外字・異体字についてのフォントベンダーの考え方を,エヌフォー,フォントワークスジャパンに続いて株式会社モリサワの中村信昭,冨田信雄両氏のお話から紹介する。
モリサワは2002年2月に会員制の外字ネット販売システムGaijiXpressのサービスを開始したが,本記事の内容は1月のテキスト&グラフィックス研究会のミーティング時点のものである。従ってGaijiXpressそのものの最新情報はモリサワのサイト(http://www.morisawa.co.jp/)をご覧頂きたい。ここではGaijiXpressの概要を通してモリサワの外字についての考え方を紹介したい。
電算写植のユーザ数は限られていたから「この字のこの部分のはね方が違う」などという細かいやり取りができたが,何十万というDTPユーザとのやり取りはそういうわけにもいかない。そこでGaijiXpressでは最初に使用に関する契約書という形で個々のユーザと使い方を取り決める。パッケージでは取り決めの難しい細かい部分まで契約する会員制システムにした。電算写植では集金も営業が伺って回収していたが,GaijiXpressでは指定口座からの自動引き落としで対応する。
提供する外字だが,電算写植の時代は自分たちで文字種を決めていたからそれに含まれない文字を外字としていたが,GaijiXpressではJIS X 0208の第1第2水準以外の文字を外字と考えることにした。例えば「(はしごだか)」のように83pvエンコーディングで使えない字形や,CIDの異体字切り替え機能で使える78JISの文字なども提供していきたい。結果的にJIS X 0208に含まれない文字を外字として提供するということである。
GaijiXpressの外字は,(1)書体のデザイン属性をもっている記号類,(2)全書体共有で使える記号,飾罫など,(3)漢字の3種類がある。
リリース当初は,PostScriptの既存のパッケージフォント28書体を対象にした。ユーザは書体を選び,部首や画数が分かる場合はそこから検索する。字形に細かい差異がある場合でも文字を拡大して確認できるようになっている。必要な文字を見つけたら登録ボタンを押して登録し,ダウンロードしてもらう。
これ以外に本文用のリュウミンLの文字数を強化した。補助漢字から4412文字,JIS第3第4のうち重複分を除いた767文字,利用頻度は低いが必要性があると考えられる写植5級の1516文字,合計6695文字を収録した。つまり,リュウミンLで最大9492文字が外字として使えるということである。
非漢字は,書体属性をもった記号が3025文字あるが,その内訳はOpenType追加分(漢字と同じくAdobe-Japan1-4から第1第2水準を除いたもの)とモリサワの専用機の記号類計2736文字(1〜100までの丸数字など)と,チラシ用の文字(価格の「万円」を上下組み合わせて一文字にしているものや「〜」など)289文字である。また,書体属性をもたず,各書体共通で利用できる地紋,矢印,マーク,飾罫などが3797文字ある。これらの詳細は,モリサワのサイトに関係資料として公開されている。
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以上がGaijiXpressの考え方と概要だが,さらにミーティングでの質疑応答からいくつかの話題をピックアップしておく。
Gaijixpressで必要な文字をダウンロードすると,例え一文字でもデータとしては一つのフォントファイルとして提供される。従って,数文字ずつ追加してダウンロードしていくとそれぞれ別のフォントファイルになってしまい,それをまとめて使うには別途ツールが必要だ。この点はいずれソリューションを考えるとのことである。それから具体的な契約の中身だが,GaijiXpressで提供する1バイトフォントにはプロテクトが掛けられないため,例えば住所が同じ事務所内なら使用できるとか,出力センターに持っていくのは構わないが,出力後はフォントを削除するというような内容になっている。
GaijiXpressは,モリサワが既にもっている文字を提供するものだが,外字作成についての質問も出た。実際にはそういうケースも発生するだろうが,今回はGaijiXpressのサービス開始を優先したもので,外字作成の受注についても検討はしているということである。
(テキスト&グラフィックス研究会)
■出典:JAGAT Info 2002年5月号
2002/05/13 00:00:00