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トータルカラーマネジメントに向けて

印刷機を巡る2つのカラーマネジメント

「印刷機をカラーマネジメントする」といった時には,2つの意味がある。これらを2つのカラーマネジメントループとして説明していく。ループ1は,印刷機(印刷色)をある一定の条件で常に安定させる仕組みである。カラーマネジメントの用語では,デバイスキャリブレーションにあたる。最近では印刷物をインラインで計測し,自動的に印刷機を制御するクローズドループのカラー制御システムが話題になっている。

ループ2は,印刷物からICCプロファイルを作成し,プリプレスにフィードバックして,その印刷色をシミュレーションするプルーフを作成し,校正と本刷りの色を一致させようとするループである。カラーマネジメントの用語ではキャラクタライゼーションにあたる。

ICCプロファイルさえ作成すればカラーマネジメントできるという神話のようなものがあるが,ICCプロファイルとは,極論するとある瞬間の印刷条件を切り取って記録するものなので,その印刷条件を常に再現できる仕組み(=ループ1)がないと全く意味をなさない。

ループ2の中でプリプレスのRIPデータからCIP3のPPFのデータを受け取れば,素早く刷り出しの立ち上げができる。ただし,現時点でのCIP3でのコントロールは,印刷前のインキキーのプリセットまでであり,大量印刷中の印刷機の制御(=ループ1)はできない。

P2QMコンセプト

P2QM(Prepress & Print Quality Management)とは大日本スクリーン製造のトータルカラーマネジメントのコンセプトで,上記のループ1,ループ2のいずれもカバーするものである。 ループ1の印刷機を制御するシステムとして,同社のデジタルオフセット印刷機TruePress用にTrueFitAdvanceを提供している。TruePressの排紙部にインラインの読み取りユニットが取り付けられており,この読み取りユニットからリアルタイムにコントロールストリップの濃度データが,コントロールユニットに送られ,最適なインキキー開度が設定される。もう1つの大きな特徴として湿し水の調整まで行うことができる。

湿し水量の計測にもコントロールストリップを用いる。通常のベタパッチと2種類の万線の3つのパッチを組み合わせて計測することで湿し水の量をモニタリングできる。これは大日本スクリーンの独自技術である。版面上を計測するのではなく,最終印刷物から計ることが技術的な特徴である。

クローズドループの制御システムは,オフ輪が先行しており枚葉機の実用化は遅れている。その技術的な理由として,オフ輪は用紙をロールtoロールで両端をぴんと張った状態でガイドローラを通すので,印刷物を計測するときに見当精度を出しやすいのに対し,枚葉は紙の片側だけをくわえるので,くわえ尻方向の紙の蛇行やたわみが問題となる。大日本スクリーンでは画像処理技術を応用することで克服したという。

また,TruePress以外の印刷機に対応するためにColorMissionという製品を用意している。こちらは,オフラインでの管理システムで,抜き取り紙を計測して,基準濃度との差分を印刷機にフィードバックする。最大4台までの印刷機に接続可能である。印刷機メーカーが提供する品質管理システムは,そのメーカーの印刷機にしか接続できないが,印刷機メーカーを問わずにオープンに利用できる可能性があり注目していきたい。
ループ2のICCプロファイルを使ったプルーフシステムとして,LabProof・LabFitという製品がある。

LabProofとは,ICCプロファイルを使ったインクジェット方式のプルーフィングシステムである。市販されているさまざまなインクジェットプリンタに対して,カラーマッチング技術を適用できる。

CTPやCTF用のRIPからRIP処理済みのTIFFデータを受け取れるので,プルーフ用のRIP処理が不要であり,CTPワークフローに親和性の高いプルーフシステムといえる。

LabFitは,ICCプロファイル作成ツールである。作成したプロファイルを再編集する機能ももっており,スキャナ分解するような操作で簡単に編集できる。画面の左右で編集前後の画像を見比べながら操作できるという特徴がある。ちょっとした経時変化であれば,再度測色せずとも目視でプロファイルを調整できる。

また,LabFitでは,印刷機(プロセスインキ)のICCプロファイル作成用に85色という少ない数のカラーパッチを用いる。このため本刷りにわずかな余白があればカラーストリップを入れてICCプロファイルを作成することができる。

ユーザの課題

今回はトータルカラーマネジメントを実現する製品群として大日本スクリーンのP2QMコンセプトを紹介したが,こうしたツールを導入しさえすればカラーマネジメントが実現できるわけではなく,運用の際にはユーザの意識改革,従来のワークフローの見直しが必要となる。特にプリプレスとプレスの連携をより密にすることが求められる。DTPが本流となって,印刷機をターゲットにしてトーンリプロダクションでスキャナカーブを設計するという考え方が薄れ,製版段階では,漠然としたターゲットでスキャナ分解をしたりレタッチをすることが多くなった。その結果,印刷現場ではそのしわ寄せで無理やり色を合わせるようなケースが増えている。カラーマネジメントを導入するのであれば,標準の印刷条件で色が合わない時はプリプレスまで戻って修正するという断固とした姿勢も必要だろう。
(テキスト&グラフィックス研究会)

■出典:JAGATinfo 2002年2月号

2002/02/11 00:00:00


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