CTPやオンデマンドシステムを効率的に運用するには前後の工程との協調が不可欠である。個々のユーザをみれば,環境に合わせてCTPをうまく運用しているところもあるし,既存のツールを組み合わせて低コストで独自のPDFフローを構築しているところもある。しかし,よりオープンでシステマティックなレベルではどうだろうか。
プリプレス側では,Adobe Extreme以降,各メーカー/ベンダーがPDFベースのワークフローを提案してきた。デジタルの作業票(ジョブチケット)を作業対象であるPDFファイルに付けて,面付けや分版などの製版作業を自動化しようという考え方はよかったのだが,いかんせん,現状の印刷工程でPDFを出力用の標準的なデータとして使うにはいろいろクリアしなければならない問題がある。メーカー/ベンダーは,それぞれユーザの現状に対応する工夫をしたが,その結果,今度はシステムが自己完結的になり,PDFとジョブチケットというせっかくのオープンなコンセプトがじゅうぶん生かされない状況になった。
印刷側は工程によってはプリプレスよりはるかに先んじてコンピュータ化されているところもある。DTPと印刷工程間を結ぶCIP3/PPFは,限られた分野ではあるがすでに利用されている。その延長にあって,プリプレスや受発注などまでも視野に入れたCIP4/JDFも実用に向けて動き始めている。しかし,CIP4/JDFは全工程に導入されてこそ本来の意義を発揮するものだが,今のところ全体像がみえる具体的なシステムモデルがなく,ユーザにはその姿がよくわからない状況である。
ワークフローを議論するとき,「標準」といえば処理対象としてのデータの「標準フォーマット」を指す場合が多い。しかしダイナミックでオープンなワークフローの構築というのは,たんにデータフォーマットをひとつにしてしまえばよいというものではない。処理対象となるデータのほかに,処理項目の共通化も考えなければならないし,さらには処理方法,あるいはフロー自体の共通化さえ視野に入れなければならない。なにをどこまでどのように標準化するのか。ことばの遊びのようないい方になってしまうが,「標準」の標準化が必要なのである。実際,CIP4/JDFもその点を考えて作られているようだし,各メーカー/ベンダーもそれぞれの考え方とスタンスに基づいて製品展開を行なっているはずだ。しかしユーザは「標準」をどう捉えているのだろうか。
例えばAMPACvsJDFの議論などはユーザの入る余地がなかった。それらの目的に意義を唱える人はいないであろうが、それぞれのタクティクスを聞いて、何をどう標準化するべきかについてそれぞれに注文をつけるとか議論に加わる用意はできていなかったので、日本にアイディアがあったとしても世界に向けての提案はできなかったであろう。
各仕事の目的に合わせたダイナミックなやり方が必要な中で、何を標準にするのかを決めるのは難しい。また製品化するときは,ベンダーは独自機能を付けて差別化するので、標準を標榜していても,表に現れてくるのはメーカー/ベンダー間の差であったということをPDFでも経験した。
全工程にわたるダイナミックなフローを築こうというなら,唯一不変の標準のうえで固定したシステムを使えばよいというわけにはいかない。ユーザは具体的な製品やシステムの向こうにワークフローの明確な姿を描くことが必要になる。つまり,ユーザこそ,ワークフローのあり方や標準とはなにかについて常に意識していなければならないのではないだろうか。
PAGE2002のコンファレンスでは関連するテーマを「出力」トラックに集めた。
プリプレスから印刷に渡すための出力フォーマットとしてなにをどう使えばよいか,CTP後のデジタルパブリッシングのワークフローの統合や自動化はどこまで可能なのか,そして従来の印刷とオンデマンド印刷をどのように切り分けてビジネス展開すればよいのか。これら3つのテーマについて,それぞれ最近の動向と課題を議論する。
2002/01/25 00:00:00