2002年正月の年賀状を見て、プリントごっこが姿を消したこと、デジタルカメラとインクジェットプリンタによってほぼ写真画質の年賀状を家庭で作るようになったことの2点が印象的であった。近い将来に官製年賀はがきにカラーオフセット印刷する需要はなくなるのではないか、と思うほどであった。
印刷の世界は縮小再生産になりかけているので、プロ用の新たな開発がなかなか見られなくなって、グラフィックアーツのデジタル化も天井ではないかと思う人もいるだろう。しかし客観的に見るとこの間の変化は大きい。カメラもプリンタもプロ用とアマ用の品質の差は急速に縮まり、そのことが需要を拡大していて、技術開発とマーケティングのよい関係が成立している。
だからアマチュア用デジタルカメラはさらに開発の投資ができ、内部的にいろいろな工夫が積み重ねられている。この工夫は過去のグラフィックアーツの機器開発がCMYKのインキでの再現をベースにしたものであったのとは違い、汎用な色の科学的な研究の成果が生かされて、従来の印刷の「プロ」が考えないような試みも見られる。
なぜ色や画像がサイエンスを武器に進撃を続けるのかについては、T&G会報156号巻頭の「カラーにとってデジタル時代は新たな出発点」でも触れたことがある。PAGE2002画像トラックでは、その大田登氏自身にも登場いただくが、このような色のサイエンスを従来のグラフィックアーツの世界ももっと積極的に取り組まなければ、今後「プロ」がプロとして通用しないようになるかもしれない。
以前から印刷の色管理をCMYK濃度値ではなく色彩計で測って行う方法は紹介されていたが、それが普及しないのは方法に問題があるからではなく、印刷の現場も顧客も色彩論にピンとこないからであろう。プリプレスから印刷に至るワークフローのカラーマネジメントも同様である。しかし工程のデジタル化で色が数値化されたことで、分光や色空間で現実の問題を考えるツールが登場しつつある。色を計測分析した数値の羅列は脳を刺激しにくいが、それがグラフや立体表示などビジュアル化すれば、トータルなものの見方ができて問題の性質は分かりやすくなる。
今まさに新たな視点で問題解決に挑戦するためのツールが出ようとしているので、それを使うにふさわしいようにCMYKからの意識の切り替えが必要である。PAGE2002では中日の2月7日(水)一日をかけて,印刷とその周辺の世界にも共通した視点で、画像の3セッションを行う。今回は従来の画像についての講演はもちろんあるが,ディスプレイ上の文字の高品質化という,近年足踏みしていたテーマも扱う。
1-1 カラーマネジメントの標準化:全体動向
キヤノン株式会社 国際標準企画センター 国際標準企画部部長 桑山哲郎 氏
1-2 カラーマネジメントの標準化:全体動向
キヤノン株式会社 国際標準企画センター 国際標準第二企画室主幹研究員 会津昌夫 氏
上記お二人には,日本における標準化活動全体に渡る現状を解説していただく。これにより,「今日本では,どのようになっているのか」が明確になる。
2 sRGBほか
三菱電機株式会社 映像情報開発センター 杉浦博明 氏
主として,IECの側からのsRGBなどの現状について報告をしていただく。
3 ISO/TC42/WG18におけるデジタル写真規格
東京工芸大学 芸術学部メディアアート表現学科 教授 大野 信 氏
写真機の側からの報告をしていただく。特に,印刷製版とは,連携を取っている団体なので,関連事項を中心にして,報告していただく。
1 画質評価の国際標準化動向
富士ゼロックス株式会社 ドキュメント工学研究所 主幹研究員 稲垣 敏彦 氏
氏はISO/IEC JTC1/SC28(Office equipment)において,画質評価に関するエキスパートである。これに関連して,国際の場で提案している評価画像と方法について,ご報告いただく。
2 色再現の今後(仮題)
ロチェスター工科大学 イメージングサイエンス研究所 教授 大田 登 氏
氏は言うまでも無く,カラーサイエンスの世界的権威である。その見地から,色再現の今後について,将来展望をご報告いただく。
2002/01/24 00:00:00