アメリカの新聞制作展 nexpo2002 が,6月22日〜25日に、アメリカのフロリダ州オーランドで行われた。アメリカの景気は2000年前半のバブルのピークからまだ下降中であり、広告は減り続け、新聞社もリストラとか設備投資の棚上げをしている状態で、nexpo2002展示会は事前の話題として今までで最低になるだろうと業界紙誌に書かれていたが、果たしてそのとおり、以前オーランドで開催した1998年に比べて半分くらいの展示スペースになってしまった。それでも技術というものは後戻りしないもので、着実にIT化は進んでいる。特に近年はヨーロッパ勢の開発が目に付き、ここは本当にアメリカか、という展示会になりつつある。
最も変化したのはプリプレスだが、いずこもCTP時代になると中間工程のベンダーは姿を消す運命にあり、システムとして残るのは、最初のクリエイトの編集とphotoshopやillustratorなどの部分的作業と、CTPなど出力の直前処理やプリフライトチェック・校正、それと作業やデータの管理である。これらのうちクリエイト関係の一般的なものは展示会には出ないので、編集システムがnexpoのメインとなっていた。この部分でもヨーロッパ勢が活躍しだし、AdobeやQuarkのレイアウトソフトを使わないシステムの逆襲ともいえるような現象がある。
シュリンクラップのレイアウトソフトはDTPのシンボルであって、それを活用することでコストパフォーマンスがよくなり、クリエイティブ向上にもなると信じられていた面もあった。しかし生産性を考えると、QuarkXPressよりも値段が高いXTentionを使った方がよいなど、次第に制作全体の問題に含まれるDTPソフトの重要度は下がっていった。それと正反対に欧米ではワークフローツールとかDAM・コンテンツ管理など、作業やデータの管理のソフトが90年代末に非常に発達し始めた。その結果、小さい新聞社が主体のアメリカでも、作業現場からボトムアップで構築するDTPではなくて、制作システム全体を構造化しておいて、まず誰が何をいつまでにするか、という入力を最初にして「管理ありき」で作業をスタートするトップダウンの方法に変わりつつある。
この作業のプランニングと、実際の作業状況の追跡のソフトは、QuarkのQPSにも反映されているが、QPSはQuarkが関与しない作業までは管理できないのに対して、全作業もしくは広告クライアントまで含めた作業の管理ができるように管理系システムが独立的に発展している。AdobeやQuarkはこういう管理系を自分で作ることはしないので、サードパーティーがDTPのオープンさ(プラグインなどを作ってシステム間をつなぐ)を活かしてさまざまな作業間の管理情報をブリッジし、その結果としてこういった管理システムを幹として、そこに編集もレイアウトも出力もブラ下がるようなシステムの全体像が出てきた。
アメリカでも新興の勢力であるDTIなどはInDesignを使っていても、それを売り文句にせずに全体管理の方の先進性をアピールする。またヨーロッパ勢はレイアウトは自社独自システムでも、やはり全体管理の意識が強い。特に新聞においてヨーロッパの方がフルデジタルは先に進んでいて、新聞CTP先進国、いや印刷そのものの先進国であるために、プリプレスも作業から管理へのシフトは早かったようだ。プロ用のデジタル制作関連のツールもヨーロッパのものが大活躍になっている。
このような状況下でもQuarkXPressやAdobeInDesignの地位が脅かされることはないが、もうXPressかInDesignかという点はホットな話題にはならなくなっている。むしろ両者の棲み分けが見えてきた。大きな新聞システムのインテグレータはDTIのようにInDesignを据えて、規模の小さい新聞用インテグレータはXPressのままが多く、中間はどちらも選べるようにしているところが多いようだ。ということで、新聞システムを発展させたのはDTPではなく、オープンシステムでネットワーク上で異なる作業の連携をとり、全体を管理できるように努力したところである。
この項続く
関連情報 : 7月16日(火)nexpo2002報告
2002/07/04 00:00:00