本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

すべての人が使用可能な設計・デザイン「UD」

店頭で商品を購入するとき,表記が不明確だったり形が似ていたりするために違うものを買ってしまったことや,うっかりミスで誤ったものを使用してしまった経験は,少なからずだれにでもあるだろう。たとえば,「チューブ入りの歯磨き粉と洗顔クリームを間違った」「シャンプーとリンスを間違えた」「調理用の酒と油を間違えてしまった」…などなど。

これらのミスは,今までなら消費者側のミスで片付けられていたのかもしれない。しかし,ときとして危険につながるものもあり,身の回りにあふれるモノを生活者側から見渡してみると,安全や快適性,公平性などの点で見なおしをする余地のあるものが多々ある。最近では,企業側も「生活者の立場に立ったモノ作り」という視点を重視するところが増えてきた。

日本では,予想以上のスピードで超高齢化社会に向かっている。年齢とともに,目の筋力や弾力が低下し,色合いの判別能力が衰えてくることが実証されており,高齢化社会では,いつだれが障害を持つようになるかわからない。
そのような社会においては,高齢者や障害者が「バリア」を感じないで使えるモノづくりが,商品企画,デザインにおける1つの重要な視点となってくる。さらに,年齢,性別,国籍の違いによっても生活上のバリアは存在するので,すべての人びとへの配慮が必要となり,すなわち,ユニバーサルデザイン(UD)の考え方につながってくる。

ユニバーサルデザイン誕生

わが国では,1970年代に「バリアフリーデザイン」の考え方が導入され,それをさらに進めた「ユニバーサルデザイン」の概念が浸透してきた。もとは,アメリカのノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターの故ロナルド・メイス(Ronald L.Mace)氏が提唱したもので,「障害の有無に関わらず,できる限りすべての人が使用可能な設計・デザインをすること」という考え方である。それは以下の7つの原則としてまとめられている。

1.誰にでも公平に使用できること。
2.使う上で自由度が高いこと。
3.使い方が簡単ですぐわかること。
4.必要な情報がすぐ理解できること。
5.うっかりミスや危険につながらないこと。
6.無理な姿勢をとることなく,少ない力で楽に使用できること。
7.アクセスがしやすいスペースと大きさを確保すること。

印刷ビジネスに目を転じると,認識のしやすさ,読みやすさなどは,グラフィックアーツの世界に大いに関連するUDの課題である。これからは,目の前のビジネスだけにとらわれるのではなく,多様化社会に合わせて印刷ビジネスを眺める広い視野が大切になってくるだろう。

ユニバーサルデザインのリンク

ユニバーサルデザインに関するセミナー,イベントは,わが国でも近年多々開催されている。以下にそれらを紹介する。

・社団法人日本包装技術協会でのセミナー
・社団法人日本パッケージデザイン協会「JPDA西日本 ユニバーサルデザインセミナー&ワークショップ2001」
・凸版印刷 ユニバーサルデザイン考展
・最新事例を紹介するユニバーサルデザイン全国大会
・高知県ユニバーサルデザインシンポジウム
・しずおかユニバーサルデザイン
・熊本県ユニバーサルデザイン・ネット

【関連事業】
JAGATでは,きたる8月22日,発明会館ホール(東京都港区虎ノ門)においてシンポジウム「迫り来る超高齢社会とユニバーサルデザイン」を開催する。「ユニバーサルデザイン」に,印刷・周辺業・包装業界としてどのように取り組むことができるのか。行政,企業,人間生活工学の分野でユニバーサルデザインに携わる方々の話を聞き,自分たちに何ができるのかを考える第一歩として,ぜひご参加ください。

岡千奈美 2002/7/15

2002/07/15 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会