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Bフレッツで建築パースの伝送構築

NTTの光ファイバを使った高速の定額通信ネットワークサービス「Bフレッツ」は,企業が低価格にブロードバンドインフラを敷設するサービスとして注目を集めている。シータ代表取締役の久岡摂氏は「大阪と東京の間の高速通信を,Bフレッツを利用すれば,他の通信サービスと比べて数10分の1で高速通信が実現できる」と語る。大阪に事務所を構えるシータは自動組版ソフト「ECHOS」の開発やインターネットシステム設計,画像データベース構築など印刷やデザイン業界を対象に幅広いソリューションを提供している。

シータは,2002年6月にBフレッツを利用し,イラスト・リオの大阪本社と東京支社を結ぶネットワーク設計を手掛けた。イラスト・リオは,1981年に設立された大阪に本社を置くイラストレーション制作専門会社である。4〜5年前から建築パースの分野で急成長を続けている。近年,マンションや住宅情報誌などの折り込みチラシに,美しい概観図や室内図を使うマンションの販売代理店が多くなっている。従来はいかにもCGで制作したという感じの無機質な絵が多かった建築パースの分野に,イラスト・リオは手書きの風合いを加えたリアルなCGの建築パース図で参入した。風景画のような建築パース図は,マンションや分譲住宅の売り上げ促進に貢献すると業界で評判を呼び,地元の大阪だけでなく東京からも多く引き合いがきている。

大容量の建築パースデータ

シータは,もともとイラスト・リオの大阪本社のシステムを設計してきた。建築パースのデータは何層ものレイヤーで構成されている。このため,A3サイズの400dpiの画像の場合,500MBから600MBという大容量データになり,データのコピーや送信に掛かる時間は作業時間に大きく影響する。大阪本社では,久岡氏のカスタムメイドで社内にインテリジェントハブや大容量レイドを導入し,MOやJazzディスクに保存してデータ交換をしていた時代よりもはるかに快適な制作環境を実現した。

イラスト・リオが2002年6月に東京支社を開設するにあたり,今度は東京と大阪間におけるデータ通信が大きな課題となった。イラスト・リオは,大阪に36名,東京に6名のスタッフが仕事をしている。東京で受注した仕事は大阪と東京で分担される。東京の顧客に図面を渡す場合は,大阪のスタッフがパース図面を書き,そのデータをネットワークで転送して,東京のスタッフがPhotoshopで仕上げをする。顧客にはデータと出力したものが手渡される。
シータでは,東京との通信にBフレッツを導入したネットワーク設計を検討し,大阪本社のようにカスタムメイドの高速なネットワークを構築した。

低コストにカスタムメイド

NTTのBフレッツは回線に光ファイバを使うことで最大100Mbpsという高速通信を実現するといわれている。ただし,ベストエフォート型なので,利用者が増えると回線速度は下がる。 シータは,イラスト・リオの大阪本社と東京支社がそれぞれNTT西日本とNTT東日本のBフレッツのベーシックに加入するようにし,一つずつ固定IPアドレスを割り当てた。

大阪と東京の両方の事務所には,久岡氏自身がアメリカから直接購入した最大190Mbpsのスループットが出るというルーター「SONIC WALL PRO300」が設置された。取材の時,イラスト・リオのスタッフは数10MBのデータを,大阪のレイドから東京のレイドに数秒で転送した。

東京支社のラックマウントにはSONIC WALL PRO300とMacOS X,544GBのレイド,インテリジェントスイッチングハブが並ぶ。SONIC WALL PRO300は1台約130万円,レイドは1台約350万円である。回線料はNTTのBフレッツ利用料とプロバイダーのKDDIの接続料を合わせて,初期費用が3万6900円,月額利用料が3万5600円である。つまり,今回のシステムや初期費用に600万円強のコストを要したが,翌月以降は月々約7万円(東京と大阪を合わせたBフレッツの月額料金)で光ファイバのネットワークが利用できる。

シータではデータ転送だけでなく,作業効率を上げるためのオフィス作りについてさまざまなを提案している。デザイナーそれぞれに,作業スペースとして1.2mの幅を確保し,机にはMacintoshの22インチのシネマディスプレイと15インチの液晶のデュアルディスプレイが設置されている。アプリケーションソフトの作業スペースとパレットスペースを分離して制作効率をアップを目指している。

久岡氏は近日中に,イラスト・リオの大阪と東京間を結ぶインターネット電話を導入する予定だと語る。8万円前後のルーターを入れるだけで,遠隔地にありながら内線電話のように無料の電話回線を実現する。
光ファイバを利用した高速の通信サービスエリアは急速に拡大している。適切な利用は,競争力のある企業をさらにパワーアップしていくだろう。

■出典:JAGAT info 2002年8月号

2002/08/12 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会