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2002-2003機材インデックス 文字組・版下作成

■フォント

OpenTypeフォントについては昨年の本誌でも触れたが,その後のトピックは,アップルの拡張文字セッが発表されたこと,および2002年春以降,各フォントメーカーがOpenType対応についてそれぞれの姿勢を打ち出し始めたことである。
アップルの拡張文字セットはアップルパブリッシンググリフセット(APGS)と呼ばれ,Adobe-Japan1-4の15444字をベースに,JIS X 0213や写研および表外漢字字体表などを独自に検討した結果,漢字3517字,非漢字1335字を加えて,合計20296字の文字セットとしたものである。アップルがあえて独自の文字セットを決めたのは日本のDTP市場の現状を考えた結果であり,その点については評価すべきだろうが,現在のMac DTPの文字セットの標準であるAdobe-Japan1-4と異なる文字セットを決めたことについてはフォントメーカーなどからとまどいの声もある。
小塚明朝や小塚ゴシックなどを擁するフォントメーカーでもあるアドビを始めとして,モリサワ,フォントワークスジャパン,ダイナコムなどがそれぞれOpenTypeフォントをリリースまたは対応を発表している。OpenTypeについては現在進行中の状況でもあり,メーカーの方針もそれぞれ異なるので断定はできないが,多くのフォントメーカーはAdobe-Japan1-4準拠の文字セットを「プロ(Pro)」,Adobe-Japan1-3準拠の文字セットを「スタンダード(Std)」と呼んでいる。APGSに準拠しているのは,MacOS Xに標準搭載された大日本スクリーンのヒラギノである。
OpenTypeフォントフォーマットが注目されているのは,MacでもWindowsでも同じフォントデータが利用可能になるということと,従来のプリンタベースからホストベースへというフォント環境の大きな変化の中のステップとして位置付けられるためである。
実際には,フォントメーカー側は字種の多さがフォント開発のネックになるようだし,文字セットをどうするかはOpenTypeに限らず難しい問題である。また,ユーザ側としては,OSはともかく,アプリケーションの対応が進まないとフォントだけ先に切り替えるわけにもいかない。こうしたいろいろな課題は抱えているものの,早くOpenTypeを自由に使える環境にしてほしいというユーザの声も多い。

■レイアウトソフト

InDesign2.0日本語版は英語版とあまり変わらないタイミングで2002年2月に発売された。また,ほぼ同じ時にQuarkXPress5.0の英語版がリリースされた。
InDesignは発表当初からそのモジュール構造が注目されていたが,これは,ごくおおざっぱに言えば全体がPlugInの集まりのような構造であり,オブジェクト指向プログラミングの最たるものという環境である。聞くところによれば,アメリカでも開発環境の難しさがネックになってInDesignのPlugIn開発はあまり進んでいないという。構造的には先進的なオブジェクト指向を採用しているのだが,現実には実際に開発できる技術者が少ないのである。しかし,日本でもInDesignを標準ソフトとして採用する企業が徐々に増えており,InDesignがレイアウトソフトの確実な選択肢に加わったことはまちがいない。QuarkXPressは英語版は5.0になったが,日本語版はまだ4.1のままで,5.0へのバージョンアップは未定である。
アドビとクォーク以外のパッケージレイアウトソフトはWindows版が主流である。以前から継続してターゲット別の展開を進めている方正は,POPとちらしを一元管理するデータベース利用のシステムを打ち出している。大日本スクリーンもAVANASシリーズで用途別の製品展開を行なっている。日本製の汎用パッケージソフトとしては数少ないMac版を出している住友金属システムソリューションズのSMI EDICOLORは5.0.3にバージョンアップした。
DTP関連ソフトのXML対応が一種の流行になっているが,基本的にはあまりラディカルな機能追加は行なわれなくなったようだ。むしろデータベースとの連携や自動組版,および次節でとりあげるPlugIn/XTensionソフトを利用した生産性アップや効率化が主流である。

