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Quark DMS(Digital Media System)の概要とメタデータの活用


 情報の作成段階からバージョン情報(作業履歴),著作権情報などを総合的にメディア資産として活用するデジタルアセットマネジメントは,印刷会社がメディアビジネスを展開する上で大きなポイントとなっている。

 印刷会社において従来のデータ管理は,人手によるシステム管理に重点がおかれていたが,Webや電子出版,デジタル放送などの登場により,デジタルコンテンツはいろいろな場面で活用され,再利用することが可能となった。

 コンテンツの可能性が広がり業界のボーダレス化も進み,これらのさまざまなデータを有効活用するためには,メタデータによるアセットマネジメントがますます重要となりつつある。

■DTPに必要なメタ情報

 メタデータとは,DTPの世界にどのように活用できるのだろうか。メタデータの定義は,アセットについての情報である。現在私たちが特にメタデータと呼んでいるのは,例えばファイルやシステムで管理される最小単位のアセットに対しての付加的な情報である。
 特にファイルに対するメタデータは,元々MS-DOSの頃からファイルに持たせており,Attributeという概念である。

 OSが変遷するとフォルダやプロパティとなり,ファイルタイプ,ファイルサイズ,日付など,以前と同様のメタ情報を持ち,さらにキーワード,所有者,編集者など多様な情報も付加できるようになった。こうしたOSレベルにおいても,かなりのメタ情報をそれぞれのファイルが持っている。

 DTPに必要とされるメタ情報は大きく3つある。
 最初は「一般情報」というOSレベルのファイルから取得可能なものである。
 次に「拡張情報」で,システムが必要とする。キーワードや説明(コメント)があり,誰がどのような意図をもち,フォルダにファイルを置いているのか,また作業指示のコメントなどである。
 最後に「独自情報」と定義しているが,特にDTPに特化したメタ情報で,著作権情報,カラー管理,バージョン(作業履歴)などである。バージョンは,事故防止にとって非常に大切である。これらをメタ情報として持つことにより,効率的な管理が可能となる。

 DTPに必要とされる様々なメタ情報を,アセットのカタログ化や検索に活用することにより,効率的なアセットマネジメントシステムを構築する。

■QuarkDMSによるアセットマネジメント

 これまでのデータ管理は,リムーバブルメディアやファイルサーバで管理し,ファイルの命名規則+フォルダの生成規則など,OSレベルでの属性情報が基本となっており,時には人間の手作業によるアセットマネジメントの限界を感じることもある。

 QuarkDMSは,アセットマネジメントシステムとして位置付け,膨大なデータの効率的な管理が要求される。このシステムには大きく二つの側面があり,一つはアセットマネジメントシステムとして適切なコンテンツ管理を行い,デ−タの再利用性を向上させることである。
 もう一つの側面として,コラボレーション・ワーク,つまり一つの紙面を複数の人数で仕上げていくために時間・場所・人,それぞれの要素にとらわれないで効率的なワークフローを実現するためのプラットフォームを提供することである。

 このシステムは,データベースの中にメタ情報を管理し一括してデータを管理する,データの一元管理システムである。

■QuarkDMSのしくみ

 データの取扱い単位として大きく2つにグループ化している。一つは画像,テキスト等のファイルにメタデータを付与し,ファイル単位で管理している。
 もう一つは,一番大きな特徴であるQuarkXPressドキュメントをアイテムごとに分解して管理を行っている。画像ボックス,テキストボックス,テキストパスやライン,グループなどQuarkXPressで扱われるアイテムである。

 システムでのメタデータは,属性,サムネール,説明,キーワードの4つであり,それぞれをアセットに適用することにより,メタデータによる効率的なアセットマネジメントが実現する。

 基本的なインターフェースであるクエリーは,多様な方法で資産ファイル,アセットを検索または再利用でき,ワークスペースは,アセットを一括管理,操作するための作業領域である。データベースの中に格納されているファイルを,いかに効率的に検索・利用できるかは大切なポイントである。

■QuarkDMSの特徴およびメリット

 多様なデジタル資産をデータベース管理する大きな特徴がある。QuarkXPressドキュメントの管理を中心に,テキスト,画像,サウンド,HTML,さらにオフィスドキュメントであるWord,Excelなども格納することができる。多彩な用途に応える機能と拡張性があり,履歴管理および分かりやすいインターフェースを用いた効率的な検索が行え,またデータの再利用が容易である。

 ネットワークによる共同作業支援ができ,企業間,拠点間でのデータ共有などを行うことができる。遠隔地にサーバがある場合にも,ネットワークを通してアドミニストレーションを行い,集中管理や遠隔管理が可能である。
 セキュリティは,強固なアクセスコントロールを行っており,アクセス可能な資産やユーザーを詳細に定義している。このような細かい定義を行うことにより,高いセキュリティを実現している。またXDKと呼ばれる開発キットがあり,Java,C++で開発を行うことができ,具体的な開発も行われ事例も存在する。

 データ再利用時にその都度ファイルを検索する作業は,複雑で面倒である。QuarkXPressドキュメントを,事前に自動的にパーツ化するDMSの中を見て,パーツのみを引き出し再利用することができ,QuarkXPressとのシ−ムレスな融合が可能である。
 最近はワークフローの確立により減少したが,以前はよく新しいバージョンに,古いバージョンを上書きしてしまうなど,バージョンコントロールによるミスが存在した。これをシステム化することにより,すべての古いバージョンについても管理が可能となった。よってバージョンのミスは大幅に減少し,データをセキュリティの高い安全な状態で管理することができる。

 ファイルフォーマットの自動変換機能を持ち,例えば印刷用TIFF画像を格納しておき,Webページを作成する時はJPEG,GIFなどのファイルフォーマットに自動変換する。MacitoshやWindowsにこだわる必要はなく、さらにコネクティビティ(接続性)は,PhotoshopやIllustratorなどサードパーティ製アプリケーションをサポートしているので,必要な箇所に必要なアプリケーションを配置することができる。それらをシ−ムレスに接続し,すべてのアプリケーションをアセットマネジメントシステム,出版用の制作システムなど効率の良いシステムと組むことが可能となり,作業効率を高めることができる。

 印刷会社においても高速化したネットワークを使用し,このようなシステムを用いることにより,お客様のアセットを効率的に管理し,お客様のデータを囲い込む戦略的なツールとして検討できる。

(テキスト&グラフィックス研究会)
JAGAT info10月号より

2002/09/25 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会