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「真のWebユーザビリティとは?」評価から改善への道

株式会社オーセンティア 代表取締役 森 泰三


Webユーザビリティの本当の意味
ここ数年の間に「Webユーザビリティ」という言葉をよく耳にするようになってきた 。これはWebサイトが,企業のビジネスツールとして広く認識されるようになってきた現れである。ビジネスツールであるのだから,当然そこには明確な目的とターゲットユーザが存在し,彼らに対して使い勝手が良く,快適な問題解決を提供しなければならないはずである。

しかし今語られている「Webユーザビリティ」は,ほとんどがナビゲーションレベルの表面的な話で,どちらかといえばデザインの範疇(はんちゅう)であることが多い。今,Webサイトがビジネスツールとして,企業の広範囲な活動に影響を及ぼすことを考えると,ナビゲーションレベルでは,何の解決にも結果にもつながらない。ビジネスそれ自体から,その成果の検証までも含めて考えなければ,「真のWebユーザビリティ」は見えてこないといっていいだろう。

「真のWebユーザビリティ」とは,顧客が満足する方法に近づき,顧客にとって満足のいくサービスを提案できる可能性をWebサイトに求めることである。それは,短絡的に企業のメリットにつながる場合ばかりではないが,Webサイトがもつ最も強力な機能である「ファン作り(生涯顧客育成)」のためには,不可欠なものなのである。

昨今CRM(カスタマー・リレーション・マーケティング=顧客との優良な関係を維持していくことに重点を置いたマーケティング戦略のこと)がメディアの中で取り上げられることが多くなってきたが,CRMで大切なのは,顧客のためになるサービスをするという企業側の固い信念である。 それに,顧客との良い関係を長く続ける不断の努力。これらの下地なしに,「真のWebユーザビリティ」はあり得ないだろう。

重ねて確認しておきたいことは,ユーザビリティとは,短絡的なインタフェイスやデザインの改善ではないということであり,企業のビジネス戦略が顧客本位かどうかを問うことである。

いわば「企業のビジネス戦略ユーザビリティ」=「Webユーザビリティ」なのである。

真のWebユーザビリティ評価とは?
現在,書籍や講演などでWebユーザビリティについてさまざまな手法が紹介されている。しかしそれはほとんどの場合,ナビゲーションの改善であったり,使い勝手の改善であったりするわけだ。もっと問題なのは,結果の評価の仕方だけにとどまっているものが多く見受けられることである。

どのページにアクセスが多く,どのページが少ないなどのアクセスログが分かったところで,本質的なことは何も分からない。それは単なる結果に過ぎない。曰く「ナビゲーションが悪い」「デザインが悪い」「表示が遅い」等々。これらを確認する必要もあるのだが,問題は何をキーにしてこれらを見るかだ。

真に有効な「Webユーザビリティ」とは,Webサイトのどこを改善すれば「顧客の満足度」が高まり,「ファン(生涯顧客)」になってもらえるのかを明確にすること,つまりビジネスの成功により近づけるために,Webサイトで「改善」するべき個所があるならば,それは「どこ」で「どう改善すれば良いか」を明確にする必要があるということである。さらに付け加えるならば,それを「定量化する」ことがポイントとなる。

何となく使いにくいとか,何となく格好悪いといった基準のない評価でなく,すべてを定量化することにより明確な基準をもち,評価していかなければならない(ファンができたかどうかなどの評価が難しいものについては,定期的にアンケートをとることにより,その差分を定量データとして評価基準を作ることで解決できる)。

Webユーザビリティ評価は改善のため
先述のように,「Webユーザビリティ」は,評価が目的ではなく,「どこ」を「どのように改善するか」を目的にしなければならない。よってどんな業種,どんなWebサイトでも適用できる,体系的な方法と評価基準が必要である。ただし,その前に絶対に忘れてはならないものがある。検証するWebサイト自体の明確な成功予測(目標)だ。

ターゲットはだれで,何をして成功とするかが明確でなければ,どんな評価も無意味である。なぜならWebサイトの目標が達成されていれば,改善の必要がないからである。また,同様にWebサイトの目標がなければ,何を改善すべきか,どのように改善すべきかを語っても意味がないからである。

(出典:月刊プリンターズサークル2002年3月号特集「Webでコミュニケーションを改善−Webサイト設計に求められるものは?」より)

2002/03/05 00:00:00


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