本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

2001年の印刷産業を振返る

下期から急激に悪化した景気

2001年の印刷業界では、年後半から日本経済の景気後退の影響が見え始めた。仕事量は7月から、売上高ベースでは10月からマイナス成長に入った。 今回のマイナス成長でバブル崩壊後3度目の谷に向うことになるが、過去2回の景気の山谷ではひとつの景気サイクルと経るごとに山はより低くなり、谷はより深くなってきている。今回のマイナス局面におけるGDPのマイナスは、2回目の時に近い予測がされているが、予断を許さない。

年率8.6%で伸びたDM

主要印刷市場の景況を振り返って見ると、出版分野は5年連続のマイナス成長で沈み込んだままである。出版市場縮小の最大要因は、パソコン、インターネット、携帯等の新しいコミュニケーション手段の登場、普及による消費者の時間、支出配分の多様化だから、出版市場の景気の底がどこにあるかは全く予想がつかない。
商業印刷分野の景気は、2001年6月までは2〜3%の成長をしていたが、下期にはこの分野の各種指標が月を追って悪化し、7月〜9月期、10〜12月期と2期連続の前年割になった。この動きは、広告業の売上高推移と連動しているが、2001年の広告費は、マスコミ4媒体が全て前年割となる中で、SP広告は0.2%減とほぼ横ばいで推移した。DM、折込、交通広告、POPといった媒体が健闘したからである。特にDMは好調で、2001年の広告郵便物の取扱量前年比は8.6%という大幅な伸びを示した。
中長期的な視点で見ると、広告費全体はGDP連動で動きながら、対GDP比率を上げて推移すると見られる。その中で、DM、チラシ分野は、日本経済のサービス経済化が追い風になって景気変動の影響を受けながらも伸びていくと見られる。

紙媒体と電子媒体の棲み分け方

情報技術、サービスの先端では、放送、インターネットなどさまざまな動きがあり、ブロードバンド化が大きな話題になったが、技術的に可能であることとビジネスとしての成否は別物であるということは、ニューメディアという言葉が流行ったときから幾度も思い知らされてきた。
しかし、ここ数年の経験の中で、ホームページやメール等の電子媒体と紙媒体の位置付にひとつの方向が見えてきたようだ。それは「プッシュ媒体」であり「訴求力」がある印刷物と「プル媒体」であり「双方向性」が生きるインターネットとを、対象となる利用者の情報摂取に対する姿勢に応じて使い分けてそれぞれの役割りを有効に生かす、あるいは相互補完的に使うという方向である。

印刷業界には無関係のIT不況、ECバブルの崩壊

2001年、マスコミの報道は、それまでのIT、ECフィーバーが一転してIT不況、ECバブル崩壊一辺倒になった。印刷業界においても、ECやIT化への関心はこの2年間で急速に盛り上がり、急速に萎んでしまったが、マスコミ報道に惑わされてはならない。
IT不況とは情報通信設備に関わるハードの売上の、世界規模での大幅な落ち込みのことで印刷業のIT化には関わりのないことである。ECバブルとはベンチャーキャピタルから多額の資金を引き出したネット上だけで商売をする印刷関連を含む多くのECサイトの倒産が相次いだことで、起こるベくして起こったことであり、印刷のIT化やeビジネスがバブルであることを示すものでは到底ないし問題でもない。
憂慮すべき問題は上記のようなことではなく、日本の多くの印刷企業が、印刷のeビジネスをインターネット上でオークションすることと矮小化して理解し「取り組みの意義なし」と誤った判断をしたことである。印刷業として目指すべき本来のIT化、eビジネスとは何か、を正しく理解して着実に歩を進めていく企業がこれからの勝組企業になる。

資源環境問題を巡る動き

ここ数年のなかで矢継ぎ早に出され施行されてきた環境問題関連法規の内容を見ると、これからの環境問題への対応は、以前の公害問題への対応とは大きく異なるものでなければならないことがわかる。それは、各企業の環境マネージメントへの姿勢と質が問われているということである。
ISO9000,14000にしても、とにかく認証を得ることを目的にした会社では、認証は得られたものの膨大なマニュアルを作っただけで、それすら使えずに終わっている企業もあるようだ。
環境マネージメント、ISOシステムが求めていることは対外的なポーズではなく、経営者が本気で積極的、能動的に課題に対して行動することを決意し、それを世の中に堂々と表明した上で,実質的な効果をもたらす行動計画を作成し実行していくことである。
新しい企業社会の枠組みの中では、企業の存続基盤として、企業の社会的責任、経営者の理念とリーダーシップが非常に重要なものになる。

上記の詳細は、3月28日に開催する印刷マーケティング研究会主催ミーティング「2001年の印刷産業を振返る」で解説する。

2002/03/20 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会