グラフィックアーツとITの接点は、と考えると2つの意味がある。第1に、地図はすっかりカーナビ、WEB、ケイタイなどの電子地図が定着した(というようなことは以前にも書いた記憶が…)ように、印刷メディアと電子メディアがクロスして使われるようになることは自明である。このクロス状態での攻防で優位に展開するにはIT度が高いことは必須条件である。
第2は、どんな仕事も効率化の鍵はITであるように、我々も近年のDTPの経験からもITのコストダウン効果は身に沁みてわかった。今は、サーバ・ネット・協業でさらにコストダウンの可能性が目の前にぶら下がっている。それは電子調達であったり、ECであったりする。
このようなITの講釈は耳タコで、やるべきことはわかっていると言われてしまうのだが、DTPのデジタル化はできた会社でも、それ以上のITでは実行が伴わないのが現実だ。その難しさは何か? どういう人が、どういう会社がIT化を突破できるのか?
昔は経営のトップが今後の技術の方向を掴んで、どっかで最新の機械を見て決断して仕入れてきて、社内の人に勉強させれば儲かった。またDTPの黎明期には、年は若くてもデジタルのよくわかる人が、まず自ら頑張って経験を積み、他の人を先導してDTPを実用化させた。前者は経営のトップダウンで、後者はボトムアップであり、中間の人は引きずられてついていった。
しかしトップは電算写植やCEPSのメリットは判断できても、サプライチェーンだ、ECだ、電子調達だ、という話になると自分でトットコ決断はできなくなってしまった。現場の優秀な人は、デジタルの最初のステップは業務もしながら自力でできたが、バックアップだ、セキュリティだ、サーバやネットワークのアップグレードだ、外注部分とのデジタルの連携などになってくると個人の手におえない。業務をしながらヤレというのは死ネというのと同じである。
ではこれらを突破する役割は誰が担うのか? 答えはみんなの力が必要で、みんなが担うのである。ITは組織や業務の隅々にまでゆきわたりつつあり、優秀な個人がちょっといるだけでは手も足もでない時代になるのである。この期に及んで、技術のスーパンマンを雇ってITを乗り切ろうという経営者は大ボケもいいとこである。
この業界は、最近はDTPはボトムアップに依存しすぎた弊害があり、それ以前は専用機に依存しすぎた弊害があったが、そこでの弱さはカバーされていた。得意先の優しさという傘、メーカーの技術の傘、系列の経営的な傘など、いろんな傘があったのが、昨今のデフレで傘はすっかり取り払われつつある。
またデジタル時代になって経営トップの技術的なリーダーシップの喪失というのも大きなハンディである。経営者向けの技術動向セミナーはさっぱり人が集まらなくなった。デジタル化を進める過程は「追いつけ」という意識でもできたが、ITの戦略で肝心のトップダウンができないと、現場は次々変わっていく状況に対して後追いで対応するしかなく、追いついたと思った時にはまた離されて、という繰り返しになる。つまりITの先に目標を掲げて、少し先回りで計画推進ができないと投資が活きないのである。
それを推進する秘策はない。技術で一発逆転ホームランもない。面白みはないかもしれないが、企業が底力をつけるしかないのである。上からも、下からも、中間からも社内みんなの力を出し合って、IT対応の強固な立体構造を作らなければならない。PAGE2002で50ものセッションが用意されているのは、社内のそれぞれの役割分担の人が、それぞれのテーマで半歩先の勉強をするためである。
日本の企業は弱いところが切り落とされつつあり、今存亡がかかっているところは少なくない。社内の部門や働いている側も同じで、いつまでも弱い部分は切り捨てられてアウトソーシングされてしまうだろう。だからみんな必死でしがみついて努力するしかない。管理職は各役割分担ごとの課題と解決の方向を理解して、社内のベクトルを合わせ、その努力が実ってこの苦境が乗り越えられるようにサポートする役目がある。
今、社内の力の結集をして効率的なデジタル時代の仕事を目指すとともに、ITの中長期の計画の確立、またITで管理水準の向上を考えるところは、ぜひPAGE2002コンファレンス・セミナーに集結ください。
2002/01/23 00:00:00