■PlugInとXTension

本誌のリストを見てもわかるように,PhotoshopやIllustratorのPlugInとQuarkXPressのXTensionはおびただしい数にのぼる。これはいまに始まった傾向ではなく,汎用ソフトと用途別のプラグインソフトを組み合わせて使うことは生産ツールとしてのDTPにおいてはごく一般的になった。PlugIn/XTensionにおいては一定の傾向や流行があるわけではなく,現場のあらゆるニーズに対応する機能がそれぞれ製品化されている。
しかし,個別に見ると,Illustratorでは文字組をハンドリングするPlugInの需要が,Photoshopでは特殊効果やフィルタなどのPlugInの需要が大きいようである。QuarkXPressのXTensionは,QuarkXPress自体が長い間使われていて標準的なDTPソフトとして定着しているため,文字通りありとあらゆる機能のXTensionが存在する。また,全体として共通するのは自動処理やデータベースとの連携ツールなどである。
InDesignのPlugIn開発の難しさについては上述したが,それでもエル・シー・エスのバッチ組版DataBox,ルビ処理RubiManger for InDesign,シータの自動組版ECHOSなどの製品が存在する。他のソフトの例をみても,PlugInの開発・普及がInDesignそのものの普及と相互に影響しあうと思われるので,今後のPlugInの動向にも注目したい。
PlugInといえばPDF関連の各種ツールも見逃せない。PDF関連ツールは必ずしもすべてがこの項に属するわけではないが,ただ,PDFの実運用においてもPlugInなどのツール類が欠かせないのは事実である。PDF関連で需要が多いのは,PDFファイルそのもののの編集・修正機能と,製版・印刷のための面付け・分版などの最適化機能である。これらのツール類は,次項で触れるPDFワークフローシステムに対する,個別カスタマイズによるPDFワークフロー構築の手段と位置付けられる。
PDFに限らないが,PlugIn/XTensionをうまく使いこなすためにはそれなりのスキルと知識が必要である。なぜなら,こうしたツールを使うということは,多かれ少なかれ制作のためのワークフローを構築するという意味を持つからである。ソフトウェアの機能だけを考えるのではなく,作業者の効率やデータのハンドリング,前後の工程との連携などを考慮した運用が欠かせない。

■プリンタの動向

欧米ではCTPの普及が出力分野に大きな影響を与えていて,たとえばイメージセッタについてはメーカー側でももう売れないという観測が主流だという。また,デジタル印刷機の技術的な進展も注目され,近い将来には印刷機との競合も予想されている。現在の日本市場においてはまだそこまでの変化は明確には現れていないが,いずれにしても,出力装置についての従来のような分類方法があてはまらなくなりつつあるのはまちがいない。
出力分野では引き続き多種のプリンタが販売されている。大サイズ,高速,高画質化という傾向も昨年までと同様だが,とくに最近は大判インクジェットプリンタの台頭が注目されていて,あらゆる分野で利用されるようになった。印刷関連では,カラーマネージメントを行なって色校正に使ったり,リモートプルーフ環境での校正に使うことが普及しつつある。また,サインディスプレイ分野でも,熱転写方式とならんでインクジェットプリンタが主流になっている。一方,ファックスやコピー機能を合わせ持ったデジタル複合機の分野では,SOHO向けなどと銘打たれた小型で価格も手ごろな製品が登場しているのが最近の特徴である。
本誌の分類上はRIPに入れられているが,どちらかというとワークフロー関連製品と捉えるべきなのは,PrinergyやBrisque Extreme,Apogee,MetaDimensionなどの製品である。もともとExtreme系のRIPシステムは,デジタルワークフローにおいてPDFが主流になるだろうということでアドビが先鞭をつけたのだが,現在では,各社とも市場動向を見ながら,1bitTIFFに対応したり,CTPワークフローとの連携を考慮した機能を付加して,より柔軟なシステム構成を打ち出している。PDFワークフローを構築するためのソリューションとしては,PlugInなどのツールを組み合わせて,現場の必要に応じた個別のワークフローの組み立てを考えることが現実的だが,将来のワークフロー統合まで視野に入れるとすれば,プリプレスメーカーが提案するワークフローシステムの動向や,前後の工程のシステム展開も見守る必要がある。

■出典:JAGAT 発行「2002-2003 機材インデックス」工程別・印刷関連優秀機材総覧

2002/08/13 00:00:00


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