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忍び寄る雇用形態の大変化

塚田益男 プロフィール

2002/3/26

カオスの中の印刷経営 以前の記事はココ

5)労務のニューパラダイム

1.労務形態、雇用形態の多様化

社会全体が高度化し、多様化してきたのだから、私たちの働き方も、雇用の形も、多様化し、複雑になるのは当然の姿だ。10年以上も昔の終身雇用の時代に、裁量労働制とか派遣社員などという概念は殆ど無かった。ところが今日では雇用形態が全く多様化するようになった。その様な時代になったら、一番大切なことは契約思想である。

契約による権利と義務が明確になっていないと、ただでさえ複雑な社会がますます混乱してしまう。ところが印刷界ほど契約思想がない業界も珍しい。私たちは日常的に生保や損保に加入するのだが、読んだこともない約款を渡されるし、病院へ入院すれば、何の治療をするのにも同意書にサインを求められる。銀行から少しでも借入れをすれば、沢山の書類に実印だらけである。それなのに、印刷会社は、1,000万円以上の受注をしても、官公庁以外なら契約書なしで仕事をし、後で各種のトラブルに巻き込まれる。私はいつも不思議な業界だと思ってきた。

雇用についても全く契約がなかった。終身雇用制とか年功序列型賃金などといっても、すべて契約や法律があるわけではなく、社会的な慣習があるだけで、若い従業員の退社は全く自由であった。しかし最近では、業務の内容も、人材の質も、社会構造の複雑さも、GDPの成長率も、労働の需給バランスも、将来の生産人口の減少率も、すべてが10年前とは様変わりになっている。新しい時代に対応するには、雇用の多様性と契約について、新しい認識が必要になるのは当然のことだ。

正規社員
a)長期契約社員の契約内容
報酬の形態(年俸、月給、コミッション、出来高給、その他)
勤務形態(裁量労働、フレックス勤務、シフト制勤務など)
b)短期契約社員の契約内容
年限、業務内容、就労地域、報酬、勤務形態など
非正規社員
身分=パートタイマー、アルバイト、嘱託、派遣社員、外国人など
契約内容=期間、勤務時間、業務内容、報酬など

2.社会変化と雇用の多様化

a)少子高齢化と雇用

・1992年推計 人口問題研究所 (厚生省:1996年版)

年齢

2000

2025

千人

千人

019

26,804

21.03

(100.0)

25,468

20.24

(86.07)

2064

78,883

61.94

67,897

53.98

65才以上

21,698

17.03

32,441

25.78

総人口

127,385

100.00

125,806

100.00


少子高齢化の社会問題は大きなものが二つある。一つは高齢者の急増である。表で見られる通り、総人口比約26%になり、生産人口(20〜64)2人で高齢者(65才以上)1人を面倒見ることになる。高齢者の医療費や年金など社会保障費負担の問題、健全な高齢者の就職など生甲斐増進の問題など、高齢者対策は緊急の問題になってきた。

一つは生産年齢層の減少である。高齢者の増加分と同じだけ生産人口が減少する。本来、生産年齢とは15〜64才だが、15〜20才は学校へ行っている期間だから、それを除いて生産人口を算出した。2000年に62%の生産人口が2025年には54%になり8%も減少する。すなわち、日本の総人口は2006年頃をピークに減少に転ずると言われているが、生産人口という観点からすれば、現在すでに減少プロセスに入っているということだ。この推計は10年前のものだから、現在はもっと減少速度が早くなっているだろう。

生産人口が減れば生産力の低下に困るはずである。だから失業は少ないはずである。事実、今日の大不況は10%位の失業率になってもおかしくないのに、5.5%前後で収まっているのは生産人口が少ないためだろう。従って、もし日本の生産構造が高度成長時代のようにワンパターンのものであるなら、現在の不況が終りGDP成長率が3%を越すようなことになったら、忽ち労働力不足が表面化するだろう。しかし、日本経済は、すでにグローバル化しているし、日本の生産人口の減少分位はアジアの中だけでも吸収してしまうだろう。

続く

2002/04/01 00:00:00


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