PAGE2002報告 その3。
PAGE2002の展示会は、出展社数や小間数が最大になり、例年通り人人人でごったがえした。実はプリプレス業界は細ってきているのだが、PAGEではIT化に熱心なソリューションベンダーやオンデマンド印刷系が大きく育ってきたからである。このプラスとマイナスが交じり合った出展側と、PAGEからトレンドを探ろうという参加者の渦は、微妙にねじれていて、大きな一つの渦には集約しないままであったような面もある。
PAGE2002報告その1では、PAGEがスタートしてから15年の間のメディアビジネスの大変化と、また将来に向けての更なる変化について基調講演で取り上げた内容を紹介した。一方、印刷業界の内部のデジタル化によるこの15年の変化は展示会に如実に現れている。最初のPAGE88の時点ではMacII上でQuarkXpress2.0日本語α版が参考出品ででていたものの、仕事に使う主流は電算写植とCEPSであり、それらの全盛時代であったといえる。それが15年後の今日では様変わりして、製版機器はCTPのレコーダだけ(探せばスキャナも見つかるが…)といってもいいほどになってしまった。
製版系のベンダーは半減し、残ったところでもCTPの他はプリンタが大小ずらりと並んでいて、そこかしこにパソコンが置いてあるような光景になっている。PAGE97にはロリィ・コワン氏が基調講演を行ったが、その時には「業界の技術が業界の構造を決定し,そして業界の構造が利益性,収益性を決める」という話をされ、何年間かの単位でビジネスモデルが変わらなければならないということを何度も引用してきた。そこでPAGE98にはデジタルロードマップを取り上げたし、その後もその具現化例などを紹介し続けてきた。しかし今日の状況を見ると、日本のこの業界のビジネスモデルの変化は遅きに失したように思える。
これはベンダーが新たなものを出していないという意味ではなく、むしろ印刷業界の自己変革の問題である。もし自己変革ができないならば、技術革新の中では淘汰の波を被らざるを得ないのである。幸い将来も印刷物は使われる。しかし作り方は大きく変る。WEBなどとのクロスメディアのニーズや、得意先のIT環境整備、コンテンツの迅速な再利用……、というような条件に合わせて印刷のビジネスモデルを変える試行をしているかが問題である。印刷業界が危機に向かうとすると、この時期に合った新しい仕事のやり方の提案が印刷業界から出ない場合である。
(社)日本雑誌協会[JMPA]は雑誌広告基準カラー(JMPAカラー)の啓蒙普及およびツールの準備の活動を始めている。それに印刷業者はどれだけ協力をしてるのか? プリンタメーカーに道具立てを揃えてもらおうというのなら、どの印刷会社も金太郎飴という状況は続く。我社は品質保証致しますというのではなければ、付加価値のつけようがなくなってしまう。印刷業がデジタル化で変る環境に合わせたビジネスモデルに作り変えなければ、顧客満足を下げるだけでなく、自社内部の作業も行き詰まっていくことになるだろう。
オンデマンド印刷に関しても、エンジン部分への関心はそれなりに高いものの、その前工程であるデータ管理や差し替え処理のモデル、および後工程のフィニッシング・フルフィルメントのビジネスモデルに関して意識が先鋭でないために、せっかく前工程や後工程のヒントになる出展者に十分目が行かず、孤軍奮闘していたように思えた。つまり現在ではトータルなビジネスモデルを考えるところがあまりにも少ないということだろう。
DTPの初期は写植や製版の指示を出すデザイナ自身がDTPを実践したので、みんながそちらを向くという求心力があったし、そこでデザイナのリーダーシップも発揮された。しかしカラーのオンデマンド印刷は東洋インキや大日本スクリーンその他のベンダーが印刷会社に対して土台の提供をしたものの、ベンダーの想像力を超えるようなビジネスはなかなか生れ難かった。オンデマンド印刷でもECでも少数の会社は熱心であるものの、印刷業界総体としては新たなビジネスの方向をユーザー層に広く提示・啓蒙して、経営の革新をしていこうという求心力はないかのようである。
例えばDTPをやっている個人がPAGEなどで触発されて、新たなビジネスにチャレンジして働きたいと思っても、今はやる気の会社がどこにあるのかが見えないのである。プロのパワーダウンは業界への警鐘であり、冒頭の淘汰を早めることになる。印刷需要そのものはあり続けるのだから、新たなプレーヤーがどこからか出てきて、顧客満足のギャップを埋めていこうとしている。
2002/02/09 00:00:00