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OpenType時代の文字環境

Mac OS Xのヒラギノ書体搭載が発表されたのは2000年2月だが,実際にその姿が見えたのは2001年9月のMac OS X 10.1のリリース時といってよいだろう。
この間,約1年半という時日が経過しているが,その間に期待が大きくなりすぎたような印象を受ける。Mac OS X 10.1の日本語環境は,あくまでもDTPの次のステップへの基盤の提示と捉えるべきではないか。それだけですべてが一気に変化してしまうわけではないだろう。

文字は,つねに歴史と文化を背景や前景にして立ち現れ,しかもその捉え方はひとりひとり違うから,いつも激しい議論を呼び起こしがちだ。しかし,文字そのものの問題と,コンピュータでそれを扱うということとは,やはり区別して考える必要がある。そしてコンピュータで扱うというときには,だれがどのように利用するかという視点が重要である。

Mac OS X 10.1のOpenTypeヒラギノ書体によって,文字にまつわるあらゆる問題が一気に解決されるわけではない。そもそもどのようなコンピュータ環境が実現したとしても,現実のすべての問題が解決されるはずはない。
必要なのは,たとえばOpenTypeフォントやMac OS Xの日本語環境が何を実現したのか,また何を課題として残しているのかを考えることであり,もっと重要なのは,そのとき,どういう立場で考えるのか,そのスタンスを明確にしておくことである。

たとえば外字。2万字以上の文字を含むOpenTypeフォントが利用できるようになったとしても,それでも足りないという事態は必ず起きる。どんなに大きな文字セットであっても,それがひとつの集合である限り,そこに含まれない文字は原理的に必ず存在する。
問題は外字をなくすことではなく,誰がどの場面でどのように外字を必要とするのか,それをどのように作成し登録し管理するかである。これは異体字についても同様のことが言えるだろう。

2002年1月15日(火)のテキスト&グラフィックス研究会のミーティング「外字・異体字 - どう作り,どう管理するか」では,外字の管理・登録方法や異体字の判定方法などについてフォントベンダーに聞く。
不確定要素はあるにしても,今後,フォントフォーマットがOpenTypeに統合されていくのはおそらく間違いないだろう。それにともなってフォーマットにまつわる問題がなくなれば,いずれはフォントそのもの,いわばフォントの「コンテンツ」がクローズアップされる。そういう観点から,このミーティングでは外字と異体字の扱い方を取り上げることにした。
もっとも,外字の管理や異体字の判別というテーマは,OpenTypeになるから重要になるというものではなく,印刷・出版には必ずついて回る問題である。そういう意味では基本的で普遍的なテーマを取り上げることになる。

PAGE2002のコンファレンスでは,2月8日(金)のテクノロジートラックの中の「OpenType時代の文字」というセッションで同様の問題を扱う。
このセッションのスタンスは,Mac OS XのOpenType対応をDTPの新しい段階への最初のステップと捉え,あくまでも前向きに今後の展開を考えたいということ。そして,その際,ユーザニーズへの対応を切り口にするということである。
一口にユーザといってもさまざまだが,このセッションでは,まずフォント提供側がどういうユーザを想定しているのか,つまりどのような基準で字種を選定しているのかをそれぞれうかがいたい。
また,2万を超える文字種を標準的に扱えるようになれば,当然,ユーザ別の切り分けという考えが出てくるだろう。現在でもProとStandardという切り分けを行なっているが,たとえば「オフィス」とか「アカデミック」「地名・人名」というようなさらに細かい切り分けの必要があるのか,またそういう対応を考えているのかどうか。
それから,これは必ずしもOS側やフォントベンダーの問題ではないが,ユーザにとっては文字の入力・判別・検索などのツールの充実が今後の鍵になるはずである。どういうツールが必要なのか。フォントベンダー側でなにか考えているのかどうかもうかがいたい。
セッション全体としては,OpenTypeフォントが今後どのように使われるようになるのか,どのようなステップが必要なのか,そのロードマップがおぼろげにでも見えてくればよいと考えている。

2002/01/07 00:00:00


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