◆(株)青雲堂印刷所 代表取締役 田畑晴三
受験のきっかけ
当社のような社員20数人の「事務用印刷」を主にしている印刷会社で「DTP」の試験の勉強,それも受験など,とても考えもつかない「別の世界」とばかり思っていました。
しかし,以前から何としても「事務用印刷」から「脱皮」しなければ先がない,という切実な気持ちがありいろいろ考えてきました。
バブルの頃には60歳前後であった平均年齢が今では30歳前半にまで若返り,営業部やグラフィック部の中から「DTPエキスパート試験に挑戦する」という話が出てくるまでに成長しました。
そしていよいよ勉強開始。これだけでも私としてはビックリでしたが…。
1999年の3月の試験に6名が挑戦,見事二人が一発合格しました。
不合格者の4名も再度,再々度挑戦。さらに3人が合格。
最初に合格者が出たときは本当に,こんな難しい試験に「ほんまに受かったんかいな」と自分を疑ったほどです。
二度,三度と挑戦した社員には「何とか早く受かってほしい…」と念じたものです。
激変する「デジタル」環境の中で社員の意識を変えるにはこの勉強しかない,と確信していましたので祈るような気持ちで応援していました。
5名が合格した2001年5月頃に「私(社長)も受けてみようかな」と社員の前で「チョット軽い気持ちでつぶやいた」のが今回の受験のキッカケ。
60歳前の記念にでもするか…。どんな試験か試してみよう…。
勉強開始
目標は2001年8月19日の受験日。
何からやってよいやら全くわからず,とりあえず社員が勉強してきた「赤い表紙のDTP」の本を開いたものの「これまた全く分からず」。
「これはえらいことを言ってしまったなあ」。
合格した社員から「今までの模擬試験を勉強したらどうですか」というアドバイス。
「よしッ」というわけで「新しいカラーのDTP」の本を日本印刷技術協会で買い開始。
6月の中頃から「土曜・日曜」もなく毎朝5時に出社。
2カ月間「何度も,何度も」繰り返して読む。
今回の受験者5名と週に2回勉強会(合格者が必ずアドバイスに参加)。
その内に「点」が少しずつ「線」になり,わずかな「面」となって理解できる範囲がほんの少し増えてくる。
「これは面白いぞ」と思えるようになったのは7月中頃。
また東京の「グラフィックアーツ展」見学の折り,あるブースでの説明者が「RAID」「プロファイル」という言葉を連発,「これはどこかに出ていたなあ」「これは面白い」ということでがぜん力が入り一気に8月。
14・15・16期の模擬試験とHPの「DTP豆辞典」,それに「DTPの教科書」を徹底的に復習。
よくがんばりました。
受験日
私にとっては今回限りの受験と決めていましたので,午前9時からの「集中講義付」での受験。
「集中講義」はおさらいの意味では良いのですが,今さら時間的にどうすることもできない感じ(それでも復習になりました)で,それよりも60歳前のおじさんが受験して若い人に迷惑を掛けていないか心配もしました。
40年近く「運転免許証」の勉強くらいで試験など受けたこともない。
「マークシートによるチェック」なのと全部で750問(午前と午後半分ずつ)と「問題の数が非常に多い」ので,分かっているところから片っ端にチェックし何とか時間内に終了。
午前中は「何とかいけたかなあ」という感じ。
午後の2時間はコンピュータ関係。これは難しかった。最初の一題から全く分からず,時間は迫ってくる。
書き直しをするより1回を信じて前に進もうと決意。
時間を15分ほど残して席を立つ。もう一度見直しても迷うだけで「時間がない」。
本当に何十年ぶりかに「集中し,熱中し」て考えました。
その後受験した社員と応援に来てくれた社員で「打ち上げ」(難しかったァ…の感想)。
CD-ROM提供による課題制作
これも「うーん」とうなったほど。何から手を着けてよいやら全く分からず社員に意見を聞く。
2週間といっても実質10日ほど。
以前の合格した人の作品と不合格だった人の作品を比べる。
これは「試験」なんだからぐじゃぐじゃ考えず「ていねいに,ていねいに」作り上げていこうと決意。
「作品のコンセプト」だけは「印刷経験35年」で審査員をうならせてやろう,という気持ちで作成。
しかし,このガイド作成は私にとって「パソコン」で「緻密」に考える,「入力する」ということが体験でき本当に「頭の体操」になりました(A4で7枚提出)。
その結果
10月17日発表日の午前9時過ぎ,女性社員(4回目の挑戦)が「社長,合格したあああ…」と顔を赤くして飛んで報告に来ました。
「僕はどうやッ」と聞いたら「社長も合格してる…」。
「○○さん(2回目)も合格してるゥ」。
これで社員数22人で8人の合格者が出ました。
正直,私よりも4回目,2回目挑戦した人が「ダメ」だったらどうしようかとそればかり思っていました。
受験を決意して4カ月,本当に楽しくチョッピリ緊張した時間でした。
DTPエキスパートの試験について思うこと
私自身,まさか合格など考えたこともなく頭の体操くらいに思って挑戦しました。
しかし,入社して数年の頭の柔らかい若い人は率先して勉強すべきでしょう。
少しでも若いうちに挑戦すべきです。若い人には「創造力」があります。
この「広範囲から出題」される基礎勉強をさらに深めて未来に「大きく」伸ばしていってほしいものです。
「試験」ですからいろいろな意見が聞こえてきます。
「暗記」に頼りすぎだとか「実務」に役立たないとか,人それぞれに考え方があるのですから「完璧」なものはないでしょう。
これから時代に合った「試験方法」を日本印刷技術協会で考えていかれると思います。
私に,社員に,こういう心地良い緊張と勉強の場を与えていただいた日本印刷技術協会の皆様に心より感謝いたします。
最後になりますが私は合格はしましたが,決して「DTPのエキスパート」とは思ってもいません。
若い社員と少しでも同じレベルで話し合えればそれでいいのです。
(JAGAT info 2002年2月号)
2002/02/18 00:00:00