Adobe InDesign2.0では、日本語フォントとしてOpenTypeフォントである小塚明朝・ゴシック体の2書体が各6ウエイト、そしてこの中のLight2書体がProフォント(Adobe1-4の約1万5000文字数を持つ)としてバンドルされている。これらの書体は、いずれも解像度制限がなく、イメージセッターでもCTPでも高解像度出力が可能なものである。
このレイアウトソフトの書体バンドルが生み出す影響は、少なからず印刷業界に波紋を呼ぶことになるだろう。これまでの資産は凍結して、すべて新しい環境に移行したとしても、コストメリットはかなりのものとなる。
今回、改訂第5版目となるJAGATの「DTPテクニカルキーワード250」も、このような過渡期のなかに制作された。OCFフォントのサポート期限が過ぎているいることから、編集サイドの環境は、NewCIDフォントである。著者は出力センターという環境にいるために、OCF、NewCIDとも揃っているが、再版であるために初版時より使用しているOCFフォントを利用した。
デザイン会社はというと、こちらもクラアントの大半がOCFフォントを利用しているために、NewCIDで作成されたファイルを触ることはできないと言う。よって、OCFフォントを使用。
印刷会社も、クライアントへの対応を保全するために、双方の環境を維持している。このため最終的には、OCFフォントをCTP出力した。
しかし、このような状況をいつまで保持できるのか。
印刷会社の場合には、業務の大半が受託志向により成立しているため、クライアント次第というところもある。
デザイン会社は、新たなコストはできる限りかけたくないだろうが、最終的にはクライアントの要求に応えなければならないから、やはり、転換の鍵を握っているのはクライアントサイドということになりそうだ。
では、DTPテクニカルキーワードはこの先どうするのだろうか。皮肉なものだが、同書のなかでも、当然ながら読者の理解を深めるために、OCFフォントとCIDフォントの違い、OCFフォントをCIDフォント搭載の出力機で出力した場合の問題点、そしてその逆のケース、またOpenTypeフォントとはどのようなものなのか、といった内容を解説している。
現在は、DTPを制作するうえで、印刷物用の完全データを作成するところまでは、ようやくトラブルの大半が解消され、環境的に落ち着いてきたところである。少なくともそう思えた時期がここ数年つづいていた。
しかし、度重なるDTPソフトやフォントのバージョンアップは、果てしない投資を連想させる。新たにDTPを導入するクライアントにとっては、場合によってはWindowsで、しかもInDesignには合計16書体がバンドルされており、マシン環境に依存しないPDFとして保存・出力できるという事実は魅力に感じるだろう。
来年のいまごろには、「DTPテクニカルキーワード250」は6版目の改訂時期のさなかにあるだろうが、そのときは、誌面の印象はさほど変わらなくとも、制作環境はまったく異なるものとなっている可能性がある。
それが吉と出るのか凶と出るのかは、いまのところは五里霧中としか言えないが…。
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2002/02/02 00:00:00