2001年度前半までの中小印刷業は増収増益
JAGATでは、会員企業を対象に毎年経営力アンケート調査を行っている。同調査では、各企業の損益計算書、貸借対照表のデータを収集、分析するとともに、各企業の業績と事業の方向や政策との関係を明らかにしている。調査は、2002年1月に調査表を回収しているので、経営数字は2000年度から2001年度の前半の状況を表している。
調査結果によれば、最新年度の売上伸び率は1.9%増、経常利益伸び率39.0%増の増収増益で、対売上経常利益率は2.9%であった。2000年度から2001年度前半にかけての印刷業界は、言われほど悪い状況にはなかったということである。しかし、平均値で物を言うことができにくくなってきたのが昨今の印刷業界である
増収、減収は半々
対前年売上高伸び率の階層分布を見ると伸び率が100.0%未満、つまり前年割の企業が最も多く44.1%を占めた。しかし、それは半数強の企業は売上を伸ばしたということである。そしてそれら企業の半数以上は0〜5.5%未満の範囲での伸びに止まったが、2桁の伸びをした企業も全体の16.2%ある。
売上が前年割れになった企業の比率を1997年度からの推移を見ると、1997年度が31.1%であったのに対し、1998年度は65.7%、1999年度は73.4%と過去最高になり、2000年度調査時点においても63.3%と過半数を超えていた。しかし、2001年度は44.1%と過半数を切った。
人員削減で収益性向上
経営力アンケートでは、収益性指標として1人当り経常利益額を集計している。最新年度の1人当り経常利益額の平均値は664千円であった。1人当り経常利益額の平均値は、1999年度は612千円、2000年度は643千円だったから年々改善されてきている。人員削減効果がかなり寄与していると思われる。
1人当り経常利益額の階層分布は、250千円以下(赤字企業を含む)の割合が最も多く34.7%であった。1人当り利益額階層が高いほど該当企業の割合は少なくなる傾向が見られるが、1500千円以上の企業も13.0%ある。一方、赤字企業の割合は12.7%である。過去3ヵ年の中で赤字になったことのある企業の数は2000年度にやや減ったが2001年度には再び増加した。
意外と良い出版印刷業
業種別に見ると、出版印刷の業績が良い点が目立つ。収益性(一人あたり経常利益額)と成長性(売上伸び率)ともに平均を上回っているが、収益性面の良さが目立つ。商業印刷は回答企業で最も多い業種で総合的に見ると平均よりも良い。収益性と成長性を比較して見ると、どちらかといえば成長性が高く出版印刷と対象的である。
総合印刷企業(出版印刷、商業印刷といった個別分野の売上のいずれもが50%を越えない企業)の業績は平均を下回っているがそれほど悪いと言うことではない。数は少ないが業績が悪いのは写真製版と事務用印刷である。
中規模企業にも多い業績優良企業
規模別に見ると、300名以上の企業グループは収益性、成長性ともに平均を上回っており業績全体は各グループ中最も良い。次いで19名以下の業績が良いという結果であったが、回答社数が10社と少ないので、飛び抜けて業績の良い1社に引っ張られた数字になっている。
基本的には規模相関が見られるが、30名〜49名規模の総合評点が平均を上回っている点が目立つ。このグループでは、成長性が高く総合評点でトップ40位に入っている企業が9社あるが、その数字が全体を押し上げているからである。
はっきりしなくなった成功パターン
以上が経営力アンケートにおける企業業績の状況だが、本調査の特徴は、どのような経営方針、施策が経営にプラスになるかを分析しているところである。その要点は、以下のとおりである。
@ 企業規模、オフ輪保有の有無、業種別に強い業績の斑模様が見られるが、各種の経営施策についても、はっきりした成功パターンは見られなくなった。
A営業面、生産面いずれにおいても積極策が良い結果を生む。
A 技術進歩によって、設備の違いで企業格差が出るといった状況は少なくなり、システム構築やその運用力、つまりそれを使う人間の力で差がつくようになってきており、人的資源開発への投入量が業績向上と相関する。
(出典:「JAGAT info 2002年6月号」より)
2002/05/28 00:00:00