本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

オンデマンド対応の制作システム構築

PAGE2002コンファレンスの L2「オンデマンド対応のシステム構築」セッションでは,「オンデマンド」をクライアント側におけるその位置付けやシステム構築の面から捉え,

(1)オンデマンド印刷のシステム構築においてユーザはどういう効果を求めているのか。
(2)オンデマンド印刷に必要な開発技術はどういうものか。
(3)クライアント側におけるシステム仕様のポイントはなにか。

などを事例紹介というかたちでうかがった。
モデレータは株式会社プラネットコンピュータの深澤秀通氏,パネラーと各テーマは次の通り。

1. アメリカンファミリー生命保険会社 井田安信 氏
「生命保険パンフレット制作の自動化」

2. 方正株式会社 芦野雄一 氏
「クライアントが求める真の印刷サービス」(PDF 151KB)

3. 株式会社ダイエーオーエムシー 林好昭 氏
「旅行パンフ内製化の経緯」(PDF 187KB)

4. 横河グラフィックアーツ株式会社 永山嘉昭 氏
「海外オンデマンドプリンティングシステムの構築・運用・実績」

モデレータの深澤氏の論点PDF 100KB)は,DTPも含めた従来の印刷は印刷業界の利益追求が主たる目的だったが,オンデマンドを含めた今後の印刷は,あくまでも顧客側の利益が最優先されなければならないということである。そのためにこそ,PDFやXML,自動組版,ネットワークなどの技術を活用する必要があり,具体的なシステム構築にあたっては,定量的な効果(印刷価格,印刷期間,在庫・償却)と定性的な効果(広告効果)を予想し,測定し,フィードバックする必要がある。 印刷側もただ印刷するだけではなく,定量的・定性的効果を捉えてクライアントに付加価値をもたらすことを考えなければならない。印刷は印刷エンジンとなって付加価値は低下する傾向にあり,印刷の再定義が必要な時期にきているのではないか。

アメリカンファミリー生命保険の井田氏は,保険パンフレットそのもののライフサイクルの特徴や,年齢・性別・部署などによるセグメント化の必要性,および消費構造の変化や医療保険制度改革による保険事業環境の大きな変化の中でのユーザの意識変化を分析,POPSという保険パンフレット申込書の組版,印刷発注システムを紹介した。

方正の芦野氏は,独自の市場調査と商品展開を進める同社の経験から,問題は印刷会社とクライアントとの印刷物についての認識のずれだと指摘した。クライアントが必要なのは,印刷物としての品質だけでなく,コストパフォーマンスやフレキシブルな納期対応,あるいは打ち合わせコストの削減も対象になる。これらの問題を解決するには従来の印刷の工程概念を超えた発想が必要である。たとえば,チラシは,その制作期間の3分の2以上はクライアント側の工程であり,また,印刷会社は納品すれば終わりかもしれないが,流通業のクライアントにとっては,折り込まれてからが勝負だということ,そのようなクライアント側に立ったサービス提供が必要である。

ダイエーオーエムシーの林氏は旅行パンフレット制作の内製化にあたって方正のFounderFITを導入するに至る経緯と,その効果について説明した。
スピードと柔軟性が要求され,ビジュアルなインパクトが重要な旅行パンフレットに対し,従来の印刷ではコスト削減が難しく納期も長く,しかも校正が煩雑だという問題点があった。一方,同社では1色刷りパンフレットはWordやExcelを使って社内で作成し,ポスター用にインクジェットプリンタを導入していたことなどの要因があって内製化に踏み切った。つまり,システムとしてはWindowsで内製化できること,およびTrueTypeフォントなどが利用可能で安定したフィルム出力ができることなどが条件であった。内製化後,約40%のコストダウンを実現,それまで2〜4週間だった印刷納期を1週間以内にし,さらに校正を1回にしてしまい,在庫を大幅に削減することができた。

横河グラフィックアーツは横河電機の製品関連のドキュメント制作を行なっている。特に海外に送る販売資料の配送時間とコストおよび廃棄量が問題になり,海外オンデマンドプリンティングシステムの本格的取り組みを始めた。印刷業として本格的に取り組めば付加価値は減少するが,取り組まなければ仕事がなくなってしまうという状況の中,どこにあたらな付加価値を見出すかを検討した。一方,ネットワーク時代に対応したドキュメントの制作・管理・運用のためにCyberDocプロジェクトが発足,ドキュメントの電子化,DB化およびマルチメディア配信の実現を目指した。
出力に関しては富士ゼロックスの協力を受け,海外拠点において,必要なものを,必要な場所で,必要なときに,最新データで,必要なだけ印刷することを実現,ドキュメント量を52%削減することができ,制作時間,制作費用も大幅に短縮した。

2002/03/11 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会