーザだから,その部分は安くなる。しかし,レーザー部分のコストは機械装置からいけばほんの一部分である。

版材側からいくと,バイオレットになっても基本的に銀塩やフォトポリマーを使う点は変わらない。drupaの時はフォトポリマーも感度がある程度高いもので5ミリワットでも一応焼けるとか30ミリワットで焼くというものが出てきた。しかし版材の部分はバイオレットになったからといって安くなる要素はあまりない。

結局どこが安くなるかといったら,まさにレーザのその部分だけということになるだろう。バイオレットレーザやバイオレットCTPへの期待は,セッタのレーザのメンテナンスコストがサーマル用の何十ワットというものに比べれば安いということだ。黄色安全灯が使える以外、バイオレットCTPプレートとビジブルCTPプレートは同種のものと理解していい。

アルカリ系の現像液は炭酸ガスで劣化進む

サーマルにしろフォトポリマーにしろ,ベースはアルカリを用いた現像液なので,炭酸ガスは基本的にアルカリに吸収されて現像液の活性度低下が早く進んでしまうために、仕方なく補充量を増やすことになってしまう。そこで補充料を減らす顧客側の工夫としては,CTP自現機の設置場所を換気をするということが最も手っ取り早い方法につながる。

CTPの次の開発方向

サーマル系の技術にはかなり多様性があり,無処理への展開が期待されている。各社がサーマルというテクノロジーを採用している大きな理由は,将来へ向けての技術の多様性である。その一つが無処理,プロセスレスの板である。DI機上の出力だけではなく,オフラインとしてもかなり有望な市場であり,顧客の要望が大きいと考えている。自動現像機をメンテナンスしていくことが負担になっているという点で開発の意味は大きい。ただ,無処理というのは,現状において,水を使う場合ほとんど非画線部がアルミの砂目を使っていないので,ここでの能力に限りがある。今,印刷機がどんどん高速になり,水の保水性が非常に大事になっているところに,開発中の大半のものが親水層にアルミの砂目でなくポリマーなどいろいろな親水性のものを使っている。

プロセスレス感材をもう一つの技術的側面からいうと,下層に発熱層を設けて上層の親水層を飛ばす方法は,低エネルギーというか,アブレーションをさせやすくて比較的簡単に設計できる。それに対して層全体をアブレーション,あるいは何らかの手法で柔らかくし,なくしてしまって砂目を露呈させるというのは,エネルギー的には非常に苦しい。しかも,砂目にいろいろな残存物というか,飛ばなかった残りや印刷で剥離できなくなったものが残ってしまい,砂目を出すのは非常に難しい。その辺が無処理の一番技術的な課題ではないかと捉えている。

別の観点から,特にアルミベースにこだわった場合,もう一つの将来の手段として,アルミはプレートの原価の中で最も高いもので,ほとんど顧客にはアルミを買ってもらっているといっても過言ではない。そこで,アルミのリユーザブルというか,ローランドのダイコウエブのように,一回書き込んで,また消去してその上に感材を着けて印刷を掛けるというのは,かなり遠いかもしれないが,それも一つの将来の方向と考えている。

まとめ

CTPが普及するなか,材料やシステム開発も着々と進んでいる。印刷会社1社1社の中でのCTP化率を上げていくためにも,技術を理解し,CTPをうまく使って会社の技術の安定やコストダウンを図ってもらいたい。
(テキスト&グラフィックス研究会)

■出典:JAGATinfo 2002年1月号

2002/01/10 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会